【THE INSIDE】プロ野球界の人事異動、選手の数だけ移籍がある | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE INSIDE】プロ野球界の人事異動、選手の数だけ移籍がある

オピニオン コラム
甲子園球場 イメージ
  • 甲子園球場 イメージ
  • 広島カープの前田健太  参考画像
  • 藤川球児 参考画像(2015年5月15日)
  • 松坂大輔 参考画像(2014年9月23日)
  • 山本昌 参考画像(2015年11月11日)
人事異動はどんな社会にもつきものである。企業であれば、部署の異動も当人にとっては新しい職場環境となる。

系列会社がいくつもある大企業なら、別の系列会社へ異動となれば本人の意思とは別に、これまでと違った環境が与えられるのである。教員の世界でも、公立校であれば他校への異動が一般的には6~10年のサイクルで行われる。

そういう意味ではプロ野球の世界でも、「移籍」はあるのが普通だというとらえ方ができるだろう。

■契約システムや意識が変化した野球界

ただ、プロ野球の世界はファンあってのものであり、スポーツ新聞やニュースなどの報道で常に選手の移籍などの人事情報が知らされる。それを見て物思うのもオフの期間のファンの楽しみになっている。

今シーズンは、2度目の沢村賞を獲得した広島の前田健太が11月24日にポスティングシステム(入札制度)によるメジャーリーグへの移籍希望の意思表示をした。また、ロッテの今江敏晃がフリーエージェント(FA)権を行使して楽天へ移籍する。

また、かつてFAで海外へ移籍、3年間プレーした後に自由契約となり帰国し、四国の独立リーグでプレーしていた藤川球児が4年ぶりに阪神に戻った。藤川のケースはいわば再雇用になるのだろう。もちろん結果は出さなければいけないのだが、破格の2年契約で4億円と発表された。


テキサス・レンジャーズ時代の藤川球児

昨シーズンは、2006年にポスティング制度でメジャーへ進出した松坂大輔がメジャー8年間で56勝43敗1セーブという記録を残して帰国。ソフトバンク入りをしたものの、2年連続日本一という球界の頂点に輝いているチームには貢献することができなかった。言葉は適切ではないかもしれないが、球界でも再雇用の難しさを実感させられる結果であった。

その一方で、1984年に日大藤沢からドラフト5位指名で入団以来、50歳の今年で現役引退するまで、32年間中日一筋で在籍し続けたのが山本昌だ。考えてみれば、今の時代でこれだけひとつの球団に在籍していたこと自体が奇跡に近いと言っても過言ではあるまい。そもそも入団した球団で活躍して結果を残しながら、プロ野球選手をまっとうしてその球団で選手生活を終える選手が近年は極端に減少してきた。

これはやはり1993(平成5)年にプロ野球選手会が、FA権を獲得して権利を取得した選手は希望球団に移れることになり、意識に大きく変化が表れたということであろう。それはチームへの憧れだけではなく、現状の自分に対する評価に対して、不満を示す意味でFA宣言をする選手も増えてきている現実もある。


ニューヨーク・メッツ時代の松坂大輔

FA制度ができて、その行使者第1号は現在中日のゼネラルマネージャーを務める落合博満である。ロッテ時代に3度三冠王に輝きながら、半ば自ら希望して牛島和彦や上川誠二ら1対4のトレードで中日に移籍。その7年後にはFA制度を活用した最初の選手として巨人に移籍している。

落合の中日入りの際のトレード発表も、その後の巨人入りも大きなニュースになった。かつては球界のオフの話題のひとつとして大型トレードがあった。それは他球団で活躍した選手と、自球団でくすぶっている選手を入れ替えるという人事異動というトレードが、最も戦力整備として手っ取り早い方法であったからでもあろう。

球界最初の大型トレードが、阪神の小山正明と大毎の山内一弘だろうか。1963(昭和38)年オフのことである。1975年には阪神のエース江夏豊と南海の江本孟紀というトレードも成立。阪神はクラウンライターが西武となった1979年に、阪神の田淵幸一と古沢憲吾が移籍し、阪神へは真弓明信、竹之内雅史ら4人が入団することになった。


中日一筋だった山本昌

これも球界を騒然とさせたトレードだった。もっとも、これは当時西武を率いることになった根本陸夫監督が仕掛けたものでもあった。ドラフトでもトレードでも、編成部長になってからも、自身がダイエーへ異動してからも、さまざまなテクニックを駆使して球界人事で「あっ!」と驚かせてきた。

こうした大型トレードそのものが少なくなってきた背景には、FA制度や大物選手がメジャーを視野に入れた動きをすることがあるだろう。社会でも終身雇用にこだわらなくなったのと同様に、プロ野球の世界でも球団にこだわらず、自分を高く評価してくれるチームを求めていく思いが強く表れるようになってきたということであろう。

いずれにしても企業も雇用スタイルやシステムが変化してきているように、野球界も同様に契約システムや意識に変化が生じてきているのではないだろうか。
 
《手束仁》

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