外国人が語る「日本人は宇宙人」説…2020年東京オリンピックで“おもてなし”の切り札になる! | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

外国人が語る「日本人は宇宙人」説…2020年東京オリンピックで“おもてなし”の切り札になる!

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東京オリンピック・パラリンピックのエンブレム
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警視庁の調査によると、2014年に東京都で落し物として届けられた現金は約33億4000万円に上り、そのうち約74%の24億7000万円が当人の元に戻ったという。

半年ばかり世界各国を回っていた際に、同じように旅をしていたあるエジプト人旅行者に言われた一言が、今も耳に残っている。ボリビアの安宿。複数国出身のバックパッカー同士で、夜ご飯を食べている時だった。

「The Japanese are truly aliens(日本人は、本当に宇宙人だよ)」

よくよく話を聞いてみると、どうやら異なる考え方、文化を持つ集団のことを、ある種の尊敬を込めて発した一言らしかった。では、具体的にはどういったところが「宇宙人」なのか。彼はあるエピソードを象徴として語った。

「僕は昔、日本を旅行したことがあるんだ」

日本旅行の際、日本食、美味しい酒を堪能した彼は、すっかりいい気持ちでレストランを後にした。まっすぐ宿に帰って熟睡し、昼頃に目覚め、さぁ観光だ、といった気分になったところである重大なことに気がついた。財布が、ない。

ボリビアの安宿。色々な国の人が入り乱れた食事の場での話だったが、この話を聞いていた人々の反応は当たり前のように「無くした財布が、持ち主の元に返ってくるわけがない」というものだった。

「自己責任だ」「無くした方が悪い」という考え方は彼らの国では当たり前のようだったし、盗難の絶えない中南米諸国を旅していたバックパッカーたちの間では、もはや「盗まれた方が悪い」という価値観さえ芽生えつつあったように思えた。

そんな状況であったから、次に続く彼の話はバックパッカーたちにとっても衝撃的なものであったようだ。

「急いで昨日食事していた店に駆け込んだら、財布があるんだ。それも全く同じ場所に、中身を1円も抜かれずに!はっきり言って信じられなかったよ」

「落とし物や無くしたものが戻ってくることは、日本では往々にしてあることだよ。また、半年間所有者が現れない場合、拾得者はそのお金を受け取る事ができるのだけれども、ほとんどの拾得者は請求することがないようだよ」

こう私は付け加えたが、どうも彼らからすると信じられないことだったのだろう。こういった価値観で生きている人々のことを、彼は「宇宙人」と呼びたくもなったのかもしれない。

もちろん、日本で落とし物をしてもそのまま盗まれてしまうことだってあるに違いないし、日本のすべてを手放しに称賛することは難しいが、少なくとも落とし物が持ち主の元に返ってくる確率は、世界各国と比較してもかなり高い水準にあるといえるだろう。

2020年の東京オリンピックにおいても、この文化は大いに外国人観光客を驚かせる可能性がある。

…いや、実は、1964年の前東京オリンピックの時点で、彼らを驚かせていたのだ。

1964年10月10日の朝日新聞では、「英国人のオリンピック観光客が、『銀座で買った服他をタクシーの中に置き忘れた』と派出所で事情を話していたところ、まもなく運転手が忘れ物を届けに来た」というニュースが報道されていた。

さらには英国人観光客は礼金を差し出そうとしたが、「気持ちだけで結構です」と運転手が受け取らなかったという事実も伝えられていた。英国人観光客は「何よりも嬉しいみやげ話ができた」と運転手に感謝したという。

また、オリンピック取材のため来日したユーゴスラビア人が落とした6万円が返ってきたニュースや、オリンピック観戦のため来日したデンマーク夫妻が落とした入場券40枚分が入っているカバンが届けられたニュースが1964年10月10日の朝日新聞夕刊、10月11日の朝刊で報道されている。

他にも外国人観光客ではないが、1964年10月1日の朝日新聞の記事に、「上野駅近くで200万円を落とした社員が悲嘆に暮れていたところ、幸い少年会社員と商店経営の女主人に拾われており、まもなく持ち主の元へ戻った」という事実が報道されていた。

1964年頃からすでに「落とし物を持ち主の元へ届ける」という習慣が国民に身についていたようにも思える。

滝川クリステルさんが五輪招致の際に行ったプレゼンテーションで、日本の「おもてなしの心」の例として「落とし物が持ち主の元へ戻ってくること」を真っ先に挙げていたが、オリンピックに訪れる外国人観光客への「おもてなし」の切り札は、「落とし物を無事に持ち主の元へ返す」という文化そのものなのだということを改めて認識した。
《大日方航》

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