これまで、最もハードルの高いバス利用、気軽にできるカーサイクリングを紹介したが、広い甲板やコンテナ置き場を備えた船はスペースに余裕があって自転車が持ち込みやすい。
さらには伊豆大島航路など格安乗船券も発売されているので、最も経済的にサイクリングが楽しめる。
収容力のある船はもともと自転車をそのままの状態でも持ち込めることが多いだけに、サイクリストにとっては頼もしい交通手段だ。さらに、コンパクトになる輪行状態で持ち込めば手荷物料金が割り引きされたり、無料になったりする。
伊豆大島と東京・竹芝を往復する東海汽船の大型客船の場合、片道1500円の追加料金で自転車をそのままコンテナ内に収納できるのだが、輪行袋に入れれば持ち込み料はタダになる。
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伊豆大島への大型客船は、東京・竹芝桟橋より夜行で旅立つ
海底火山の噴火によって形成された伊豆大島は周囲52kmのラグビーボールのような島。標高758mの三原山が中央にあり、グルッと回れる大島一周道路がある。ロードバイクなら三原山への上りや一周道路が走りごたえあり。MTBなら裏砂漠と呼ばれる三原山の東麓が楽しい。愛車は比較的運搬が容易な大型客船を使って持ち込める。
竹芝発の大型客船は夜行だ。例えば金曜日の仕事帰りに乗り込めば、土曜日の早朝に到着するので、午後2時半の帰路までサイクリングが楽しめる。島を一周するか、三原山までのヒルクライムができる。山頂近くまで上れば下界には元町の集落と港が見え、海には最小さまざまな船。そして伊豆半島と富士山までくっきりと見える。南を向けば伊豆七島のいくつかも確認できる。
時間に余裕があれば温泉で汗を流して帰路のフェリーに乗り込む。船旅と交通量の少ない離島サイクリングが同時に楽しめる伊豆大島の魅力にとりつかれ、再訪する人が多いという。
大型客船を運航する東海汽船は、往復税込み4000円という「伊豆大島サイクルきっぷ」を4月21日から7月14日まで期間限定で売り出す。客船2等リクライニングシートを利用するため料金を半額以下に設定したものだ。ただしゴールデンウイークなど設定外の期間もある。
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伊豆大島到着時。風向きによって岡田港か元町港かどちらかに着岸
大島観光協会の白井岩仁会長によれば、島内には10カ所に空気入れなどの備品が用意され、スタンドのないスポーツバイクを駐輪できるバイクラックがいたるところにある。「船内にそのまま自転車が持ち込めるように東海汽船に要望を提出中」とも。大島サイクリングがますます気軽になっていきそうだ。
茨城県土浦市は「サイクルーズ」という新事業を推進する。霞ヶ浦の西端にある土浦港のラクスマリーナを発着地として、遊覧船で霞ヶ浦を横断する。甲板にはスタンドのないスポーツバイクを駐輪するためのバイクラックが仮設され、参加者はデッキや船内のイス席でクルーズ気分を楽しむ。
午前9時に土浦港を出発し、国内第2位の面積を持つ霞ヶ浦を縦断。潮来港には10時すぎに到着。乗船下船は自由で、折り返し地点となる佐原で散策し、帰路も船を使う利用者もいるという。土浦港へはクルマなら都心部から70km、所要時間1時間ほど。電車利用ならJR常磐線・土浦駅から徒歩10分。アクセスのいい土浦を発着地として広大な霞ヶ浦を楽しめるのだからストレスはない。
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霞ヶ浦を走るサイクルーズ
潮来から土浦までは湖岸の道路を走って最短50km弱だが、霞ヶ浦はアルファベットのYの形をしていて、ちょうど3つの線が交わったところに霞ヶ浦大橋があるのでさまざまなルートが取れる。体力やその日の風向きに応じてコース設定できるのが魅力。
今回は紹介しきれなかったが、最も一般的に利用されている輪行袋を使った電車旅行、バイクケースなどを駆使した空路、さらには専用段ボール箱を入手して宅配してしまうスタイルなど、サイクリングは目的や環境、お財布事情に応じたさまざまなスタイルがある。自分なりのサイクリングライフを発券して楽しんじゃうのがいい。