シーズンが終わると、多くのファンの興味はドラフト選手の動向はもちろんのこと、俗に「ストーブリーグ」と呼ばれる各チームの来季戦力がどうなるかという点に向けられる。監督人事も興味深いところである。
■6球団が新監督のもと2016年シーズンを迎える
プロ野球の監督という立場は、非常に微妙で、選手を経験した者にとっては最高の名誉であり目指すところだが、一旦監督を引き受けたら連日胃の痛くなるような思いをせざるを得なくなる。それでも声がかかれば「名誉」と感じ、監督を引き受ける。
今オフは、選手兼任の解けた中日・谷繁元信監督と、代行からそのまま就任したオリックス・福良淳一監督を含めて、6人の新(専任)監督が誕生した。つまり全12球団の半分の6球団が新体制で走り出すということだ。それだけでも非常に興味深い。
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選手時代の高橋由伸
組織としてプロ野球を見た場合、監督というのはいわば現場責任者になる。その現場責任者が大幅に変わったのだから、組織体制そのものが大きく変わっていくだろうという見方があるのも当然。なかでも巨人と阪神、東西の老舗球団で監督が一気に若返ったのは特筆すべきことだ。
巨人は12球団の監督で最年少となる40歳の高橋由伸が、現役を引退してそのまま就任。兼任コーチは務めていたとはいえ、本格的なスタッフ経験がないままの監督就任である。それは阪神の金本知憲(47歳)も同じことだ。広島から移籍して2003年に阪神のユニホームを着ている。
その年、阪神のリーグ優勝、日本一に貢献したことで金本は一気に阪神に受け入れられた。それ以来「アニキ」のニックネームで親しまれ、チームリーダーとして信頼されてきた。しかし、現場のコーチとしての経験はない。
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選手時代の金本知憲
ふたりが果たしてどんな采配を見せてくれるのか。早くも来年のキャンプインが楽しみだが、すでに指導している金本は、休日に急遽紅白戦を組むなどファンサービスと戦力アップを天秤にかけながら、ビギナーゆえの強さを発揮せんとしている。
今年の日本シリーズはソフトバンク・工藤公康、ヤクルト・真中満、どちらも初監督となるシーズンでリーグ優勝しての対決だった。さまざまな情報が以前に比べて土台となっている今日、監督初就任だからといって大きなハンデがあるわけでもないようだ。そう思えば来季の巨人対阪神戦は、また新たな見どころが生まれてくるのではないだろうか。
DeNAは中畑清前監督が成績不振を理由に契約延長を強く固辞したことで、やや意表をついた形でアレックス・ラミレス新監督が誕生となった。この人事にも注目したいところである。そして3年目で監督専任となった中日・谷繁監督が、まさに指揮官としての生命線をかけて挑むシーズンになっていくのではないかという興味もある。
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就任会見時のアレックス・ラミレス新監督
話題豊富なセ・リーグの監督人事に対して、パ・リーグの監督人事は少し静かだ。オリックス・森脇浩司監督がシーズン半ばでの休養、その辞任を受けて代行から昇格した福良淳一監督は、すでに今季後半にもその実績を見せている。
昨季から今季、同じような形で就任していたのが西武・田邉徳雄監督だが、今季は5位に沈んだ。実質3年目の来季は正念場となる。楽天は梨田昌孝監督が新たに就任しているが、新監督とはいっても近鉄(現オリックス)と日本ハムで日本一も経験しており、キャリア十分のベテラン。62歳で12球団最年長だ。星野仙一副会長ともNHKつながりといっていい縁がある。それだけにチーム再建への期待は大きい。ロッテ・伊東勤監督は3年間ですっかりイメージも定着してきた。
これらを迎えるのが、2012年就任以来5年目を迎えて気がつけば最も長期政権となった日本ハム・栗山英樹監督である。2015年は必ずしも納得のいくシーズンではなかったはずだ。二刀流として迎え入れた大谷翔平投手も、いよいよその真の成果を問われる4年目を迎える。栗山監督としても大谷は自身が育ててきたという自負もあるだろう。
12球団、12色の監督カラーがある。その思惑に沿って、これからは戦力外通告という厳しい告知とともに、トレードなどの人事異動もある。監督のカラーに沿って、チームがどう染められていくのか、それをなぞっていくのもオフシーズンの楽しみのひとつだ。