【THE INSIDE】都市対抗野球 東海地区二次予選に初登場の山岸ロジスターズは、現代の社会人野球において面白い存在…社会人野球探訪 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】都市対抗野球 東海地区二次予選に初登場の山岸ロジスターズは、現代の社会人野球において面白い存在…社会人野球探訪

オピニオン コラム
Honda鈴鹿・山岸ロジスターズ
  • Honda鈴鹿・山岸ロジスターズ
  • 『よろしく、お願いします』あいさつする山岸ロジスターズ
  • 2人目としてマウンドに登った則本投手
  • Honda鈴鹿と山岸ロジスターズの試合
  • Honda鈴鹿応援席
  • 山岸ロジスターズ・吉田翼(小松島→城西国際大)
  • 山岸ロジスターズ・芝崎純平(埼玉栄→平成国際大)
  • 山岸ロジスターズ・城田一哉(桐生一→平成国際大)
ピンチに投手のマウンドに行ってアドバイスをした監督が、ベンチへ戻るときは全力疾走。そして、ベンチで控えている選手たちがそんな監督の姿を拍手で迎える。

なんだか、ちょっと牧歌的な雰囲気というか、どこかそのあたりの公園の広場で行われている草野球的な匂いもあるが、れっきとした日本の社会人野球トップレベルを競う大会のシーンである。

しかも、全国への切符としては一番厳しいのではないかとも言われている都市対抗野球東海地区の二次予選での試合である。そこに、今年初めて出場した島田市の山岸ロジスターズのワンシーンである。

東海地区の二次予選は企業チーム13と、愛知と静岡に、岐阜・三重の東海4県のうちの3つのクラブチームが加わっての16分の6の代表権を争う大会である。2016(平成28)年5月にチームが設立され、昨年(2017年)の6月に社会人野球連盟にチーム登録が承認されて、9月の大会が公式戦初試合となった。そして今年が都市対抗の予選参加は初めてとなった。それでも、静岡県1次予選を勝ち上がった。

山岸ロジスターズ・天野義明監督(静岡→駒澤大)

最大のライバルとなるのは静岡県のクラブチームとしては二次予選進出の常連ともなっている浜松ケイスポーツBCだ。そこに競り勝っての二次予選進出だった。天野義明監督は、「こんなに早く、二次予選のこんな舞台に出場できるとは思いませんでした。平日の試合ですから、全員有給休暇をとっての出場となっています」と、チーム事情を語りながらもまずは早々と全国への切符を争える檜舞台への進出を果たせたことに対しては満足していた。

そして、自身が全力疾走したことについては、こう言っていた。

「選手がはやし立てるものですから、戻りは全力疾走しないといけませんよね。社会人野球でも全力疾走ということを掲げていますから」

そんな明るさも、チームの持ち味と言ってもいいであろうか。

天野監督自身も、まだまだ手探りながらも、どんなチームにしていこうかということを、運営を含めて模索しているといった感じでもある。

「社会人として、仕事もしっかりとこなしていきながら、野球も全力を尽くすという姿勢です。お手本としては、同じ東海地区でもありますし、矢場とん(ブ―スターズ)さんを目標というか、参考にさせていただいています」

チームをスタートさせた以降も、その方向性というか方針は変わっていない。選手確保に関しては、拓殖大野球部出身でチームオーナ山岸一弥社長の子息でもある山岸龍大(常葉橘→拓殖大)選手兼コーチが呼びかけた。元々は、常葉橘で野球部長も務めていた山下秀樹事務局長(山岸運送総務部課長)とともに、チームをスタートさせるにあたって、「こういうチームが社会人野球で始めようとしているのだけれども、参加してみないか」ということをSNSなども含めて告知して、全国を回って募った。そうして1期生21人、2期生12人が集まった。

メンバーは基本的には山岸運送の社員である。ただ、協力企業もあって1期生では4社、2期生の時も1 社が参加してくれた。協力企業とは、山岸ロジスターズの趣旨に賛同して、社業をこなしていきながらも、野球スケジュールをある程度は優遇してくれる会社ということである。基本的には、山岸社長の縁などでつながっていっているという。

だから、選手全員はそれぞれが社業をこなしながらも、時間を見出して、野球部としての練習をしていくというスタイルだ。

「こんな業種ですが、野球部員は土日に休みを貰っていますから、そこは練習や試合をこなせる環境にはなっています」と、天野監督は嬉しそうに語ってくれた。

都市対抗野球二次予選初戦は、昨年も第五代表で都市対抗本大会は2年連続22回目の出場を果たしている強豪のHonda鈴鹿だった。



企業チーム対クラブチームとなった初戦はコールドゲームとなるケースも少なくはないのだが、山岸ロジスターズは大健闘した。エースの杉山京吾(飛龍)は初回1四球を与えたものの無安打に抑える上々の滑り出し。

しかし、2回には一死二三塁からHonda鈴鹿の柘植世那(健大高崎)にタイムリー二塁打され2点を失った。さらに3回も二死三塁から畔上翔(日大三→法政大)にタイムリーを許し3対0とリードされた。

Honda鈴鹿と山岸ロジスターズの試合

それでも、その裏には二死走者なしから、2番・西勇大(大阪桐蔭)が右前打で出るとすかさず二塁へ盗塁し、4番・吉田翼(小松島→城西国際大)が中前打で帰して1点を返した。続く高橋慎弥(流通経済大柏→平成国際大)も死球で続いたものの、後続は抑えられた。

結局この回の1点のみで、Honda鈴鹿のドラフト候補投手の平尾奎太(大阪桐蔭→同志社大)以下、5人の投手の継投に抑えられた。そして5回にも2人目として投げた楽天則本昂大の弟でもある則本佳樹(北大津→近畿大)が畔上、庄司輔(修徳→國學院大)らのタイムリーで失点。6回は失策絡みで追加点を奪われた。

それでも、7回以降は坂下空(浜松西→静岡大)と芝崎純平(埼玉栄→平成国際大)が0に抑える健闘を見せた。

「3回に1点返した時は、そのままひっくり返せるんじゃないかとも思いましたけれども、そんなには甘くありませんでした」

苦笑しながらも、天野監督はいい戦いができたという感触を得ていたという表情だった。この日の戦いぶりは、社会人野球にまた、フレッシュで楽しみなチームが登場したという印象である。
《手束仁》

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