大学院まで行くほどの専門性をもち、5カ国語を操ることができるという松田選手が日本や世界の総合格闘技界に抱いている想いとは何か。その心情を掘り下げた。
■勝つことよりも、生き残ること
---:総合格闘技家としてどのような活動をしていますか?
松田干城選手(以下、敬称略):アメリカの総合格闘技団体、UFC(Ultimate Fighting Championship)という場所で総合格闘家として活動しているのが現在のキャリアです。
◆松田選手の試合動画
---:基本的にはアメリカの選手と戦うのですか?
松田:UFCは海外進出しているので、世界各国の選手と戦うことになります。ブラジルの選手だったり、日本人選手同士で戦うことだってあります。UFCの中にもナンバーシリーズ、ファイトナイトとか、様々なレベルがあります。それによって各対戦が決まるので、UFCと契約している選手同士が争ってしのぎを削っていくようなスタイルになっています。現在、格闘技の規模では世界一ですね。
---:松田選手のランクはどの位置ですか?
松田:僕はまだ契約したばかりなのでたいしたことはないです。結果もまだまだ出せていないですし…。出だしではありますが、試合で結果を出せなかったらすぐにリリースというか、契約を解除されてしまうので、本当にシビアな世界でやっています。UFCで戦いたくてずっと格闘技をアメリカでやってきて、実際それが叶って、ここで戦えているという感じなので、ずっと勝って上を目指していくというよりも、まずはここで残っていく、という方が本当に大変な段階なのです。
---:世界で戦うということはやはり厳しいですか?
松田:厳しいのは当たり前ですね。厳しさというのはずっと前から覚悟していて、自信過剰みたいな部分ははじめからなかったです。待ったなしの世界というか、そういった世界で生きていくためには実力もそうですが、それよりもメンタルに左右されるスポーツなので、意志の部分をしっかりもってひたすらやっていくしかないと思っています。
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■練習でピースを集めて、試合でピースをはめていく
---:メンタルの部分はどういう形で鍛えてきましたか?
松田:試合当日のために、8週間から12週間ほどの準備期間を選手はかけるのですが、その期間で作戦を練ったり、対策練習をしたり、そういった段階を踏んでいって、減量して試合当日、という形になります。
実際、試合当日というのは反応の世界なのですね。自分がやってきたことが自然に出ていく。総合格闘技のリングはボクシングよりも狭く、相手にパンチも当てやすくノックアウトもさせやすい。それこそ何が起こるかわからない世界となっているので、試合中、その一瞬一瞬を生きるために、準備期間にできることをやっていくしかない感じです。
準備期間の練習などは、パズルのピースを集めていくことに似ていて、試合当日は大きなキャンパスの上でそのピースをはめていく。当日まではその絵がどんな絵になるか分からないですが、その絵が自分の目指しているように、楽しいものになるように、しっかりと準備する。そういった形で自分は試合に臨んでいます。
---:準備がほとんど占める感じでしょうか?
そうですね。1分で試合が終わったとしても、その1分のために1~3カ月はかけていますので。本当にしっかり準備して、いざ試合に挑んだとしても、たまたま一発くらって負けてしまったりする例もあるのですが、それでも準備は大切です。
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