【THE SPIKE】武田翔太、大舞台に動じない強心臓…幻惑の魔球で世界を斬る | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE SPIKE】武田翔太、大舞台に動じない強心臓…幻惑の魔球で世界を斬る

オピニオン コラム

カーブ 参考画像(c)Getty Images
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3月25日、日本のプロ野球がセ・パ同時に開幕した。開幕前にはプレーとは別のところで世間を騒がしてしまった感もあったが、いざペナントレースが始まれば試合に集中したい。それは選手もファンも同じ思いだろう。

今年の飛躍が期待される選手を挙げればきりがないが、中でも最も注目したい選手がソフトバンクの若き右腕・武田翔太投手だ。昨年は1年間先発ローテーションを守り切り、自己最多の13勝。勝率はリーグ2位と活躍し、チームの2年連続日本一に大きく貢献した。まだ22歳。これからの活躍が最も期待される投手と言っても過言ではないだろう。

入団前は「九州のダルビッシュ」の異名

武田には甲子園出場経験はない。それでも、186cmの長身を活かした投球スタイルと縦の変化球のキレは一級品で、宮崎日大高時代からプロのスカウトの熱い視線が注がれていた。その潜在能力を高く評価され、2011年のドラフト会議でソフトバンクから1位指名を受けた。地元・九州の球団への入団を希望していた武田とソフトバンクの相思相愛が実った瞬間だった。

入団時、武田に対する各球団のスカウト陣の評価は軒並み高く、「あの縦のスライダーはプロでも十分に通用する」「今は縦に落ちるカーブを投げる投手はほとんどいない。故障しそうなタイプでもない」「投手としてのスケールの大きさを感じる」など、武田への賛辞は止まなかった。


衝撃のデビューと2年目以降の沈黙

武田の1軍デビューは2012年シーズン。高卒1年目にして8勝(1敗)を挙げる活躍。さらに完封勝利も記録した。多少打たれようともマウンドで動揺することがなく、ポーカーフェイスで飄々と投げる姿はとても高卒の新人とは思えず、ふてぶてしさすら感じた。縦に落ちるスライダー、カーブを巧みに操り、投球回数67回で67個の三振を奪った。自責点はわずか8点。投球回数は少ないながら、防御率は1.07を記録した。その内容から衝撃的なデビューだったと言える。

期待以上の成績をおさめた武田には、2年目以降のさらなる活躍を誰もが期待したが、怪我に泣かされることになる。右肩痛に苦しみ、2013年は4勝(4敗)、2014年は3勝(3敗)の成績に終わっている。怪我の影響からか制球にも苦しみ、2013年は投球回数が93回で68個もの四球を与えている。クライマックスシリーズや日本シリーズなど要所要所での好投が印象に残るが、シーズン中は苦しみ、試行錯誤を重ねていた。ただ、右肩の怪我をはじめ、そうした苦い経験があったからこそトレーニングの改良があり、2015年の飛躍につながったのだろう。


打者を幻惑する魔球「ドロップカーブ」

長身から投げ下ろす角度のある直球は平均球速約145km(最速154km)。また、角度や球速に微妙に変化をつけた3種類のカーブを操る。その他にもスライダーやチェンジアップ、カットボールと変化球も多彩だ。

中でも一番の武器が、武田の代名詞でもある魔球「ドロップカーブ」。縦に大きく割れて落差があり、取りたい時にストライクが取れる。ベース前で落として空振りを取れるキレもある。西武の岸孝之投手が、2008年の日本シリーズで巨人打線を翻弄したのも縦にストンと落ちる大きなカーブだった。現在の日本のプロ野球界ではほとんど見られない軌道、稀有な球であり、打者を幻惑する。その上、投球のテンポもいい。このドロップカーブを軸に、縦と横のスライダーなどを織り交ぜていく。

力感のないフォームも武田の特長。ゆったりとした動作でありながら、腕の振りは鋭く、カーブとはいえ球速も120km台。直球と同様の初速から急激に落ちる球はそうそう打てるものではない。武田は自身のカーブが生まれた背景に小学校時代にやっていたというバレーボールのアタックを挙げる。アタックをする時の腕の使い方が投球フォームの原点だと言う。確かに、真上から鋭く振り下ろす様や投げ終えた後のフォロースルーの姿勢はバレーボールのそれを彷彿とさせる。

大舞台での強さ

武田は2014年、2015年の日本シリーズで登板。記憶に新しい2015年のヤクルトとの日本シリーズでは、大事な初戦の先発を託され、9回2失点で完投勝利を挙げた。また、2014年の阪神との日本シリーズでは第2戦に登板。日本シリーズ初登板ながら、阪神ファンで埋め尽くされた敵地・甲子園で7回を投げ、3安打1失点と好投した。

この時、主軸のゴメスやマートンのバットはドロップカーブに空を斬り、阪神打線は武田の投じる魔球に手も足も出なかった。日本シリーズでは2年連続で優秀選手賞に選ばれており、大舞台に強い投手というイメージも徐々に定着しつつある。

昨秋に行われた世界野球WBSCプレミア12でも、堂々たるピッチングを見せた。ドミニカ共和国戦で先発し4回を5安打無失点に抑え、3位決定戦となったメキシコ戦でも3回1安打無失点と好投した。大谷翔平投手(日本ハム)や前田健太投手(現ロサンゼルス・ドジャース)の投球に注目が集まる中、武田は着実に結果を残して首脳陣からの信頼を獲得していた。現に、侍ジャパンは惜しくも準決勝で敗れたが、決勝に進出した場合には、先発を武田に託すことが内定していたという。

力まかせに振り回してくる打者が多い国際大会。武田のドロップカーブの軌道を初見でとらえるのは至難の業だろう。ましてや、プレッシャーのかかる場面でもひるむことのない強心臓の持ち主だ。

武田翔太には大舞台がよく似合う。この先の日の丸をつけた戦いで、この男の重要度はますます高まっていくだろう。
《浜田哲男》

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