1987年3月に卒業旅行として欧州を放浪していたとき、乗るはずだったタウンゼントトロージャン号が凍てつく北海で沈んだ。ボクはベルギーの港に向かう列車を間違えてこの船に乗り遅れただけだ。
それはタイタニック号以来の海難事故で、乗客の半数が犠牲になった。ツール・ド・フランスの取材各地で知り合ったベルギーの人にそのことを話すと、当時の模様をよく覚えていて、「あなたは強運の持ち主だ」と肩をたたいてくれた。
■豪華客船が報道陣に開放
2013年には第100回大会となるツール・ド・フランスが地中海に浮かぶコルシカ島で開幕した。世界各国からの報道陣が集まるサルドプレス(プレスセンター)は、いつもなら見本市会場や体育館などが使用されるが、コルシカ島にはそういった大きな施設がなく、豪華客船エスメラルダがサルドプレスと大会本部になった。
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豪華客船がサルドプレスになった
これがコルシカで行われた3日間のゴール地点に移動して、取材陣を受け入れたというワケだ。内装はとても豪華で、映画『タイタニック』のレオナルド・ディカプリオになった気分だった。ただし微妙に揺れるので、原稿を打っているとちょっと気持ち悪くなった。
ちなみにツール・ド・フランスの出場選手は指定された交通手段以外で移動すると失格になる。かつてスイスのウルス・ツィンマーマンが苦手な飛行機に乗らず、チームカーに便乗して移動したことが発覚して失格。しかし翌日に他チームを含めた全選手がストライキを決行して、ツィンマーマンの処分を撤回させたというエピソードもある。
■アジア選手権が開幕したけれど…
1月19日に伊豆大島で開幕したアジア自転車競技選手権は首都圏に大雪をもたらした低気圧によって大揺れに揺れた。日本代表選手が乗る予定だった高速ジェット船や、調布からの軽飛行機が全便欠航。タイから帰国したばかりの新城幸也も急きょ夜行の大型客船に振り替えて現地入りした。
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新城幸也(右)と畑中勇介も大型客船で伊豆大島に向かった
広報担当のボクも熱海からの高速ジェットには乗れず、わざわざ東京まで戻って大型客船へ。風速15m超の季節風で海は大荒れだったが、ストライキをしてくれる仲間はいなかったので揺れる船室で眠れぬ一夜を過ごして伊豆大島入り。
取材陣はほとんど現地入りできず。しかも初日は強風でコースに波しぶきがかかって全競技が順延した。このコラムはそんな同地で書いている。