ブラジルサッカーの聖地『マラカナン・スタジアム』が深刻な財政危機に陥っている。2014年ワールドカップの決勝や、2016年のリオデジャネイロ五輪開会式、閉会式、サッカー決勝戦の舞台になったブラジルを代表するスタジアムが現在は荒れ放題だ。
マラカナン・スタジアムはリオデジャネイロ州の所有になっているが、運営権は2013年にブラジル建設大手『オデブレヒト』率いる運営会社が35年契約で落札している。その後、運営権はリオ五輪・パラリンピック組織委員会に貸し出された。
大会終了後に組織委員会がスタジアムを返却しようとしたところ、運営会社が「スタジアムの状態が貸し出す前と違う」として受け取りを拒否。
運営会社と組織委員会との間で責任の所在をめぐる争いに発展し、スタジアムは管理責任者不在の状態で放置された。現在はピッチの芝が禿げ、電気代未払いにより照明もつけられない状態だという。スタジアムでは略奪行為が行われ備品が盗まれる事件も起きた。
組織委員会の責任問題という声に対し幹部が反論している。
「我々が責められるいわれはない。開会式も見たし閉会式も見ただろう。男子サッカーの決勝を見ても、スタジアムは完璧な状態で美しかった。マラカナンにふさわしい状態だ。オデブレヒトが管理すべきであることは法的にも決定されたことだ。彼らの訴えは昨日の夜に棄却された」
オデブレヒト社は2016年12月、中南米やアフリカなど12の国の公務員に賄賂を渡していたとして、米国など3カ国に罰金35億ドル(約4000億円)を支払うと発表した。同社にはマラカナンの運営を継続する意思がなく、リオデジャネイロ州に引き継ぎを求めたが州の財政状況も逼迫している。
公務員の給与や年金の支払いも遅れている同州は、次の運営会社を探して再び入札にかけるものと見られる。
《岩藤健》