「あ~、閑居したい!」
すべての義務や責任から解放され、持て余すほどの暇を取得し、ただのんびりと日々を過ごす。そんな暮らしに、憧れたことはなかろうか。
お笑いコンビ、いつもここから風に…。
閑居したい時ー!
気づいたら無闇に年齢ばかり重ねてしまっていることに気づいたときー!
閑居したい時ー!
山歩きコラムだというのに友人に「お前、最近山に登ってなくね?」と指摘された時ー!
●ストレス社会に疲れた人へ
職場の人間関係に疲れたり、仕事のプレッシャーに押し潰されそうだったり、将来について不安になったり。現代人は、ストレスに関して事欠かない日々を送っている。かくいう私も、やはり多くのストレスを抱えながら生きている。そんなストレス社会に疲れきったある日のことである。
あ~、閑居してぇなぁ…。部屋に閉じこもって、借りたはいいけどまったく観られずにいるDVDを観たり、読みたくて買ったはいいけど半分だけ読んでそのままの本を読んだり、ひたすらベッドでゴロゴロしたり、したい。
そうしたいのは山々だが、いい加減、茨城の小さな山々にもちゃんと登らにゃいかんだろうという葛藤。そんな時、登るのにふさわしい山を見つけた。その名も閑居山(かんきょざん)だ。
●弘法大師が閑居した山
閑居山は、かすみがうら市にある標高227mの小さな山だ。筑波連山の一部であり、以前登った浅間山と今回縦走した権現山に挟まれた位置にある。
旧千代田町の志筑地方にあることから、昔は志筑山(しづくさん)と呼ばれていたが、弘法大師が中腹の洞窟に閑居したという言い伝えから、閑居山と名付けられた。
●百体観音は一見の価値アリ
なるほど、さすが弘法大師さま。閑居山周辺は、閑居するのにふさわしい環境になっている。
その小さな山容からして閑居っぽく、廃墟と化した小屋、ささやかに水を落とす小さな杉沢の滝、金堀穴という奥行15mの洞窟。そして花崗岩に彫られた観音様・百体観音と、何をとっても閑居な雰囲気を漂わせていた。
ひとりで住むのにちょうどいい小屋もあることだから、いっそのこと世俗を逃れてこの地に閑居してしまおうか…。
そう思って、小屋を覗くと、当然のようにゴミやホコリで散らかっている。閑居するには大掃除が必要なようだ。掃除嫌いな筆者は、閑居山での閑居をあっさりと諦め、次なる目的地・権現山へと足を向けた。
《久米成佳》
page top