【小さな山旅】六角堂を、通りゃんせ…栄蔵室~花園山(4) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【小さな山旅】六角堂を、通りゃんせ…栄蔵室~花園山(4)

オピニオン コラム
小五浦から眺めた六角堂。素晴らしい景色に、感動!
  • 小五浦から眺めた六角堂。素晴らしい景色に、感動!
  • 六角堂を上から。その名の通り、六角系の形をしている。
  • 五浦海岸の景色。断崖絶壁には、地層が見える。
  • 六角堂付近は、観光地の風情が漂う。
  • 山に登ったら、温泉。温泉に入ったら、何故だか蕎麦が食いたくなる。中郷温泉「通りゃんせ」にて食事。
  • 中郷温泉 通りゃんせ 北茨城市中郷町日棚1748休業日/毎月第1・第3水曜日(祝日の際は翌日)、12/31・1/1・1/2泉質/ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉(旧泉質名:芒硝泉)
  • 通りゃんせの露天風呂。北茨城市の自然を肌で感じながら、ゆったりと湯に浸かろう。
  • 平日は利用料金600円(大人)。地元の人たちにも愛されている温泉である。
時は明治。近代を代表する思想家・岡倉天心(1862~1913)は、北茨城市の五浦海岸の景観に魅了され、この地に住居を構えた。

それから2年後、自らの設計で六角堂を建築し、ここで読者と思索にふけるようになる。六角堂は、和(禅・茶室)、中(道教・杜甫草堂)、印(仏教・仏道)が三位一体(これはキリスト教。六角堂とは関係ない)となって表現されており、アジアの伝統文化の集大成といえる建築物だ。

先の東日本大震災により、この六角堂は綺麗さっぱり海へ流されてしまうが、震災の1年後に早くも再建が成された。多くの寄付金が集まり、創建当初の姿を早々に取り戻すことができたのである。

それだけ多くの支持者がいる六角堂だが、同じ茨城県に住む筆者は訪れたことがなかった。それは友人Nも同じであったようで、Nは山に登る前から「山に登るよりも六角堂に行きたい」と抜かしていた。しかし、「観光名所よりも登山」の筆者である。「時間があったらな」と期待を持たせつつ、六角堂には立ち寄らないつもりでいた。

だが、茨城県最高峰(県境をまたがない山で)の異名を持つ栄蔵室(えいぞうむろ)ハイクは、思いのほか早い時間で下山できてしまった。期待していた富士見も叶わず、頂上の展望も皆無に等しいという状況の中で、Nのやる気を保たせる言葉は「あとちょっと、すぐそこ」では物足りず、「下山したら六角堂に行くから」という言葉を投げかける他なかった。

という訳で、栄蔵室から下山した後、クルマを五浦六角堂に向け走らせた。念願の六角堂を見て、Nはさぞかし満足するかと思いきや、六角堂をよそに海岸の景色ばかり見ては「これはいい」と感嘆の声をあげる。かの岡倉天心が惚れ込んだ海岸だから、無理もない。

ゴツゴツとした岩場。透き通った綺麗な海水。小五浦まで歩けば、それらとともに岸壁に建てられた六角堂の姿が見える。

「この景色は、まさに!」

小五浦からの景色を見て、思わずシャッターを切りまくる。ガイドブックやら観光本でよく見るような景色が、そこに広がっていた。

五浦の景色は、歴史的文化建造物を引き立たせ、見事な風景を見せてくれた。これには、Nだけでなく筆者も大満足である。さらには五浦の街並みも風情たっぷりで趣がある。温泉もわんさかと軒を連ね、どこに入ろうか迷うほど。

山に登ったら温泉だ。そう断言してはばからない筆者は、今回のお山のあとも温泉に行くことを決めていた。

今回登った栄蔵室と花園山がある北茨城市は、温泉も多い。行けばそこら辺に温泉が転がっているだろうと踏んで行ってみたら、案の定転がっていた。けれども、どこがいいのかはさっぱりである。その時、選ぶ指針になったのが、前回紹介した素敵なご夫婦の言葉であった。

「『通りゃんせ』という温泉が水戸に帰る途中にありますよ」

旅先で出会った人の言葉に従う。それもまた、旅の一興。
《久米成佳》

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