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オリンピックでおもてなし。接客の極意を解き明かす

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敷田氏は高島屋日本橋店の顔とも言える存在
  • 敷田氏は高島屋日本橋店の顔とも言える存在
  • 敷田氏は東京都中央区 観光協会特派員としても活躍
  • 正面玄関付近のコンシェルジュデスク。計5人のコンシェルジュが接客状況を日報に記録して共有する
  • 敷田正法氏は高島屋日本橋店の正面玄関でお客様をお出迎え
  • 胸には英語が話せることを示すプレート
  • 言葉が通じない場合に活用する電子辞書は必携アイテム
  • 店外に出て丁寧にお客様を道案内
  • 百貨店の建物で唯一重要文化財に指定されている高島屋日本橋店では見学ツアーを定期開催。外国人向けに英語で実施することもある
 業界認証を取得して外国人観光客を取り込む。そのために必要なのは、接客のノウハウだ。しかし、中小の小売店や飲食店では、インバウンド接客のノウハウもなければ、人材もない事業者も多い。では、外国人をもてなすにあたって、必要なことは何なのだろう?

「香港から訪日されたご夫婦が当店でお買い物の後、レストランで食事をしたいから商品をホテルへ届けておいてほしいとおっしゃったのです。当店では本来、そのようなデリバリーサービスは承っていなかったのですが、快くお引き受けして商品をお届けしたところ、とても喜んでいただきました」

 温和な笑顔を浮かべながらこのように話すのは、高島屋日本橋店の名コンシェルジュ敷田正法氏だ。敷田氏は入社後に外商部を経て、ニューヨーク店や国内各店で勤務。その後は日本橋店のコンシェルジュとなり、定年後の現在も現役として正面玄関でお客様をお出迎えしている。

 そして実は、高島屋初のコンシェルジュを2000年に日本橋店で立ち上げたとき、その主導者だったのが敷田氏だ。当時、高島屋には店内を案内する係は置いていたが、店の利用客に店内のみならず、広く“おもてなし”するコンシェルジュの必要性を訴えたという。コンシェルジュは欧米を中心に海外ではすでに普及しており、敷田氏のニューヨーク店勤務の経験が生かされた形だ。

■大切なのは“相手の心に寄り添う”こと

 敷田氏の接客のモットーは“相手の心に寄り添う”こと。例えば、ある商品を探しているお客様と接した際、その商品を希望する理由によっては別の商品を案内する。また、探している商品が店に置いてなく、他のライバル店で扱っていることがわかった場合には、その店を案内するという。

「もしも自分がそのお客様のお立場に立ちましたら、どのようにしてもらうとうれしいかを考えて、喜んでいただけると思うサービスをご提供するのです」と敷田氏はその心を話すが、こうしたおもてなしは、その時点で必ずしも直接的に利益へと結びつくわけではない。

 しかし、「“高島屋日本橋店のコンシェルジュに聞けば見つかるんだ”ということをお客様が実感されれば、また次にもまずは当店のコンシェルジュをお訪ねいただけると思います」と打ち明ける。実際、冒頭で触れた香港からの夫婦は、その後、何度も同店を利用するようになった。

 しかも、これをきっかけにホテルなどと連携し、訪日外国人が買い物後も手ぶらで観光を楽しめるようにデリバリーサービスを正式に導入した。“相手の心に寄り添う”姿勢が、やがて、リピートや新サービスの開発につながったわけだ。


■母国語での挨拶がおもてなしのきっかけ

 そのおもてなしが高く評価された敷田氏は、『日本橋高島屋コンシェルジュの最高のおもてなし』(光文社)や『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ人の心を動かす「気遣い力」』(小学館)などを著し、極意を公開している。では、訪日外国人観光客向けには特別な接客術があるのだろうか?

「“ハロー”“ニーハオ”“アンニョンハセヨ”“ボンジュール”とほんの一言、簡単な挨拶だけでもお客様の母国語で会話を交わすだけで、互いに心が打ちとけると言いますか。その後はボディランゲージだけでも意志が通じて、ご案内にご満足いただけるケースがございます」

 敷田氏はニューヨーク店勤務の経験から、英語の日常会話に対応できるという。さらに、多くの言語で挨拶することで、それをおもてなしのきっかけに生かしている。

 ほかに、訪日外国人観光客に関連してトラブルになりがちなのはマナーだが、「その原因になりがちなのは国民性や社会性の違い」とのこと。例えば、大きな声で騒いでいても、それがお客様の迷惑になっているとは気づいていないこともあるようだ。こんなときには、例えば“socialize(ソーシャライズ=社会性)”などと一声かけて、遠慮を促すのもよいだろう。

 ようするに、客が悪いのではなく、日本ではそういうマナーなのだと案内することで、相手の気分を損なわずに理解を得ようという姿勢を示すわけだ。

「その国の習慣や文化、宗教の違いなどはありますが、日本人と外国人とで接客の姿勢は基本的に変わりません。どこの国のお客様であろうと“相手の心に寄り添う”ことを私は重視しています。“相手の心に寄り添う”という姿勢は、日本人に根付いている“おもてなしの心”と通じています。訪日外国人観光客への接客術は、実のところ、日本人の心の中にそのヒントがあると言えるかもしれませんね」

 日常会話の対応であれば、ポップやスマホなどのツールで解決できるものもある。となれば、多国語でのあいさつ、日本人のおもてなしの心があれば、あるいは敷田氏と同じ日本橋高島屋の接客を行うのも不可能ではない。“相手の心に寄り添う”ことを普段の接客でも心がけ、それを外国人にも恐れずに行うこと。接客の現場やその責任を担うものは、常にその姿勢を心がけたい。

【オリンピックと業界認証:5】名コンシェルジュが明かす「接客」の極意!

《加藤/H14》

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