9月19日に行われたラグビーW杯、日本は南アフリカを34-32で下した。最後は逆サイドへワイドに振り、南アフリカを振り切ってカーン・ヘスケスが逆転のトライを決めた。
■世界を驚かせた“あり得ない”勝利
ラグビーは下克上やマグレが起こらないスポーツと言われている。人間と人間が直接肌を合わせ、ぶつかり合う競技の特性上、どうしても弱いチームがワンチャンスで引っ繰り返す展開にはなりにくい。
世界ランク13位の日本が、同3位の南アフリカに勝ったことを海外メディアは「W杯史上最高の驚き」と伝えている。そもそも普段なら試合さえ受けてもらえないほど、南アフリカは格上のチームなのだ。
日ごろラグビーを見ない人に、これがどれほど“あり得ない”ことなのか伝えるのは難しい。
サッカーで言うならJ1昇格経験のないJ2チームが、本気のイングランド代表やドイツ代表に勝つようなもの、体格差が如実に表れる競技と考えたら、バスケットボールで日本のクラブチームがアメリカ代表に勝つといったほうが近いだろうか。
それくらい考えられないことをやってのけた。
日本のラグビー関係者でも本気で勝利を信じていた人はいなかっただろう。負けて元々、どれだけ良い試合をして食らいつけるか、次のスコットランド戦につなげられるかを評価の基準にしていたはずだ。
だが代表チームだけは自らの勝利を信じていた。
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《岩藤健》
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