背番号を「37」から「17」に変えて迎えた、Jリーガーとしての1年目。敵地で行われたアルビレックス新潟とのファーストステージ第3節で初先発を果たした富樫は、前半25分にゴールネットを揺らす。
またも「初陣」で結果を出すと、ナビスコカップのグループリーグを含めて、出場した公式戦で3試合連続ゴールをマーク。波に乗る22歳は、U‐23日本代表を率いる手倉森誠監督の目にも留まる。
4月中旬に3日間の日程で行われた静岡県内での短期合宿。富樫を初めて招集した理由を、指揮官は「ポテンシャルがありそうだなと思った。点取り屋としての本能的なところを確かめたい」と説明している。
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ガーナ戦に挑むU-23日本代表 富樫は後列右から3人目
迎えた5月11日。ガーナ代表を佐賀県鳥栖市のベストアメニティスタジアムに迎えた国際親善試合。先発に抜擢された富樫は、生まれて初めて日の丸を背負う戦いに胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。
「いままでとは違う雰囲気のなかで、責任感といったものも芽生えてきたというか」
日本が2点をリードして迎えた前半30分。手倉森監督が期待した「点取り屋としての本能」が富樫のなかで頭をもたげ、ゴールまでの「絵」が瞬間的に描かれた。
相手のクリアミスを拾ったFW浅野拓磨(サンフレッチェ広島)が、左サイドから横パスを送る。富樫はファーサイドに位置を取り、正面にMF野津田岳人(アルビレックス新潟)が入ってきていた。
「でも(野津田が)スルーしてくれる、という感じがしたんです」
とっさの閃きは現実のものとなる。野津田にひきつけられていたガーナの守備陣が、慌てて富樫との間合いを詰めてくる。トラップがやや大きくなったが、それでも冷静沈着でいられる自分に気がついた。
「相手のゴールキーパーがかなり早目に前へ出てきて、自分のところにくいついてきたのが見えていたので、これはループできるかなと。その意味ではイメージ通りでしたね」
思い切り振りあげた右足を、シュートの刹那にソフトタッチへと変える。緩やかな放物線を描いたボールはキーパー、そしてふたりのディフェンダーに見上げられながら、ゆっくりとゴールへ吸い込まれていった。
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