だが試合から10日の間に様々な動きがあった。パッキャオが練習中に右肩を負傷していたことが発覚、手術をして復帰まで約1年を要する重傷と明かされた。
この発表を受け、右肩の負傷を隠して試合した行為は、詐欺的取り引きにあたるとして集団訴訟の動きも見られる。原告は高いチケットやペイ・パー・ビューを購入したファンたちだ。訴訟規模は数億円になる。
■「メイウェザーは何もやっていない」判定に不満のパッキャオ
進退も含め去就が注目されるパッキャオは、右肩の手術を終え帰国。記者団にメイウェザー戦の感想や、次の試合について語った。
「3、4ラウンドあたりから良い状態でなかったとしても、試合を見返せば負けてないと分かるはずだ。それでもジャッジの決定を尊重している」
試合直後、リング上で行われたインタビューでもパッキャオは、「自分は負けたと思っていない。メイウェザーは何もやってないじゃないか」と、相手のディフェンシブな戦いを批判していた。
敗戦の弁が欲しかったインタビュアーは、「だけどメイウェザーのパンチが当たったから、こういう結果になったんですよね」と、パッキャオの発言を切り返した。
それに対しても彼は、「メイウェザーのパワーは大したことなかった。ミゲール・コットやアントニオ・マルガリートのほうが力強かった」と、過去に対戦したライバルの名前を挙げ、メイウェザーがベストなボクサーだとは思わないと繰り返す。
その表情からはジャッジ3人ともが明確にメイウェザーの勝利を支持した判定に、強い不満を持っていることがうかがえた。
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■ポイントの作り方で上回ったメイウェザー
現在のボクシングは昔と違い、ラウンドごとの採点で10対10をつけられない、どちらかに必ず優劣を示さなければならないルールになっている。そのためきわどい試合になると有効打を取るか、アグレッシブさを評価するかジャッジの好みが色濃く反映される。
今回の試合は決定的なパンチをもらわず、的確に有効打を当てたメイウェザーと、前へ前へ出て相手をロープに詰めたパッキャオの勝負になった。
傍目にはパッキャオが押しているように見えるが、試合の行われたラスベガスは、見た目の攻勢より有効打の数を重視する土地柄。そのことをメイウェザーは長いキャリアで熟知していた。
加えて言うならメイウェザーが巧みだったのは、パッキャオの爆発力に対し安易に後退してアウトボクシングするのではなく、正面で受けるような構え見せながら退くときは退いたこと。
いささかパッキャオも虚を突かれた格好になった。はっきり足を使ってくれたほうが、追い込みやすかったろう。
【“世紀の一戦”が終わり、両雄の進退に注目が集まる 続く】