【小さな山旅】はじめてのハイキング…朝房山(2) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】はじめてのハイキング…朝房山(2)

オピニオン コラム
朝房山の頂上にて、一人の若者と出会う。若者は、「はじめてのハイキング」であった。
  • 朝房山の頂上にて、一人の若者と出会う。若者は、「はじめてのハイキング」であった。
  • 朝房山は頂上からの展望はない。頂上直前の登りで、かろうじて写真の風景が見渡せるくらい。
  • 山頂にあった三角点。
  • 頂上の石碑には「浅房山」と書かれている。
  • 頂上で出会った若者に、登山最中のモデルを頼む。(半ば強引に)
  • 筆者が登ってきたコース(水戸市側)の反対(笠間市側)から登ると、鳥居がある。鳥居の先は、急な斜面があり、その先に頂上が。
  • 登山日は4月半ば。山中の草花が活気づいてきていた。
人っ子一人歩いていない登山道。わかりにくい道しるべ。里山特有の道迷い。猪が残した土を掘り返した後。今にも蛇が出てきそうな藪の中。

朝房山が如何に「家から一番近い山」であり、標高が低く険しくないとはいえ、一人で歩いているとそれなりのハプニングに出くわした。それは、もどかしく、恐ろしく、どこか愛おしい感覚。過去にも、この感覚を筆者はどこかで「見て」いた。

ドーレミファーソラシドー♪ BBクイーンズの「ドレミファだいじょーぶ」のメロディーと共に、子供達がおつかいをするのに悪戦苦闘する姿が思い浮かぶ。そうだ、この感覚はあの長寿番組「はじめてのおつかい」を見ている時の感覚だ。小さな子供が一人で「はじめてのおつかい」に行き、そこで遭遇する様々なハプニング。

頼まれた物以外に余計な物を買おうとする子供に、「ああ! そうじゃないだろ!」と思わず声を上げてしまう程のもどかしさ。泣きながら道を彷徨う子供を見て、「もう番組のことはいいから、スタッフ助けてあげろよ!」と番組作成のためなら泣きじゃくる子供さえも無視して撮影を続けるスタッフたちの恐ろしさ。(密かに手助けをしているらしいが) そして、見事おつかいを成功させて帰ってきた子供たちの愛おしさ。

なるほど、今回の一人ハイキングと「はじめてのおつかい」は、意外にも共通する感覚が多い。いや、しかし待て。筆者の一人ハイキングは、「はじめて」ではない。一人での山歩きは、今までに何度も経験している。

などと不可思議なことを考えながら歩いていると、朝房山の頂上に着いた。頂上には、一人の若者が立っていた。今まで一人も登山道で出会わなかったのに、不可思議なものだと思いつつ、頂上の様子をカメラに収める。

このような小さな里山に一人でやってきた若者と、その山の頂上で一心不乱に撮影をする中年男性。どちらも不可思議であり、かくいう筆者の方は半ば不審な印象すら与えていたかもしれない。

そのような不可思議な状況で出会った二人であるから、不可思議な感覚を共有したのだろう。どちらからということなく、二人は話を始めた。

若者はこの春に高校に入学したばかりの高校1年生。アウトドア好きの父親に影響され、普段はサイクリングを楽しんでいるという。
朝房山に登った理由を聞くと、「家から一番近かったから」。よく山に登るのかと聞くと、「はじめて」だと言う。

(ああ、つながった!)
若者との会話で、筆者の中で様々な要素が結びついたのであった。今回の朝房山ハイクの道中で得た感覚は、この若者との出会いを示唆していたのではないかと。

しかし、はじめてのハイキングで朝房山を選ぶとは。何ともマニアックなセレクトである。
《久米成佳》

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