ある程度レースについて聞き終えたあと、私自身が陸上選手にインタビューする機会があったらぜひ聞いてみたかったことを、恐る恐る聞いてみた。
私はサッカーをずっと続けてきた。バスケットボールやテニスなど他の球技も変わらないと思うが、サッカーは「走る」という行為が競技において過程として存在する。例えば、「ゴールを決めるために走る」といった具合に。
しかし、その「走る」という行為自体を人生を懸けて追い求めている陸上選手は、「走る」という行為をどう自分の中で位置づけているのか、ずっと気になっていたのだ。なぜ走るのか、どういったモチベーションで大迫選手は走っているのか。
「陸上の結果であるとか順位、目標であるのがサッカーと同じように、ポジションによって違うとは思うが、ゴールなどに置き換えられるのだと思う。そのためにトレーニングを積んでいるし、記録が伸びていくことが嬉しいのかな。走っていること自体が楽しいということはあまりない。練習ごとに達成感みたいなものはあるが、走っている時に楽しいなどは考えないかな」

走っている時にはどんなことを考えているのだろう。
「サッカー選手がボールを追っている時、野球選手がボールを追う時、もしくは打席に立っている時。または水泳選手が泳いでいる時。うまく言いづらいが、それぞれがやっているスポーツと同じだと思う」
少し悩んでそう話してくれた大迫選手は、「逆に、サッカーはどういった思いでしていました?」と私に逆質問をした。
私は練習などでボールを蹴ること自体も楽しんでいたので、「走っていること自体が楽しいということはあまりない」と心情を明かした大迫選手とは、少し違う部分があるのかもしれない、と正直に伝えた。
「そうなんですね…」と俯いた大迫選手は、ゆっくりと言葉を探してくれた。
「もちろん走るのが嫌いだったらやっていないと思うが、自分を追い込むことが好きになるのはなかなか難しい。やはり、いい練習ができたときの達成感とか、記録が縮まったときの喜びとかなんだと思う」
次の舞台はロンドンでの世界選手権だ。
「来年ロンドンがあるのでそこでしっかり結果を出すこと。10000mではトップ10、8を目指していく。5000mに関しては決勝進出を目指す。4年後、8年後もオリンピック狙えると思うので、そこで結果を出すためにトレーニングを積みたい」
日本陸上界のホープ、大迫選手の挑戦はまだまだ続く。