被災地に自転車を持ち込んで現地を走ることで、大災害からの復興状況、それと同時にまったく変わっていない現実を目の当たりにする。2012年に訪れたときはまだ道路に幾多の亀裂があって、細身タイヤのロードバイクでは走りにくかった。
現在は、浸水した地域のかさ上げ工事が本格化し、ピラミッドのように茶色の台地が本格的に形成されつつある。それでもそんな大規模工事を進めているのは、宮城県の南三陸町や岩手県陸前高田市など一部に過ぎない。
宮城県気仙沼市や陸前高田市はかつて自転車レースが盛んに開催されていたところで、サイクリストにとってはとても思い入れのある地域。リアス式海岸とあってアップダウンが多く、走りごたえは十分だ。林間部の頂点まで上り、一気にダウンヒルを始めるといきなり青い海が視界の中に飛び込んでくる。
こうして起伏に富んだ絶景コースをサイクリングしたあとは、温泉宿で汗を流し、地元の特産物に舌鼓を打つというのが恒例のパターン。ホタテやアワビ、めかぶなどの海の幸はどれも新鮮でおいしい。これが三陸をサイクリングする醍醐味だ。
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「ツール・ド・東北」を走るサイクリストを応援する地元の皆さん
現地をサイクリングしていると、津波が到達した地点に道路看板が掲示されているので、そのパワーの大きさを如実に感じることができる。改めてあのときの記憶がよみがえり、大災害への備えを怠らないようにせねばという気持ちでいっぱいになる。
被災地をサイクリングして、それで復興支援につながるのか? そんな意見もあるだろうが、地元の人たちは温かな目で歓迎してくれて、「また来てね」と必ず声をかけてくれる。あまり深く考えることなく、現地に自転車を担いで行ってみることをおすすめしたい。