■プロ契約
わがままが許されるならば、プロの第一歩を踏み出すのはFC東京とすることも決めていた。迎えた2013年12月。2度目のターニングポイントが訪れる。
武藤は大学3年をもって体育会ソッカー部を円満退部。経済学部に籍を残したまま、FC東京とプロ契約する道を再び自らの意思で決めた。
慶應義塾大学進学後も武藤とコンタクトを取り続けてきた、FC東京の立石敬之強化部長(現ジェネラルマネージャー)が当時のやり取りを明かす。
「武藤から『プロでやりたい』という申し出があったんです。僕自身はすでに大学レベルを超越している選手という評価を与えていたので、大学側と本人がよければウチで受け入れたいと伝えました」
ハビエル・アギーレ前監督に率いられた日本代表に抜擢され、昨年9月のベネズエラ代表戦で新体制下における初ゴールを決めた直後から、「現役慶應ボーイのイケメンJリーガー」として眩いスポットライトを浴びた。
実はプロの世界に飛び込むと決意した時点で、卒業に必要な単位はすべて取得していた。大学生との「二足のわらじ」が強調されることには武藤本人も苦笑いしていたが、自分自身の現在地を見極め、周到な準備を整えて臨む「自立力」には立石氏も高い評価を与えていた。
「すべてを彼自身の判断で決めてきたので、その意味では22歳にして自立している選手と言っていいですよね。考え方が非常にしっかりしている。以前からパワーとスピードは十分にありましたが、大学での3年間で間違いなく体が大きくなりました。自分の意見をしっかりと言えるあたりを見ても、精神的にも大人になったと思います」
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《藤江直人》
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