【THE REAL】山口蛍が追い求めるJ1切符とレジェンドの軌跡…セレッソ大阪の若きリーダーの決意 3ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】山口蛍が追い求めるJ1切符とレジェンドの軌跡…セレッソ大阪の若きリーダーの決意

オピニオン コラム
山口蛍(2015年9月3日)(c)Getty Images
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■50mのサイドチェンジパス「狙っていた」

9月20日。セレッソは敵地である熊谷スポーツ文化公園陸上競技場に乗り込み、首位の大宮アルディージャと対峙した。

キックオフ前の時点における勝ち点差は「14」。負ければアルディージャの独走を加速させるだけでなく、2位のジュビロ磐田の背中が遠くなり、アビスパ福岡にも勝ち点で並ばれる。

まさにJ1昇格争いに踏みとどまれるか否かの大一番。前半11分にセレッソが先制し、同45分にアルディージャが追いつく白熱の攻防に決着をつけたのは、山口の“頭脳”だった。

後半30分。右サイドでボールをもった山口は、迷うことなく右足を一閃。左サイドバックの丸橋祐介へ、実に50m近いサイドチェンジのパスを通した。

必然的にアルディージャの守備網が混乱をきたす。MFパブロとのワンツーで敵陣を深くえぐった丸橋のクロスが、相手のオウンゴールを誘発。これが決勝点となり、夏場まではなかなか波に乗り切れなかったセレッソが連勝を「4」に伸ばした。

公式記録には表示されないスーパープレーを、山口は「狙っていた」と試合後に明かしている。

「試合を通じてマル(丸橋)がかなり空いていたので、そこは意識していました。監督からもサイドチェンジを意識しろとずっと言われてきたので、僕としては右サイドにいるときは常にマルを見ていた」

決勝ゴールが決まる直前には、不用意なパスをアルディージャのFW家長昭博にカットされる。攻撃を差配する元日本代表がドリブルの体勢に入った直後に、背後から猛烈なスライディングを仕掛けてボールを奪い返したのが山口だった。

カウンターからあわや失点のピンチを未然に防いだ山口へ、セレッソを率いるパウロ・アウトゥオリ監督も最大級の賛辞を送っている。

「今日のような決戦と呼ばれる試合では、個人のバトルは非常に重要な要素となる。そのなかで、ホタルはもっているすべての強さを出してくれた。強さとは技術面、戦術面、フィジカル面、そして何よりも強いのがメンタル面だ。ホタルのレベルはかなり高いところにある」

■僕たちならできる。

まさに攻守両面でチームを救った山口は、いつものように淡々とした口調で今後を見すえた。

「できれば残り試合を、全部勝つくらいの勢いでいきたい。そうすれば(J1に自動昇格できる)2位だけじゃなくて、大宮も見えなくはないと思うので。僕たちならできると信じて、貫いていきたい」

日本代表の戦いに目を移せば、年内にはワールドカップ2次予選を含めた4試合がすべてアウェーで行われる。ハリルジャパンにおける山口の存在感を考えれば、10月10日のギラヴァンツ北九州戦、11月14日のV・ファーレン長崎戦は欠場せざるを得ない。

それでも、代表に招集されれば日の丸を背負って120%のプレーを見せる。セレッソの仲間たちを信頼しているからこそ、山口は「選ばれたと想定すれば、そこは安心して任せられます」と力強く言い切った。

「チームとしてツーボランチでやらなくても、たとえばタカ(扇原貴宏)がアンカーに入って前の人数を増やすとか、今日も4バックから最後は3バックに変えたように、いろいろなバリエーションがある。そこは監督が上手くやってくれると思います」

試合後の取材エリア。山口の右ひざには厳重なアイシングが施されていた。3月の開幕直後に、こんな言葉を残していたことを思い出す。

「プラスアルファで個人練習をすると右ひざが腫れる、あるいは水が溜まるおそれがあるので。とりあえず正規の練習のなかで、どれだけ自分を追い込めるのか。時間がすべて解決してくれるはずなので、上手くつき合いながらやっていくしかない」

ハリルジャパンにおける試合後にも、同じような光景を見ることができる。古傷の右ひざに対する徹底したケアが、セレッソで先発した27試合すべてでフル出場を果たす源になっているのだろう。

山口にいぶし銀の輝きを与えている要素は、何もボランチに求められる能力だけではない。責任感、燃えるような闘志、そして強靭な精神力。173cm、72kgの体を幾重にも大きく見せるバンディエラ(象徴)に率いられながら、セレッソが胸突き八丁の終盤戦へ臨む。
《藤江直人》

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