【THE REAL】日本代表・本田圭佑が打つ大バクチ…無所属になる直前で放つビッグマウスの意図 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】日本代表・本田圭佑が打つ大バクチ…無所属になる直前で放つビッグマウスの意図

オピニオン コラム
【THE REAL】日本代表・本田圭佑が打つ大バクチ…無所属になる直前で放つビッグマウスの意図
  • 【THE REAL】日本代表・本田圭佑が打つ大バクチ…無所属になる直前で放つビッグマウスの意図
  • 本田圭佑 参考画像
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■世界中を飛び回っている多忙のオフ

ひとつの節目となる日が近づいてきても、まったく意に介していないようだ。日本代表FW本田圭佑は今月30日で、2014年1月に加入して以来、「10番」を背負ってきたACミランとの契約が満了となる。

すでに退団を表明している本田は、新たな所属チームが決まらなかった場合、7月1日からは「無所属」あるいは「前ACミラン」という肩書になる。

「あまり絞っていないですね。幅は広めにしようと、自分の頭のなかでは一応柔軟にしているので。どんな話でも聞いてみよう、という心構えではいます」

ハリルジャパンに招集されて帰国した6月上旬の段階で、本田は通算5チーム目となる新天地を幅広い選択肢のなかから選びたいと語っていた。そこには悲壮感のかけらもなく、むしろ余裕を漂わせていた。

果たして、中立地であるイランの首都テヘランで行われた13日のイラク代表とのワールドカップ・アジア最終予選を戦い終えた本田は、経由地のUAE(アラブ首長国連邦)のドバイでチームから離脱している。

中国・上海でサッカークリニックを開催したかと思えば、星稜高校時代の3年間をすごした石川県金沢市へ飛んで金沢大学で講演。その後は大阪、東京に滞在した4日間で14回のミーティングに臨んだ。

いずれもオフの間に行うビジネス活動に関するもので、本田はこうした行動スケジュールをすべて自身のオフィシャルWEBサイトで公開している。サッカー選手では異例と言っていい。

東京から再びUAEへ向かい、ほぼ2日間をミーティングに充てた後はウガンダへ。2日間の滞在中に国連財団のイベント主席や懇親会、サッカークリニック、難民キャンプ訪問と精力的に活動している。

そして、スケジュール表によれば25日未明にウガンダを飛び立ち、イスタンブール経由でアメリカ・サンフランシスコへ。多忙を極める国際ビジネスマンのようだ。

■移籍先を選ぶ際に最も重要視するものとは

移籍に関しては、すべてを代理人に任せているのだろう。実質的な構想外に置かれていた2016‐17シーズンのミランでは、最後の2試合を除き、ほとんどピッチに立つことなく終わった。

ACミランでは苦渋のシーズンを過ごした
(c) Getty Images

どんなに志を高く抱いていても、日々の練習だけでは試合に必要な体力と勘が失われていく。代表招集期間中には、こんな問いも投げかけられた。試合出場を優先して移籍先を選ぶのか、と。

「試合に出ることを優先して移籍した、ということが過去にないので。成長できる、面白くて刺激的に思えるクラブへ常に挑戦心をもって移籍しているので。その次に試合に出られるかどうか、ということは考えるんでしょうけど。試合に出られることが、トッププライオリティーにはならないですね」

柔らかな口調で、ときには笑みもたたえながら、本田は移籍に対する独特の持論を展開した。ここでもうひとつ、素朴な疑問が浮かんでくる。刺激とは何なのか、と。

「自分は同じルーティーンがあまり好きじゃないので。環境もそうですけど、常に未開の地みたいなところがすごく好きですし、あとは自分の知らないエリアに行くことも好きなので。いろいろな自分の考え方から来る、あらゆる好奇心がひと言でいえば刺激に近いものですかね」

名古屋グランパスから移籍したオランダのVVVフェンローでは、キャプテンとして2部に降格したチームを牽引。UEFAチャンピオンズリーグに出られる環境を求めて、ロシアのCSKAモスクワに移った。

そして、子どものころから憧れてきたミランへ「格」をも求めて移籍した。刺激の系譜を見れば、これまでにも新天地として報じられたアメリカや中国も対象となるのか。本田は否定しなかった。

「基本的にオープンマインドですよ。とりあえず聞いてみるし、とりあえず話してみるつもりです。すべてを閉じているわけではないので」

■Jリーグへの復帰を完全否定した理由

もっとも、刺激という観点に照らし合わせれば、日本への復帰はないことになる。積極的な補強を行うヴィッセル神戸やサガン鳥栖が、今夏の獲得に乗り出すのでは、と幾度となく報じられた。

今度は「どうか悪くとらえないでくださいね」と苦笑しながら、これまでJリーグへの復帰という選択肢は考えたこともないし、これからもないと本田は明言している。

「日本には頑張っている選手が大勢いる。みんなで頑張れる日本ではちょっと窮屈というか、海外の2メートル近い大男と喧嘩したい日本人というのもいるわけです。そういうところに刺激を求めていく日本人も何人かはいなきゃいけないという点で、我々の役割分担というのも職種にかかわらずあるのかなと」

活躍の場を海外に求めて、今年で10年目になる。「別に喧嘩が好きというわけではないですよ」と断りを入れながら、本田は3つの国で生き抜いてきた、意外にも聞こえる原動力を明かしている。

「海外で生活していると、サッカー以外でも『許せない』と思えるシーンが何度もある。そのたびに『日本人をなめるな』というのを伝えてきた。人生において一番価値のある戦いやと思っているし、とにかく僕は常識が大嫌いなので。『普通は』と言われると、『普通って何や』と一日中考えてしまうので。

ロシアでは普通と言われることが本当に半端じゃないので。イタリアはいい部分がたくさんあったけど、新しいものを取り入れることが苦手でしたね。歴史があって、成功者をいつまでも大事にしますけど、よくも悪くも『よそ者をあまり受け入れたくない』という文化がありましたね」

CSKAモスクワ在籍時代
(c) Getty Images

何度も移籍を直訴しながら、ロシアでは結局4年間もプレーした。イタリアを代表する名門ミランの「10番」を背負ったことで逆風にもさらされた。反骨心を糧にしてきた本田の生き様が伝わってくる。

■ビッグマウスをあえて連発する意図とは

本田は数々のビッグマウスを残しながら、サッカー人生を駆け抜けてきた。日本代表で実績を残していなかった時期に、直接FKのキッカーをめぐり、当時の大黒柱・中村俊輔に挑戦状を叩きつけたこともある。

「僕は日本代表でも(馴染むまでに)時間がかかった。でも、そういうのを蹴散らしていって、結果を残さないことには、この世界では生き残っていけない。大バクチを打っているつもりです」

こう振り返ったこともある本田は、2010年のワールドカップ・南アフリカ大会の直前に不調の俊輔に代わって大黒柱を拝命。日本代表をベスト16に導いた活躍で、いま現在に至る伝説の幕を自ら開けた。

日本代表をベスト16に導く活躍
(c) Getty Images

ビッグマウスはときに周囲を不快にさせ、いらぬ反感も買う。それでも連発する意図を、日本代表で本田とともに戦ったFW大久保嘉人(FC東京)はこう説明してくれたことがある。

「(本田)圭佑があえて悪役を引き受けているんですよ。言った分だけ、自分にプレッシャーがかかりますからね。オレもビッグマウス系だから、すごくよくわかりますよ」

自らがプレッシャーにさらされる逃げ場のない状況をあえて招き、嵐の真っただ中に身を置くことで、何くそという反骨心を芽生えさせる。振り返ってみれば今回の移籍をめぐる発言も、ビッグマウスの条件を満たしている。

「ビッグネームがまず動くところでいけば、まだですよね。僕はビッグネームの次くらいの選手だと思っているので。トップの選手たちが動いた後、おそらく何かしらか次の選手たちが玉突きのように動いていくのかなと」

こうした言葉も、ビジネスマン顔負けのスケジュールを公開しているのも然り。『何様のつもりだ』と批判されても、『本業をしっかりやれ』と呆れられても、すべてをエネルギーに変える。大バクチを打てるぶれない生き様が、この男の最大の武器なのかもしれない。
《藤江直人》

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