世の潮流に逆らう純国産チタンバイク vol.1 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

世の潮流に逆らう純国産チタンバイク vol.1

オピニオン インプレ
世の潮流に逆らう純国産チタンバイク vol.1
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安井行生のロードバイク徹底インプレッション
安井行生プロフィール

世の潮流に逆らう純国産チタンバイク
チタニウムがレーシングロードフレームの主な素材たりえないこの現代において、例外的な存在として鈍く輝くパナソニックの最新作、FRTP3。この自転車界においてもユーザーの多彩なニーズを効率よく満たすことにプライオリティが置かれた商品ばかりが跋扈する中で、パナソニックがチタンという素材にこだわり続ける理由とは?“パナチタン”と約10年ぶりの再会を果たしたという安井(実はチタンフレーム大好き)が考える。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
今やすっかりロード界におけるマイノリティとなってしまったチタンフレームだが、唯一 “パナチタン” は、数年前まではレース会場に行くと必ず見かけたものだ。しかし近頃、いよいよめっきり少なくなってしまったようである。残念だし、寂しい。パナソニックのチタンフレームには、少しばかり思い入れがあるからだ。
人生で初めて手に入れたロードフレームが、パナソニック2001シーズンにおける最上級チタンフレーム、FCT06だった (緑がかったWH-7700と鮮やかなエメラルド・グリーンのミシュランを履いたFCT06のカタログ写真の何と格好良かったことか!)。ダウンチューブに 『チタンコブラシェイプ』 という名の大口径チューブを採用したモデルで、当時最先端のインテグラルヘッドを装備しており (しかしコラム径はノーマルサイズという不思議なヘッドシステムだった)、そして今よりずっと安価だった (だから学生だった僕でもバイト代を溜めて買えたのだ)。
パナソニックがチタンフレームを手がけたのは80年代後半。今より20年以上前から軽量素材としてチタンに着目しチタンモデルを展開していたが、残念ながら初期の製品は外注だった。一旦チタンモデルは途絶えつつも水面下では研究開発が進められており、1994年に待望のチタンフレームの社内生産を開始。ロード、MTBはもちろん、ミニベロや、2年前からは電動アシストモデルまでラインナップに加え、幅広くチタンモデルを展開している。
頑固にチタンフレームを作り続けるパナソニックのロードラインにおける現在の最高峰モデルが、このFRTP3である。昨年モデルであるFRTP2からの変更はないが、年式識別上の理由で品番が更新されている。
さて、貴重な国内メーカーである。このフレームを設計したその当人に話を聞かない手は無い。疑問はたくさんある。メインストリームから外れることを承知で、あえてチタンという素材を使い続ける理由は。3DオプティマムXバテッドの効果は。なぜ剛性タイプを2種類用意したのか。パナソニックサイクルテックの商品開発部、スポーツバイクの設計担当者である金森修一さんにお話しを伺いながら進めていくこととする。
全容
スペック
キャプション
<プロ=高剛性>という等式は必ずしも成立しない
「企業秘密です!」
Q:まず、パナソニックがチタンという素材にこだわる理由を。
A:しなやかで乗りやすく、チタン独特のバネ感 (しなって戻るリズム) がペダリングにフィットし、滑らかに加速していけるという魅力があるからです。軽量性という面ではカーボンにリードを許しますが、ミリ単位でのフルオーダーが可能であるという点も、フレームを製作し供給していく面でのメリットです。また、手入れをすれば輝きが持続し、長く付き合える素材であることも魅力です。
Q:FRTP3の設計において最も重視したこと、目指したものは?
A:レース専用設計。FRT04よりもワンサイズ太いシートチューブとスローピング設計により剛性を高め、レスポンスの良いフレームに仕上げています。フォークには、ダンシング時の撓みを押さえ推進力に変える専用設計の高剛性モデルを採用しました。また、ツール・ド・沖縄のような200kmを越えるレースを想定し、シートステーには横オーバルに加工した0.8mmの薄肉チューブを採用、振動吸収性を良くしています。
※ただ、パナソニックの言う 「レース専用設計」 には、単純な剛性や加速性能とは異なる独自の含意がある。それについては後述。
Q:素材の詳細を教えて下さい。できればメーカーなども。
A:3AL-2.5Vチタン合金をメインに使用しております。メーカーをお教えすることは出来ませんが、日本の某鋼管メーカーにパナソニック専用のチタン合金パイプを製作していただいています。もちろん国産パイプです。海外でも合金パイプは多く流通していますが、流通上の問題、品質保証の問題から、信用のできる国内で調達しています。海外製のものは肉厚が不均一だったりと、品質面での保証が難しいため、使用しておりません。
Q:生産はどこで?
A:大阪府柏原市のサイクルテック本社POS工房で行っています。
FRTP3の大きな特徴は3つ。まずはトップチューブ、ダウンチューブ、シートチューブの表面に施され、フレームに複雑な模様を描くアウトバテッド。この加工は、3Dオプティマム・Xバテッドと呼ばれる。ライトスピード、リンスキー、ヴァン・ニコラスら 「チタンでレースを諦めていない勢」 がパイプ形状を大きく加工してチタンという単一素材で最大限の動的性能を得ようとしているのに対し (その結果、各社のトップモデル、アルコンT1、R430、アストリュースの3車は非常に似通った形状設計となっている。チタンという素材と動力性能を両立させるため、設計者達が紆余曲折を経て辿り着いたひとつの解答といえるだろう)、パナソニックはチューブの外形を加工することに加え、肉厚を複雑に可変させることで軽さと強靭さの両立を狙っている。「左右のペダリングを繰り返す際にダウンチューブやシートチューブにかかる応力を更に詳細に解析。応力の集中する部分をX型のアウトバテッドで保持することで、チタンのしなやかな性能を活かしながら、剛性の向上とフレームの軽量化を実現しました」 とはメーカーによる説明。ちなみに、このアウトバテッドの加工方法を聞き出そうとしたところ、「それは企業秘密です!」 とのこと。残念。
「全サイズを一種類のパイプセットで賄うのは不自然」
特徴その2は、剛性重視タイプのバージョンH、軽量タイプのバージョンLという、2タイプからなるラインナップである。ルックにおけるノーマルとウルトラ (今季からはノーマルとSR) のように、同じモデルに異なる剛性タイプを存在させるという手法は、形状はそのままに使用素材を変更することで剛性を可変させることができるカーボンフレームでは今や少なくない。だが、現在の金属フレームでは非常に珍しい。パイプの径から加工まで、全く違う設計を施す必要があるためだ。
Q:なぜ剛性チョイスをできるようにしたんですか?
A:以前、某選手 (07年に引退) にロードフレームをモニター供給していました。軽いフレームが好きだった彼は1000~1100gの軽量テストフレームに乗っており、エリート選手が乗るには柔らかすぎるのではないかと心配していたのですが、彼はその剛性感を非常に気に入ってくれていました。今のHタイプ (剛性重視タイプ) の原形となるプロトタイプを製作したときも、彼にモニターをお願いしました。平地での高速巡航性能を絶賛してもらえましたが、「元気なうちは走るけど、登りでは硬すぎる。疲れてケイデンスが落ちてくると踏み負けしてしまう」 とのコメントが出たんです。彼はMTBでアジア戦や世界戦への出場実績があり、決して弱い選手ではありません。強い選手から出たそのコメントには驚きました。彼の脚質や戦術は、登りで繰り返しアタックをしかけて集団を振るいにかけ、小集団のゴールスプリントに持ち込むというもの。彼とのやりとりから、<トップ選手=高剛性でなければならない>という等式は必ずしも成り立たないことを学びました。高剛性フレームがフィットする選手もいれば、撓みのあるフレームのほうがフィットする選手もいる。そこで、レーシングフレームの460mmから610mmまの幅広いサイズに対してたった1種類のパイプセットで展開することに疑問を抱き、体格や脚質によって選択できるようにHとLの剛性チョイスを設定したんです。
Q:バージョンHとバージョンLの違いを教えて下さい。
A:まず、ダウンチューブ~チェーンステーをひとつのプラットフォームとして捉えました。その部分のパイプ径を大きくし、高剛性に仕上げたものがバージョンH。径を小さくして軽さとしなやかさを重視したものがバージョンLとなります。安井さんが実走されているのはバージョンHです。
剛性重視であるバージョンHのダウンチューブは、確かに非常に太い。ヘッド側は縦楕円、BB側は菱形断面。トップチューブは横楕円 (ヘッド側) から縦楕円 (シート側) へと断面形状が変化する。資料によると、ダウンチューブの最薄部は0.5mm とのことだが、3Dオプティマム・Xバテッドが施されて薄くなっている部分は握るといとも簡単に撓む。シートチューブは上に延長されるハイシート仕様だが、サドルハイトの調整を許容するセミISPだ。
Q:トップチューブ、ダウンチューブの異形加工 (縦楕円・横楕円) の意図は?
A:パイプを薄肉にすると当然しなりが大きくなります。パイプを捻りに強い形状にし、しなり具合のバランスを整えるのが目的です。
Q:各部にガゼットを設けた理由は?
A:応力集中部の応力分散を促し、疲労強度を上げるためです。
Q:では、ハイシートにした理由は?
A:シートチューブの薄肉部 (0.9mm) を延長することで、若干のしなりをもたせて快適性を向上させるためです。
Q:3DオプティマムXバテッドの位置は、サイズによって変えてあるのでしょうか?
A:各サイズではありませんが、16サイズの展開の中で5サイズごとに変えています
A:ダウンチューブがかなり薄いようなので、少し不安になってしまいますが。
Q:大きな衝撃 (鋭利で堅いものがぶつかる等) がない限り、変形することはありません。また、チタン素材は粘りがありますので凹むことはあっても破断することはありません。同じ肉厚のチューブをMTBにも展開しており、開発段階で某MTBエリート選手に4年間使い続けてもらいましたが、特に問題は起きませんでした。そのような実績もあり、自信を持ってお客様に提供しております。
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