「こういった風にみんなで走ること、特に友だちと走るのは好きですね。息抜きにもなりますし、同じくらいの実力の仲間と話しながら走ることもよくします」と大迫。
ナイキは一般ランナーに向けてもトレーニングにより複数のシューズを履き分けることを勧めているが、大迫もシューズを履き分けている。比較的長い距離を走る時は最新モデルの『ストリーク6』を使用。このストリークシリーズは大迫のお気に入りで、2年ほど前から履き続けている。
「クッション性もあるし、中足部にシャンクが入っているので走りやすく、同時に反発力も感じられる。マラソンシューズとしてもいけるし、ロードの5000mでもいけるバランスのいいシューズ」
反発力とクッション性に着目している。今まで履いてきたシューズの中でもバランスがとれているシューズという。
「一般ランナーから専門ランナーまで、どの層のランナーでも良いと思います。高校駅伝に出場する選手にも」
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ナイキ『ストリーク6』画像提供:ナイキ ジャパン
大迫は日本選手権を振り返った。
「(リオデジャネイロ五輪代表が)決まったことは嬉しいし、喜んだ。でも、1~2日経ったら忘れますし、終わったものとして捉えています」と淡々とした語り口は崩さない。
自身も意識した通りの、見事なラストスパートに、「プラン通り、予定通りだった」と話す。
「10000メートルは(ラストの)600m~400mの期間が一番速かったと思うし、5000mは段階を追って速めていった。ラスト100mが一番速かったと思う」
スピードを上げるタイミングや、その速度についてもレース前から決めていたのだろう。大迫のプランを実行に移す感覚とは、どういったものなのか。
これは各レース中に意識していくというよりも、レース前からプランを考え、その通りにレースで実行し、うまくいかない部分を本番で修正していく感覚だという。
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大迫傑選手 画像提供:ナイキ ジャパン
次に大迫は、「戦略的な部分が昨年と比較すると成長した」と明かす。
「去年は(戦略を)何も考えていなかった。日本選手権は自分のレースプランに引き込んでいくイメージだった。どんなレース展開になっても自分のレースをするだけ。例えばラスト600mから行くと決めていたら、それまでに誰が(前に)出ようが関係なかった」
そういった意味では、日本選手権は自分に徹し切れたレースと言ってもよかった。そもそも陸上は自分との戦いでもある。しんどい思いをすることも多々あるはずだ。大迫はくじけたりすることはないのだろうか。いかにしてモチベーションを保つのか。
「周りにいい選手がいるので、モチベーションのことを考えなくても自然にというか…。モチベーションを上げるというよりも淡々とやること。悪い日にも焦らず淡々と走ること」
それがなかなか難しい。常人離れした精神力をうかがわせる。ただ、そんな大迫もレース直前の夜には悶々と悩んでしまう人間らしい一面を最後にチラリとのぞかせた。
「当日になったらいつもと同じ精神状態だけど、夜寝る前に色々と考えてしまうことがある。『ダメだったらどうなるんだろう』とか。僕も人間なんで(笑)」