【THE REAL】ハリルジャパンの壁・吉田麻也が貫く背水の陣…イラク代表戦の劇的勝利を導いた影のヒーロー 3ページ目 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【THE REAL】ハリルジャパンの壁・吉田麻也が貫く背水の陣…イラク代表戦の劇的勝利を導いた影のヒーロー

オピニオン コラム
ハリルジャパンの壁・吉田麻也が貫く背水の陣…イラク代表戦の劇的勝利を導いた影のヒーロー
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「僕はみんなよりも試合に出られない時期が長かった。何もいま急に始まったわけでもないし、昨シーズンからそうなんですけど、そのなかでも代表に呼ばれているということは、結果を出さなかったらもう次はない、という状況に常に立たされていると思っているので」

UAE代表戦で同点とされたシーン。大島の不用意なパスミスから相手の得意とするカウンターを招き、ドリブルで侵入してくる相手に吉田が止めたプレーがファウルと判定された。

吉田にはイエローカードが提示され、UAE代表に与えた直接フリーキックを沈められてから試合の流れが変わった。それでも、10月シリーズで何ごともなかったかのように吉田は招集された。



ハリルホジッチ監督の期待を感じずにはいられなかった。前回のアジア最終予選を戦い抜いている経験者ということも含めて、「文句を言われない結果を出すことだけに集中したい」と努めて前を向いた。

後半15分にセットプレーから同点とされても、決して慌てなかった。舞台を敵地メルボルンに移して11日に行われるオーストラリア代表との第4戦をも見すえながら、ハードかつクリーンなプレーを徹底した。

もう1枚イエローカードをもらえば、オーストラリア代表戦は出場停止となる。吉田だけではない。センターバックコンビを組む森重真人(FC東京)、右サイドバックの酒井宏樹(オリンピック・マルセイユ)、そして守護神・西川周作(浦和レッズ)もすでにイエローカードをもらっている。

実際にイラク代表戦の後半21分には、酒井がラフプレーでイエローカードをもらい、出場停止となる次戦はチームに帯同しないことが決まった。守備陣に出場停止者が相次ぐ負の連鎖を防ぐためにも、リスクを最低限にとどめたうえで勝たなければいけない。

それでも勝ち越しゴールを奪えない膠着状態を受けて、後半40分すぎから吉田が最前線に上がった。代わりに最終ラインに下がったキャプテンのMF長谷部誠(アイントラハト・フランクフルト)を中心に、祈りを込めるように何本もロングボールを放り込んでくる。

もちろんターゲットは吉田。何度も相手DFと競り合い、そのたびにピッチにはいつくばらされながらチャンスを作り続けた。途中出場の浅野が2度チャンスを逃しても、あきらめずに肉弾戦を挑み続けた。

イラク代表戦へ向けて、招集された25人全員がそろったのは2日前の10月4日。極端に限られた練習時間のなかで、吉田はパワープレーを想定した練習はしていなかったと明かす。

「時間がありませんからね。でも、パワープレーなんてだいたい共通理解でわかっているから、そんなに難しいことじゃないので。まあ、パワープレーがいいかどうかは、皆さん(の目で)書いてください」

文字通りのぶっつけ本番。ハリルホジッチ監督の指示というよりは、ピッチ内の選手たちによる自発的な判断のもので吉田が最前線に上がり、劇的な決勝点につながるファウルをもぎ取ったのだろう。

アジア最終予選のグループBはいずれも3試合を終えた段階で、オーストラリア代表とサウジアラビア代表が勝ち点7で並び、UAE代表と日本代表が勝ち点1差で追走している。

ホームでアドバンテージを発揮できない戦いぶりに、「不安」の二文字はつきまとう。それでも奇跡的な展開から勝ち点3をもぎ取ったイラク代表戦は、流れを変えるターニングポイントになるかもしれない。

「もしかしたらこういう困難を乗り越えていったほうが、チームとして成長できるのかなと思う」

オーストラリア代表がアジアサッカー連盟に転籍してから、アジア最終予選では3分け1敗とひとつも勝てていない。まさにグループB最大の難敵との決戦へ。ターゲットマンとの「二刀流」で劇的勝利に貢献した吉田は小さな、それでいて確かなる手応えを感じながら、一夜明けた7日に機上の人となった。
《藤江直人》

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