■北陸新幹線に乗って、サイクリングパラダイスへGO!
これまで、都内近郊に住む人が能登半島をサイクリングするのは難易度が高かった。クルマに積み込んでも遠いし、空路も手荷物預けがわずらわしい。輪行して電車で行くにしても、これまでは移動だけで半日かかった。
ところが北陸新幹線が開業し、東京駅から金沢駅まで2時間半で行けることになり、にわかにサイクリング事情が変わってきた。都内からサイクリングパラダイスともいうべき能登半島まで一気にアクセスできるようになったのである。ただし自転車で走ると能登半島はあなどれないほど広大だ。ここはさらに特急列車で北上し、温泉宿で知られる和倉温泉を出発点とするほうがいい。
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北陸新幹線
東京駅を北陸新幹線の一番列車となる6時16分発「かがやき501号」に乗り、終点の金沢で「特急能登かがり火1号」に乗り換えると午前9時54分に和倉温泉に着く。帰路は18時45分に和倉温泉を出発すれば、首都圏なら自宅最寄り駅の終電に間に合うはずだ。つまり日帰りでも7時間は能登半島でサイクリングできる。往復の特急料金を含めて3万円ほど。自転車を分解して専用袋に入れて移動する「輪行」というスタイルを駆使する。いずれにしても電車の旅なので走った後にビールが飲める!
■海の幸、温泉宿を楽しめる能登半島観光
和倉温泉のある七尾から輪島までは片道50kmちょっとだ。「のと鉄道」と並行して走る国道249号を、大相撲・遠藤の出身地である穴水まで北上する。七尾湾を右手に見ながら走るので、途中までは海沿いのルートを取ってもいい。
国道といっても交通量はとても少なく、そのため追い越していくクルマのドライバーが十分に自転車との距離を取ってくれるのでうれしい。しかも雪国の側道は全般的に広めなので、ストレスを感じることなく自転車をこぐことができる。30kmほどでのどかな集落である穴水に到着。ここからは半島を走る稜線を越えて輪島を目指すのだが、この区間の県道はちょうど山がくびれていて、それほど上らなくてもいい。
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そうは言っても輪島に到着するまでおよそ2時間半。休憩を入れれば往復6時間の有酸素運動である。輪島では朝市が開かれる通りを目指し、郷土料理を食べながらゆっくりとお昼休みを取って体力を回復させ、復路に着く。
能登半島はオススメのサイクリングパラダイスだ。七尾湾には能登島があり、起伏に富んだ一周ルートも取れる。半島の西海岸を走れば、迫力ある断崖状の道も楽しめる。すべて北陸新幹線開業のおかげである。観光案内所で「能登半島観光ロードマップ」をもらっておくと、道中の休憩ポイントなどが把握できるので便利。
七尾湾に浮かぶ能登島は、小学生のころによく手書きした日本地図でも書き入れたほどの存在感がある。縄文時代から人が住み、漁業を中心とした生活が営まれたところ。外周道路を一周すると72km。アップダウンがあるのでサイクリングするには健脚向きとなる。四方にそれぞれの美しさを持った海が広がり、じつに気持ちがいい。新鮮な海の幸をランチで味わったりできるし、温泉宿もある。
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現在、半島とはふたつの橋で結ばれ、クルマや自転車のみならずランナーや散歩をする人でも訪問することができる。地図で見る限りはそれほど大きくない島なので、足慣らしのためにちょうどいいと考えていた。ところが実際に走ってみるとアップダウンに富む一周道路はボディブローのように体力を消耗させる。風もそれなりにキツいのでさらに輪をかけて消耗する。
それでも交通量は少なく、しかもときおり眼前に飛び込んでくる港町は静かで落ち着いていて、日常の喧噪を忘れさせてくれるのに十分だ。黒い屋根瓦と日本海の風雨に耐えてきた板壁がとても風情がある。