服部勇馬が目指すもの…箱根駅伝“花の2区”からマラソンへ | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

服部勇馬が目指すもの…箱根駅伝“花の2区”からマラソンへ

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服部勇馬が目指すもの…箱根駅伝“花の2区”からマラソンへ
  • 服部勇馬が目指すもの…箱根駅伝“花の2区”からマラソンへ
  • トヨタ自動車陸上長距離部の服部勇馬(2017年6月24日)
  • トヨタ自動車陸上長距離部の服部勇馬(2017年6月24日)
  • トヨタ自動車陸上長距離部の服部勇馬(2017年6月24日)
  • トヨタ自動車陸上長距離部の服部勇馬(2017年6月24日)
「次は福岡国際マラソンに出場する予定になっています。そこでまず東京オリンピックの(日本代表)選考の舞台の切符を勝ち取ることが一番の目標です」

学生時代は東洋大学陸上競技部に所属し、駅伝メンバーとして名を馳せた。4年連続で出場した箱根駅伝は2年次からエース区間の“花の2区”を任され、3年次から二年連続区間賞を獲得するなど存在感を示す。卒業後はトヨタ自動車に入社し、陸上長距離部で練習に明け暮れる日々だ。

服部勇馬、23歳。2年目を迎えた実業団ランナーは、2020年東京五輪で男子マラソン日本代表の座を狙う。

トヨタ自動車陸上長距離部の服部勇馬選手

マラソン初挑戦は東洋大4年で参加した2016年の東京マラソンだ。12位(2時間11分46秒)で日本人選手としては4番目にゴールしたが、学年下にあたる青山学院大の2選手に先行されたこともあり、歯がゆいデビュー戦となった(10位は当時2年で現4年の下田裕太、11位は当時3年で現GMO所属の一色恭志)。

「初マラソン後、3カ月以上も長期で故障してしまいました。とにかくマラソンが終わってからの過ごし方が重要だと思います」と苦い思い出を振り返る。

2度目のマラソン挑戦となった今年の東京マラソンは13位(2時間09分46秒)と順位は落ちたが、タイムは2分縮めた。日本人選手の中では昨年と同じ4位だった。経験を踏まえ、ケガをせずにトラックシーズンを迎えられるよう努めたことで故障こそしなかったが、春先の調子は上がらなかった。

6月23日に大阪市のヤンマースタジアム長居で行われた第101回日本陸上競技選手権大会。男子1万m決勝を服部は10位(28分54秒91)で終えた。8月に英国ロンドンで開催される世界選手権の代表選考会も兼ねた大会でも、「トラックで世界選手権を狙う感じではなかった」。

走りに余裕を持てたレースだったが、後半の切り替えに失敗して入賞を逃す。故障せずにトラックシーズンに入ったことで初期の目標はクリアできたが、課題は残る。

「最後のツメの甘さや、ラストの切り替えの部分は今後見直さないといけない。マラソンだったら37、8キロ以降の走りになってくると思います。その辺が改善されないままなので、次のマラソンを迎えるにあたって改善していくべき点になります」

日本選手権男子1万mを走る服部勇馬選手(右)。箱根駅伝を走った先輩ランナー大迫傑選手(ナイキ・オレゴン・プロジェクト)が並ぶ《服部選手のインスタグラムより》

現在の服部はマラソンで結果を出すことを前提にトラック競技を走る。マラソンでのスピード強化、1km3分ペースが維持できるように、トラック競技は「2分59秒のペースができるだけ余裕を持って進められるようにやっているイメージですね」。

自身の走りについて「トップスピードは高校時代とあまり変わっていない気がする」と笑うが、ランニング効率は進化している。

「高校生のときは(1kmを)3分で走るのが10kmぐらいで限界でしたが、3分の余裕度がどんどん広がり20kmが30km、35kmにまでなってきています。その辺の3分~2分55秒ペースの余裕度は着実に上がってきています」

レース時の駆け引きは「いい走りができているときは体が勝手にこうしろと動き出します」と天性のものを感じさせ、調子が良いと周囲の動きにも惑わされない。

「変に落ち着いているというか、(ライバルがスパートをかけたとしても頭の片隅で)誰かが『それは行かなくていいよ』と言ってるような感じでレースが進みます。そういうときは確実に走れます」


日本選手権はラスト4周で動きを見せたレースで慌ててしまい、その結果入賞に届かなかった。まだまだ完成していない部分もあるが、改善することでより高みを目指す。

日本陸上競技連盟は4月に東京五輪のマラソン日本代表選考方針を発表。選考競技会として「マラソン グランド チャンピオンレース(MGCレース)」を新設し、2019年9月以降に実施する。男子は福岡国際マラソンなど5レースが「MGCシリーズ」として設定され、その成績によりMGCレースへの参加資格を得ることができる。

服部の年内の目標はMGCシリーズ初戦となる12月の福岡国際マラソンだ。世界の舞台で戦う前に、国内の熾烈な争いで生き残らねばならない。

「マラソンで結果を出したい。だからトラックを走る」

箱根路を沸かせた若者は、2020年はマラソンで世界に挑む。そのために今日もトラックを蹴る。


●服部勇馬(はっとり ゆうま)
1993年11月13日生まれ、新潟県出身。トヨタ自動車陸上長距離部所属。東洋大学メンバーとして箱根駅伝に4年連続で出場し、2年次からエースがそろう2区を任される。3年・4年次で二年連続区間賞を獲得。2014年の熊日30キロロードレースで優勝し、日本学生記録を塗り替える(1時間28分52秒)。マラソンの自己ベストは2017年東京マラソンで記録した2時間09分46秒。1つ下の弟・弾馬(はずま)も実業団チームのトーエネックで走っている。

取材協力:ナイキジャパン
《五味渕秀行》

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