東日本大震災によって減少した観光客を取り戻すために、同県が各市町村と協力して自転車愛好家が気持ちよくサイクリングできる環境作りを進めている。瀬戸内海の大きな橋をめぐる「しまなみ海道」が西の横綱なら、東の正横綱を目指した取り組みだ。
茨城県は首都圏からのアクセスもよく、交通量の少ないのどかなルート、山岳の要素が強いコースなどが自由に取れるのが強みだ。
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霞ヶ浦の湖岸から筑波山を臨む
筑波山のふもとに筑波鉄道の廃線跡地を利用した全長40.1kmのサイクリングコース「つくばりんりんロード」がある。さらには一周140km、ショートコースで90kmもの湖岸道路が整備された霞ヶ浦がある。
その両者を結ぶために、土浦市の市街地に自転車道路を整備し、最北端の桜川市と最南端の潮来市を結ぶロングコースが誕生した。交通量の多い土浦市街ではこれまで渋滞する車の横をすり抜けるような走りが余儀なくされたが、これによって安全で快適な走行が実現できたのである。
しまなみ海道と異なる点があるとすれば、そこを走ってみたいという人為的な動機付けだ。大自然の景観は筑波山や霞ヶ浦も素晴らしいが、「おいしいものを楽しむスポットがない」と現地を訪れたサイクリストが証言していた。もちろんガイドブックには地元特産物が数多く掲載されているが、それがサイクリストにささるとは限らない。しまなみ海道の「はっさく大福」とか「塩アイス」のようなものが求められるのだ。
自転車サポートステーションと呼ばれる施設がこのエリアには随所にあって、コンビニや飲食店、道の駅、ガソリンスタンドなどが協力し、そこにはスポーツバイク用ラックが置かれ、トイレ・空気入れ・簡易工具が自由に使える。ただし今回訪問したステーションでは店頭のバイクラックだけが確認できたが、空気入れや工具があることを伝えるものはなかった。
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霞ヶ浦周辺には店頭にバイクラックが置かれるサイクルステーションが点在
コースはまったくの平たん路で単調。それだけに罰ゲームか修行のような走りを余儀なくされるので、ところどころに甘味やスイーツがあるとモチベーションアップになる。日帰り可能な自転車パラダイスだけに新鮮な魚を肴に飲もうというところでもないので、関東エリアのサイクリストが興味を引かれるような提案が待ち遠しい。