■貪欲にゴールを狙う
「抜け目なく」
川崎フロンターレとのデッドヒートを制し、ファーストステージを制した6月25日のアビスパ福岡戦後の取材エリア。ダメ押しとなる2点目を決めていた土居は、息つく間もなく幕を開けるセカンドステージへ向けて、こんな抱負を残している。
「ゴールは取れるだけ取りたい。それが自分のためにもなるし、チームのためにもなる。ファーストステージ以上に抜け目なく、貪欲にゴールやアシストを狙っていきたい」
それから約1カ月後の23日。ホームのカシマスタジアムに浦和レッズを迎えたセカンドステージ第5節。両チームともに無得点で迎えた後半15分に、土居が追い求める「抜け目のないゴール」が生まれている。
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土居聖真 (c) Getty Images
日本代表に名前を連ねるFW金崎夢生(むう)が、左サイドに流れてボールをキープする。このとき、ファーサイドにいた土居は両手を大きくあげて、クロスを要求していた。
「ムウ君がクロスを入れようとして顔をあげたときに、ちょうど自分がフリーだったので飛び込もうと思っていたんですけど」
もっとも、前方をDF森脇良太とMF青木拓矢にふさがれた金崎は無理をせず、後方をフォローしてきた左サイドバックの山本脩斗にボールを預ける。
飛び込むタイミングを逸した土居は次の瞬間、自分の周囲をあらためて確認している。前方では那須大亮と槙野智章の両DFが、ニアサイドにポジションを取っていた味方のMF中村充孝をケアしている。
首を振って後方をチェックすると、MF関根貴大は自分をマークするわけでも、さらに外側にいた味方のMF遠藤康をマークするわけでもない。中途半端なポジションで、ほとんど傍観者と化している。
ゴール前にいる自分をケアする相手がいない状況は、依然として続いている。そして、レッズの守護神、日本代表GK西川周作の目の前には大きなスペースが生じている。
ゴールの匂いを嗅ぎ取った土居は山本と目を合わせながら、右斜め前方へダッシュを開始した。オフサイドにならないギリギリのタイミングで抜け出すと、スピードをさらに加速させる。
山本はあうんの呼吸で、速く、低いクロスをゴール前へ送る。キャッチしようと構えていた西川は、視界の左側から突如として飛び込んできた土居にまったく反応できなかった。
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土居聖真 (c) Getty Images
クロスがワンバウンドした刹那に、土居はスライディングしながら伸ばした右足をタッチさせて微妙にコースを変える。体勢を崩しながらも必死に伸ばした西川の左手をかすめて、ボールはゆっくりとゴール右隅に吸い込まれていった。
「シュートを打った後はボールの行方を見ていなくて、ゴールになったかどうかがわからなかったけど。サポーターの人たちがみんな大喜びしていたので、入ったんだなと思いました」
ゴールを確認した土居は、ユニフォームの左胸に縫い込まれたクラブのエンブレムを両手で手繰り寄せる。キスをしながら笑顔を弾けさせ、ゴール裏を埋めた自軍のサポーターと喜びを分かち合った。
西川を除くレッズの選手たちを、文字通り棒立ちにさせた一撃。百戦錬磨の選手たちの虚を突いた、土居の抜け目ない動きの秘密は最初のポジショニングに集約される。
「あまり中に入りすぎることなく、一番大外のほうから。(ゴール前へ)入っていくときはボールだけしか見ないようにして。(レッズ戦は)クロスがあがる形が多かったので、自分もいいタイミングで入れば合わせられると思っていた。ああいう形も練習しているので、結果として出てよかったと思います」
ファーサイドで気配を消しながら、ここというタイミングでゴール前の危険地帯へ飛び込んでいく。日本代表でも活躍したストライカー、中山雅史(現JFLアスルクラロ沼津)が十八番としていた動きだ。
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