【THE REAL】植田直通の潜在能力…リオ経由ロシア行きを描く魅惑の大型センターバック | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】植田直通の潜在能力…リオ経由ロシア行きを描く魅惑の大型センターバック

オピニオン コラム

植田直通 参考画像(2016年1月26日)
  • 植田直通 参考画像(2016年1月26日)
  • 植田直通 参考画像(2015年3月31日)
  • 植田直通 参考画像(2015年4月21日)
文化も習慣も気候も異なるカタールへ飛び立ったのが1月2日の深夜。魂を削られるようなプレッシャーとも戦いながら、18日間で延長戦を含めて5試合、計480分間にわたってU‐23日本代表の最終ラインを死守し続けた。

肉体的にも精神的にもすり減っているのではないか。心身に蓄積した疲労を気遣う鹿島アントラーズのスタッフに対して、1月31日深夜に羽田空港へ降り立ったDF植田直通はこんな言葉を伝えている。

「オフはいりません」

一夜明けた2月1日。ともにU‐23アジア選手権を戦ったGK櫛引政敏、MF三竿健斗とともに、植田は空路で宮崎へ移動。1月中旬からキャンプを行っていたアントラーズに合流し、翌2日にはロアッソ熊本とのニューイヤーカップで途中出場を果たした。

昨年12月上旬から、中東遠征や石垣島合宿を含めてほぼ無休で突っ走ってきた。疲れがないはずがない。それでも、1994年10月生まれの21歳は自らに言い聞かせるように語気を強めた。

「自分は若いので、休む必要はないと思っています」

5大会連続で出場してきた五輪の歴史が、今回ばかりは途切れるのではないか。芳しくなかった下馬評を劇的な勝利の連続で覆し、23歳以下のアジア王者の肩書とともに獲得したリオデジャネイロ五輪への切符は、植田の存在を抜きには語れない。


植田直通

難敵・北朝鮮代表と対峙した1月13日のグループリーグ初戦。開始わずか5分にセットプレーから右足ボレーで先制弾を鮮やかに叩き込み、仲間たちをプレッシャーから解き放ったのが植田だった。

「初戦ということでみんな緊張していたし、このままじゃいけない、セットプレーで僕が必ずゴールを奪ってやろうと思っていました。実際にゴールできて、僕自身もびっくりしましたけど」

照れ笑いとともに振り返った殊勲の一撃は、序章にすぎなかった。日本が苦手としてきたロングボールを、大会を通して最終ラインで跳ね返し続ける。186cm、77kgの巨体が、何度もたくましく映った。

■ワニのように相手を仕留めたい

ちょうど3年前。熊本県の強豪・大津高校からアントラーズの門を叩いた植田は、入団発表の席で自らを獰猛なワニにたとえて周囲を驚かせた。

「ワニは獲物を水中に引きずり込んで仕留める。自分も得意とする空中戦や1対1にもち込んで、相手を仕留めたい」

そろってアントラーズに入団したFW豊川雄太(現ファジアーノ岡山)は、大津高校での3年間で植田がワニになった瞬間を何度も目撃してきた。

「アイツが守備で負けたのを見たことがない。大学生でもプロでも、みんな吹っ飛ばしていた」

ともに日の丸を背負い、リオデジャネイロ行きをかけて臨んだカタールでの戦いでも、豊川は何度もデジャブを覚えたはずだ。高さと強さ、そして50mを6秒1で走破する速さを前面に押し出し、相手フォワードを餌食にし続けた植田はしかし、個人的にはまったく満足していなかった。

「(五輪出場権獲得と優勝は)嬉しかったことは嬉しかったですけど、韓国との決勝戦で2失点を許しているので、僕自身はあまり喜べなかったですね」

10チームを超えるJクラブが争奪戦を繰り広げた逸材が、待望のJ1デビューを果たしたのは2014年4月26日。出場停止だった青木剛に代わってセンターバックに入り、王者サンフレッチェ広島から奪った3-0の完封勝利に貢献した。

■1対1では誰にも負けたくない

2014年シーズンは最終的に20試合、1542分間にわたってピッチに立った。しかし、さらなる飛躍が期待された昨シーズンは12試合、839分間に終わる。サンフレッチェから加入した元韓国代表のファン・ソッコにポジションを奪われ、セカンドステージに至ってはわずか2試合の出場にとどまった。

大津高校に入学した直後の2010年5月に、それまでのフォワードからセンターバックに転向。同時に自身のボディに宿る稀有な身体能力に気づいてから、こんなポリシーを貫いてきた。

「1対1では誰にも負けたくないし、負ける気もしない。自分が相手のエースを潰せば、チームも勝てると思っている」

生粋の九州男児は性格も一本気で、ゆえに相手フォワードとの駆け引きや周囲との連携で課題を指摘されてもきた。もっとも、ワールドカップ・ブラジル大会にも出場したファン・ソッコとのレギュラー争いで、後塵を拝してしまった理由はもうひとつある。

野武士をほうふつとさせる風貌からはなかなか想像できないが、試合中に犯したミスをどうしても引きずってしまう。心が不安定な波を刻む時間が長引くあまりに、プレーまでもが袋小路に入ることも珍しくなかった。

【植田直通の潜在能力…リオ経由ロシア行きを描く魅惑の大型センターバック 続く】
《藤江直人》

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