「玄関開けたら2分でごはん」というフレーズが印象的なCMが過去にあったが、今回登った茨城県で最も低い山、標高17.4mの天神山は「登山口から1分で山頂」であった。
●山頂の先にあるヤブの道を行く
あっという間に着いた山頂の先をよく見ると「踏み跡」がある。せっかく来たのに1分で登山終了ではさすがに寂しいと思い、その踏み跡をたどってみることにした。
踏み跡があるにはあるがその道幅はとても狭く、両側には草木がせり出しておりとても歩きづらい。もはや「ヤブこぎ」状態であり、覆いかぶさる草木を両手で払いながら歩く。しかも、前日に降った雨のせいで、草木が濡れており、歩くたびに飛沫を浴びる羽目になる。
ピークは踏んだのだからいつでも引き返せると思ってヤブの中に入ったはいいが、けっこうな距離を歩いてしまったので引き返すのも億劫になる。ちょっと寄り道をしてみようと軽い気持ちで歩いたのに、とても難儀な思いをした。
後悔先に立たずと悔やんでいたところ、踏み跡が途絶える。どこかに続いてやしないかと辺りを歩き回って踏み跡の続きを探すが、どうにも見つからない。かすかに踏み跡のように見えた道なき道をたどってみると、いつの間にか山を下ってしまっていた。
●ヤブの中からこんにちは
ヤブの先には道路が見えた。面倒なのでそのまま外に出てしまおう。ヤブをガサゴソとかき分け山の外にひょっこりと顔を出す。すると、地元の方と思しき男性とバッタリ出くわした。
「びっくりしたなぁ」
休日の散歩を楽しんでいたと思われるこの男性。突然、ヤブの中からクマのような大男(私のことだ)が現れたのだから、さぞかし驚いたことだろう。
「こ、こんにちは」
男性に挨拶をするも、どうにも居心地が悪い。こんな山で何をしているのか、いぶかしげな表情で見られているに違いない。男性の顔を直視することができぬまま、「すみません、ちょっと道に迷っちゃって」と言い訳をした。
そういえば『川の底からこんにちは』という映画があったなぁ、どんな映画だったっけ?(※)と映画の内容を思い出しながら、道路を歩いて帰路についた。
※:『川の底からこんにちは』は石井裕也監督による日本映画。2010年に公開された。
《久米成佳》
page top