【Next Stars】攻めのフライトスタイルで世界と渡り合う…パラグライダー呉本圭樹選手 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【Next Stars】攻めのフライトスタイルで世界と渡り合う…パラグライダー呉本圭樹選手

オピニオン ボイス
パラグライダー呉本圭樹選手
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パラグライダー世界選手権に日本代表として出場した経験を持つ呉本圭樹選手は、2010年からプロ・フライヤーとして、日本国内の活動にとどまらず、ワールドカップへの参加など世界で活躍を続けている。

2015年はギネス記録への挑戦も計画、フライト総距離世界記録の505km超えに挑戦予定など、新たな挑戦に向けて活動を続けている。

呉本選手の初飛行は15歳、現在は、平日は会社員として働きながらパラグライダーで世界一になる夢に向かって活動を続けている。そんな呉本選手に、パラグライダー競技における魅力を聞いた。

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パラグライダーとは?


日本パラグライダー協会のホームページ記載事項から抜粋すると、

■もともとは、ヨーロッパのアルピニストたちが登山の降下手段としてパラシュートで降下するようになったことが始まり。

■自分の力で自分自身が空中に浮くことが出来るのが、パラグライダーです。

■基本的に生活に支障がない程度の体を持っていて、走ったりすることが出来れば楽しむことは出来ます。

とされ、親しみやすいスポーツとして紹介されている。

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---:パラグライダーとは、どういった競技なのでしょうか。

呉本選手(以下敬称略):パラグライダーの競技には今、私がやってる「クロスカントリー」、着地精度を競う「アキュラシー」、フィギュアスケートのように決められた技をいかに華麗に見せるかという「アクロバティック」と、大きく3つの競技があります。そのほかにも、「トレック&フライ」という新ジャンルの競技も始まっています。

私のやっている「クロスカントリー」という競技は、簡単に言うとスタンプラリーのようにチェックポイントを回って1等賞は誰かを決める、スピードレースです。チェックポイントといっても、基本的にGPSを使って、その上空を通過したのかをチェックしているので、地上に降りるわけではありませんが。


参考画像


---:スピードを競う際、速く飛ぶ秘訣は?

呉本:パラグライダーの面白いところは、次のチェックポイントまでまっすぐ飛んで行ければ最短距離でいいんですけど、もしかしたら途中で上昇気流がなくて地上に下りてしまうかもしれないということがあって、遠回りでも山のほうを回っていくとか、雲があるところを使っていくとか、いかに速く上昇して速く遠くへ飛んで行くかというのが、この競技では重要になってきます。

---:上昇気流をつかまえるって難しそうですね。

呉本:そうなんです。そこがこの競技の面白いところなんですけど…(笑)。

■世界のトップを目指す

---:この競技に出会ったきっかけというのは?

呉本:きっかけは父親がパラグライダーをやっていたことですね。私がパラグライダーに初めて触れて飛んだのは、中学生2年のときになります。自分も幼いころからパイロットになりたいという夢もあって、最初は空を飛ぶだけで面白かったんですけど、周りの大人とか上手な人たちが、パラグライダーの競技に出ていたので、自然と競技に慣れ親しんでいきました。

大学生ぐらいまでは遊びの延長で楽しんでいたのですが、社会人になったあるときに、今までの枠を越えてどこかで突き抜けたいという思いが強くなってきまして、そのなかで自分はパラグライダーをもっと突き詰めたいと、世界のトップを目指してみようとパラグライダーの世界に飛び込んでいきました。

---:現在、普段は会社員として働いているということですが?

呉本:最初は、インストラクターという職業をしながらずっと競技を続けていたのですが、もっと突き詰めてやっていくことができないかと、いろいろと方法を探していたところを、私を支援していただける方たちが現れて、普段は会社員としての仕事をしながら、今は世界を目指すというところに落ち着いた感じですね。

---:普段は、どんな生活をしてらっしゃるのでしょう。

呉本:普段の生活は、月曜日から金曜日まで普通に会社員をして、土日がトレーニング及びパラグライダーをするというカタチです。まあ、平日にもトレーニングを取り入れて、会社までは20kmぐらいあるんですが自転車で通ってます。


参考画像


■ワールドカップと世界選手権

---:パラグライダーの競技ですが、世界にはどのような大会があるんですか?

呉本:パラグライダーの大会には、年に5回開催される「ワールドカップ」と、2年に1度行われる「世界選手権」というものがあります。ワールドカップの出場資格としては、世界ランキングの上位の人間から希望者が出て130人出られる競技で、世界選手権は各国から3~4人が参加し、出場枠は国別で分かれてます。

---:年5回開催される、ワールドカップどのような試合なのでしょうか?

呉本:開催地は毎年変わるんですけど、2014年はフランス、ブラジル、トルコなどで開催されていました。私が参加するのは年間3戦ぐらいですね。で、ランキングでトップ20位に残ると最終戦のスーパーファイナルに出場できるので、ワールドカップの最終戦は、その年の世界一を競う大会の位置付けにもなっています。

---:ポイントを取るためにも、全戦参戦しておいたほうがいいわけですか?

呉本:そうですね。本当は全戦出たいんですけども、今のサポート体制ですと、そこまではなかなか難しいというのが、本当のところではあります。

---:次の世界選手権でいいポジションが取れると、サポート体制も変わってくるのでしょうか。

呉本:状況は少しずつ良くなっていくとは思います。

■常に動いているチェスのように

---:この競技の魅力はどこにありますか?

呉本:ちょっと変わった例えですが、チェスに例えて言いますと、卓上のチェスでは次のポイントを決めるのに考える時間がありますが、パラグライダーでは次のポイントを決める中でも飛び続けているので、この常に動いている中でチェスをするような感じが、すごく難しく、楽しい部分でもあります。

---:競技で飛んでいる最中には、どういったことが起こっているんでしょうか?

呉本:当然、飛ぶ前には自分の中でシミュレーションをして、こういうコースをとっていくとかある程度しているんですけど、やっぱり現実ってうまくいかないんです。時々刻々と空の状態が変化する中で、次のポイントを考えている間にもグライダーは飛び続けてしまうんで、その瞬間、瞬間で一番ベストなチョイスをしていかなきゃいけないんです。

また、気象条件も常に変わっていくので、自分が一番いいと思っていたコースよりもさらにいい条件のコースがあったりして。例えば上昇気流のある空域だとか、風とかというのは常に変わってくるので、それを自分で取捨選択しつつ、今乗っている上昇気流よりもさらに良いほうがあれば、都合がよい方に乗り換える、そういったことを常に考えて、決断していかなきゃいけないんです。

■フライトスタイルは「攻め」

---:実際のレースでは参加者が一斉に飛び立っていくということですが、いい気流に乗っている人を見て”あれに乗ろう!”とか、人の後追いだとレースでは勝てないのでしょうか?

呉本:私のフライトタイプっていうのが人の後を追うよりも、自分で先に仕掛けていくタイプの人間なんです。ライバルの動きをよく見て、良い気流に乗っている人についていくフライトスタイルの方もいるんですけど、自分はどうもそれが合わないと感じています。

ライバルの動きを見てついていくというフライトタイプのほうが、確かに確実な方法ですけど、私はどちらかというと自分で突き進んでいって、自分の判断を信じて選択していくっていう飛び方になっちゃうんです。失速するリスクも高いんですけど、それだけにリスクに勝って、先手を取れたときの感動はもう半端なく高いものにもなっていくので、やめられないですね。

---:なるほど。上昇気流をうまくつかまえられることが勝利のポイントとなる。

呉本:う~ん、これが難しいところですね。上昇気流に固執すればいいっていうわけでもなかったりするんですよ。ある空域で、例えば上昇気流が強いけれど横風があったりすると、その横風の影響を受けないところで低く進んで、次の空域で上昇気流を使って進んだほうがいいときもあったりするんですね。

---:奥が深い世界ですね。

呉本:そのへんの判断というのがすごく難しい(笑)。いつも違ったりするんで。

---:常に先を飛んでいると、予想が外れるリスクがあると?

呉本:そうですね、それはありますね。ですので、僕の場合は、ただやみくもに飛んでいくんじゃなくて、例えば山の斜面に日がどれだけ照っているかとか、上空に雲ができているかとか、鳥がどういうふうに飛んでいるかとか、上昇気流がある条件というのを見ながら飛んでいます。

■自転車レースに近い…空で駆け引き

---:渡り鳥のように感覚を研ぎ澄まして、飛んでいる感じですか?

呉本:レースでは集団で飛んでいるので、当然、ほかの選手の動きもやっぱり重要になってきますよね。感覚的には自転車レースに近いという感じがあって、それは自転車も集団で密集して走っているじゃないですか、前を走っている人を盾にして、ある瞬間、状況が変わった時にスピードアップして前に出る、といった駆け引きを空でやっている感じでしょうか。

ですので、レース中は常にライバルを見ながら駆け引きをしてる状態ですね。、その駆け引きの展開次第で、最終的に自分がトップでゴールできるかが決まってくるので、そこはすごく面白いです。先ほど、チェスに例えたのもそういったとこからで、この駆け引きが、私にとってすごく楽しい部分だと思っています。

---:参加経験の多い人のほうが有利になってくる?

呉本:経験数は大きくかかわってきますね。やっぱり初めて行ったエリアでも経験数が多い人は、自分が過去飛んだ経験に照らし合わせて飛べるので。やっぱりそれは経験は非常に重要になってきますね。

---:何年、この競技を続けてらっしゃるんですか?

呉本:そうですね。本気になってワールドカップに参戦してるのは、ここ6年ぐらいになりますが、競技に携わってからは10年ぐらいになります。2014年の世界ランキング1位の選手は、僕と同い年のフランス人で経験も同じぐらいですので、経験と体力的には、今僕らの年代が一番脂が乗って、活躍している世代だと思います。

---:最後に、今後の活動について展望と意気込みを聞かせてください

呉本:2015年もワールドカップにも参加しますので、上位3位以内に入ることを目指して、自分の名前を世界中に広めるようにしていきたいですね。

また、2015年はギネス記録に挑戦することも計画しています。今パラグライダーの飛行距離で世界記録は505kmなのですが、それを打破するために南アフリカに行って記録に挑戦する企画を計画しています。

競技においても記録のほうでも常に挑戦をしていき、自分を鍛えていきたいです。

呉本選手を応援する!
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