地理の教科書にもあるように、オランダは国土の4分の1が海抜ゼロメートル以下。フランス語でオランダは「ペイバ=低い国」という意味なのだ。第2ステージの68km地点ではツール・ド・フランス史上最も低い土地、海面下7mという場所を通過した。
地球温暖化がこれ以上深刻になると世界各地の氷河が溶け出して、今よりも海面が高くなってしまう。北海にはりめぐらしている堤防を越えて海水が流れ込むと多くの住宅が浸水する。そのため二酸化炭素排出削減策としてガソリンに高額の税金をかけて、クルマではなく公共交通や自転車を利用しようという国策を実施している。
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大防潮堤。第2ステージはここを走ってゴールした
だからこそ、自転車道路が世界で一番整備されているのだ。もちろん自転車の難敵となる上り坂もほとんどない。今年のツール・ド・フランスでもオランダを走った2日間は山岳賞の設定ポイントがなく、山岳賞の赤い水玉ジャージが登場したのはベルギーに入った第3ステージからだ。
ツール・ド・フランス取材のためにクルマでフランス各地を走っていると、サイクリストに恵まれた環境であることに感心する。ところがオランダはさらにその上をいく。郊外の幹線ルートはクルマと自転車が走る道が完全に分離されているのだ。クルマ用の道路で路肩を走るサイクリストはいない。みんな自転車専用道を使えば安全だからだ。
第2ステージのゴール地点はオランダが北海に面するところ、ライン川などの国際河川が何本も海に注ぐデルタ地帯だった。2本の橋で結ばれた島にゴール地点が設営されたが、実は単なる橋ではなくオランダ政府が巨額を投入して建設した防潮堤だった。内陸地が水害に遭わないように潮位を制御している施設なのだ。
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大防潮堤の上をゴールに向けて激走する
各国から集まった取材陣が原稿を書くサルドプレスはその管制センターだ。風力発電でポンプを稼働させ、その必要があれば何個もある水門を開閉する。オランダ国民の日常生活を365日、24時間休むことなく支え続けている。そんなところにツール・ド・フランスをゴールさせてしまう。日本ではとうてい許可されないような、考えにもおよばないような舞台。主催者というか、オランダ政府というか、いやはや驚きである。