千葉県の最低山をめぐって、山同士で論争が繰り広げられているようだ。
「古墳は山じゃないッスよね。僕は自然形成された山なんで、千葉県最低山の座は僕のものッスよ」
丸山さん(標高32m)がそう言えば、稲荷山さん(標高16m)はこう切り返す。
「古墳だって山は山ですよ。私の他にも群馬県の最低山・権現山だって、埼玉県の浅間山だって古墳です。全国にも似たような例はいくらでもあります。従って、千葉県最低山はやはり私、稲荷山になりますな」
●古墳か自然の山か?千葉県の最低山
成田山に末詣でに行ったついでに、千葉県の最低山に登ろうと思った。すると、ふたつの候補が出てきた。
ひとつは千葉県多古町の丸山。もうひとつは富津市にある稲荷山。
しかし、稲荷山は先にご本人が述べていた通り古墳であり、人工的に造られた山である。一方の丸山は自然地形そのままの山だ。冒頭で丸山さんが言うことも、わからない訳ではない。
「いやいや、そんな理屈は通らないッスよ。グーグルマップだってナビタイムだって、稲荷山さんは"稲荷山古墳"って古墳として表記されてるじゃないっスか」
やはり、納得いかない丸山さん。
「それは当然。古墳であって、山なのだから」
けれど稲荷山さんも譲らない。なるほど、どちらの言い分もごもっとものように思えてくる。
●千葉県は低山しかない!
千葉県の山はどれも低い。最高峰の山は、南房総市にある標高408mの愛宕山。県の平均標高は約46mで、これは全国で二番目に低い高さだ。千葉県は高低差の少なさが最も少ない県である。いわば千葉県は低山の聖地。というか、低山しかない県なのだ。
せっかく聖地に来たのなら、その最低標高の山に登っておきたい。だが、自然地形の丸山と、古墳として人為的に造形された稲荷山のどちらに登るべきか…。悩むところであるが簡単に結論は出た。
海の幸が何となく食べたい!
そう思って出発した今回の「小さな山旅」。稲荷山のある富津市も海の近くではあるが、茨城県民の筆者としては、銚子市の方がなじみが深い。成田山から銚子市に向かう途中に、丸山のある多古町がある。実質の最低山である稲荷山は、まったくの別方向だ。
「僕が千葉県最低山ッス!」
「いやいや、私こそ!」
こちらではまだ論争が続いているようだ。
「まぁまぁ、ここはひとつ、コラム執筆者に意見を聞こうじゃありませんか」
「そうッスね」
いや、別にどっちでもいいんだけど…。とりあえず、今回は銚子市に近いということで、丸山に一票!
《久米成佳》
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