11月15日に行われた、ブラウブリッツ秋田とのホーム最終戦。後半29分からMF重松健太郎に代わってピッチに投入された中村は、同40分にかつてと同じ輝きを放ちかける。
敵陣の中央でボールを受けて、まずドリブルで攻め上がる。ブラウブリッツのマークを中央に引きつけてから、右サイドに生じたスペースへ駆け上がってきたDFペ・デウォンへはたく。
すかさずスピードのギアをあげて、ペナルティーエリア内へ侵入する。あうんの呼吸でペ・デウォンが浮き球のパスを送る。そして、フリーの状態でダイビングボレーを放つ――。
中村の右足から放たれた強烈な一撃は、左へダイブした相手GKに弾き返されてしまった。
「ああいうところで決めないと、FWとしてはダメですね」
幻と消えたゼルビアでの初ゴール。画竜点睛を欠いたプレーに、中村は苦笑いを浮かべるしかなかった。
「フリーでボールを運べていたので、(ペ・デウォンは)見えていました。最後は当てることだけを考えていたんですけど、いいコースに飛ばせるようにやっていかないとダメですね。長くけがをしてしてたので、(2009年と)同じようなプレーをするのは難しいかもしれないけど、いまの自分に求められるプレー、いまの自分のできることをしっかりとやりたい。ただ、(レッズとの天皇杯で)90分間プレーできましたし、状態そのものは悪くないと思う」
■J1昇格という経験
ブラウブリッツ戦を2対0の完封勝利で飾ったゼルビアは勝ち点を77に伸ばし、前日にJリーグ・U‐22選抜と引き分けていた首位のレノファ山口についに並んだ。
得失点差が大きく後塵を拝している関係で、ゼルビアの2位は変わらない。それでも、ともに敵地で戦う23日の最終節へ、確実にプレッシャーをかけられる。
2位以上も確定させたので、たとえこのままリーグ戦を終えたとしても、J2の21位との入れ替え戦に臨むことができる。ゼルビアにとっては初体験かつ未知の戦いとなる。だからこそ、かつてJ1昇格という修羅場をくぐり抜けた中村の存在感が増してくる。
「(ベルマーレで)そういう雰囲気を感じた部分もあるので、そのなかで自分に何ができるか、どのようにしてチームをもっていくかを考えていきたい。ただ、自分たちがやるべきことを日々しっかりとこなしていくことが、昇格へ向けての一歩になる。そういうところをサポートしながら、チーム一丸となって戦っていきたい」
ここまできたら、浮き足立ったチームが涙を飲む。人事を尽くして天命を待つしかない。自然体を貫く中村の脳裏には、エールを送り続けてくれたベルマーレのサポーターの姿が常に刻まれている。
「自分が元気でやっている姿を、ネットや何かで見てもらえれば嬉しいですね」
ベルマーレ時代は「スナイパー」と称された、ワンタッチでゴールネットを揺らす特異な得点感覚。自らの武器が再び頭をもたげかけていると感じながら、29歳になった苦労人は胸突き八丁の最終節へ臨戦態勢を整える。
《藤江直人》
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