茨城県民に「茨城県の最高峰といえば?」と質問を投げかけたとして、標高1022mの「八溝山」という答えが返ってくる確率は低い。先日、若者に尋ねてみたら「筑波山」という答えが返ってきた。
確かに、茨城県の山といえば筑波山が有名だ。美しい双耳峰はその昔、富士山と対比され「西の富士、東の筑波」と読まれていたほど。それだけでなく、登りごたえもあり、ガマ伝説、筑波山神社、日本百名山…と多くの人を惹きつける要素がある。
●茨城県・福島県・栃木県をまたぐ山
しかし、いかに筑波山が魅力的であり有名とはいえ、茨城県の最高峰は八溝山だ。
以前、「栄蔵室(えいぞうむろ)が最高峰?」という記事を書いたが、それはあくまで県境をまたがない山の話。八溝山は茨城県、栃木県、福島県と3つの県にまたがっており、山頂は茨城県と福島県の堺にある。
山頂が県境にあるとはいえ、茨城県内に山頂があることに変わりはなく、「茨城県最高峰」と呼ばずして何と呼ぼう。
●山頂は茨城県と福島県の県境
山頂が県境にあることは、八溝山にとっても好都合であろう。これが福島県であれば、八溝山の標高は福島県内で31位となってしまう(トップは燧ヶ岳の2365m)。福島県は1000m以上の山などザラなのだ。
八溝山を除くと1000m級の山がない茨城県であれば、「八溝山」の名前が煌々と輝く。「茨城県にまたがっていて良かった!」と八溝山も喜んでいるに違いない。
さて、この八溝山は山頂付近までクルマで行けてしまうという、何ともお手軽な「最高峰」だ。山の初心者を引き連れていたので、筆者もクルマで日輪寺まで登ってしまうことにした(またしても、まともに登ってない…)。
ゆっくりペースで歩いて、30分ほどで山頂へ。山頂にある展望台からは、日光や那須の山々が美しく見えた。眺望を堪能したあとは、肝心要の山頂を示す標識へ。
「茨城県の最高峰に到達した!」と興奮したのも束の間、その標識には"福島県棚倉町"との表記が。
「福島県じゃん…」
茨城県の最高峰に登れると聞いて付いてきた同行者は、落胆の色を顕にする。
「そうとも言うね」
県境という曖昧な場所では、曖昧な返事をするしかなかった。
《久米成佳》
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