フットボール有識者5人が語る「日本サッカー界のこれから」…中田浩二、二宮清純、西村雄一、城福浩、岡田武史 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

フットボール有識者5人が語る「日本サッカー界のこれから」…中田浩二、二宮清純、西村雄一、城福浩、岡田武史

スポーツ まとめ
ADIDAS NEW FOOTBALL SUMMIT(2015年6月30日)
  • ADIDAS NEW FOOTBALL SUMMIT(2015年6月30日)
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アディダスジャパンは6月30日、新コンセプトのもとに7月1日より発売されるフットボールスパイクの「X(エックス)」と「ACE(エース)」のローンチイベントを東京都内で開催した。

「ADIDAS NEW FOOTBALL SUMMIT」と題されたイベントでは、フットボール有識者として中田浩二氏、二宮清純氏、西村雄一氏、城福浩氏、岡田武史氏の5人が登壇。今後のフットボールについてそれぞれの立場からトークを繰り広げた。

---:強いチームの共通点とは?

岡田武史氏(以下敬称略):選手全員が「こうする」という意思統一をしていることに加え、強い「個」が存在しているのが強いチームの条件だと思います。CLも、W杯も、どちらかに偏っていたチームは落ちていったように思えます。

---:「堅守速攻」などの、チームとしてのアイデンティティがしっかりとあって、それを実現できる個の力が合わさっているチームは強いということですね。

城福浩氏(以下敬称略):チームとしての「意思統一」と、「個」の力。相反するまではいかないが、選手各々ストロングポイントを見せたいし、それ以外に力を使いたくないので、監督としては、いかに効率よく選手の力を出させるか。個人を活かすためのチーム戦術が求められると思います。監督と選手の歩み寄りが必要とされますね。

岡田:右か、左か。チームか、個人か。放任主義か、管理主義か。はっきりさせるのが日本は好きなように思えますが、はっきりさせたいけれど、そうもいかないから難しいんです。どっちかひとつやっとけばいいなら簡単とはいかないまでも、そう難しくはないと思うので。

理想を言えば、すべての個を活かしたいけれども、なかなかそうもいかず、チームも活かしていかなければならない。両方から合わせていかなければならない。両者のバランスが整ったチームをつくることが大切だし、だからこそ難しい。
西村雄一氏(以下敬称略):イタリアでは、「最高のシェフ」の条件という問いがあります。その答えは、「目の前にある食材で最高の料理をつくることができること」だそうです。その次が、「最高の料理をつくるために、最高の食材をあつめられるシェフ」です。これもなかなか難しい。

これ、「食材=人材、料理=組織」と考えると、まさに「最高の監督」の条件になると思うんですね。目の前にある選手で、最高のチームをつくっていくという。

---:アディダスは、強力な個の力を持つ選手を「フットボールクリエイター」と呼んでいますが、理想となるアイデンティを体現する「ACE」と、それを破壊し超越する「X」は、それぞれ試合でどういう役割をチームに果たすのでしょうか?

岡田:現代サッカーは、トータルフットボールとは言われていますが、そうはいってもやはり選手によって長所と短所があります。役割分担を「決める人、創る人、運ぶ人」と分けると、その中で「ACE」は「創る人」に分類されると思います。相手の意表をつくような組立てをして、最後に決める人にゴ-ルしやすい状況をつくること。これが、求められる役割だと思います。

---:相手のゲームプランを破壊する「X」はどういった役割が?

城福:パスを何本つないでも、ポゼッションがいくら高くてもサッカーは勝てない。存在が消えている時間が長くても、ゴール前で際立つことができれば注目される。ゴールを奪うことができる、これがXに求められている役割だと思います。

中田浩二氏(以下敬称略):僕はまったく「X」のような選手ではありませんでした。どちらかといえば「ACE」のような選手。でも、チームにベイルのような選手がいれば、チーム的にも非常に楽になるということを選手時代から感じていました。チームにひとりいるかいないか。そういった選手だと思います。決定的な仕事、苦しい時間帯でも点が決められる選手がチームにいるのは、非常に大きな役割を果たすと思います。

---:今後のフットボールのトレンドはどうなってくる?

中田:「ACE」のような選手が増えてくると思います。「X」のような試合を決められる選手は、「ACE」ような選手に比べてなかなか出てこないのかな、とは思います。
二宮清純氏:中村勘三郎が、『型を身に付けねば型破りにはなれない』という格言を残していますが、これは本当にそうで、型を身につけていないで自由にやっているだけであれば、それはただの「型なし」です。「ただ自由にやっていればクリエイターと呼ばれるのか?」と問われたら、私はそうではないと思います。

日本語にも、「守破離(しゅはり)」という言葉があります。「守って破って離れる」と書いて守破離。守る=基礎を身に付ける、破=イノベーション、離=独立する。つまり、クリエイター。最初から与えられた自由は自由ではないんですね。まずは型を身に付ける。これが、進化の歴史だと思います。

今治FCで、岡田さんはこういうことをしようとしているのではないかと感じているのですが、岡田さん、どうでしょうか?

岡田:おっしゃる通り、自由なところから、自由というのはなかなか出てこないんですね。型があるから、そこをやぶって自由なものが初めてでてくる。これはその通りだと思います。「誰がやっても、どんな選手がでてもチームとしてこうする」というのを我々は目指していますが、それだけでは勝てない。「X」は、そういった戦術ではどうしようもないところを決めてくれる存在でもあると思います。

現代サッカーは、ほとんどの国で戦術レベルが上がってきています。昔は弱い国で、守備が崩壊していたようなチームも、今はかなりしっかりしていますよね。そこで、戦術を超える、「X」がさらに重要になってくるのではないでしょうか。それがメッシのような選手かもしれないし。

ただ、今治モデルが全てを解決できるとは思っていないが、これからのサッカーになにかを創っていけるのではないかと感じています。

西村:レフリーは、日々新しいサッカーに出会えます。1番のサッカー好きの集まりですから。次のサッカーが楽しみです。今後も、レフリーとして選手を支えていくつもりです。

城福:コパアメリカの準々決勝にて、こういったシーンがあったんです。パストーレがフルスピードで、また抜きしてクロスを上げたんですね。それを、アグエロが一瞬のフェイクでマークを振り切って合わせたのですがキーパーに阻まれ、メッシがそれをつめるもまたもやキーパーに阻まれ…というシーンです。

あれは、まさに「ACE」と「X」が組み合わさった例だと思います。ただ急いで慌ただしくなるのではなくて、判断、プレーのスピードがもっと上がっていくように思えます。

岡田:将来のトレンドとしては、先程も言いましたが、だんだんチームに戦術が浸透して、平均レベルが上がり、それを破る「X」、それをさらにおさえようとするチーム…といったように、追い越し追い越される形でレベルが上がっていくのではないかと感じます。

また、世界のサッカーは、マンマーク気味になっていくように感じます。ですから、それを破るための「X」以外の選手の動きが大事になっていきますよね。「より早く、より強く、より正確に」といった中に入っていく変化じゃなくて、新たな変化が求められてきます。イノベーションを起こさないともたなくなってくるように感じます。
《大日方航》

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