【山口和幸の茶輪記】サイクリストの聖地・西上州は11月中旬が紅葉真っ盛り | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】サイクリストの聖地・西上州は11月中旬が紅葉真っ盛り

オピニオン コラム
【山口和幸の茶輪記】サイクリストの聖地・西上州は11月中旬が紅葉真っ盛り
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山岳サイクリストの聖地と言われる群馬県上野村は、都会の文化から隔絶され、のどかな村人の生活のみが営まれるところ。神流川沿いを走る旧道があり、四方には走りごたえのある峠がいくつもある。忘れかけていた郷愁を取り戻せるルートはいま、紅葉のピークである。

上野村は四方を高い山脈に囲まれ、唯一の脱出ルートと思わせる神流(かんな)川沿いの道もダム湖畔で険しい峠が待ちかまえるので、すり鉢の底に集落がひっそりと集まる感じだ。今でこそ国道299号がバイパスとして村を貫き、上信越自動車道の下仁田インターにアクセスする湯の沢トンネルも開通したが、川沿いの旧道は時代がストップしたかのようなたたずまいをみせる。



この地は日航機の墜落事故、その後の道路整備、神流川発電所やトンネルの大工事などで一時は騒然としていたが、すべてが一段落した現在はかつての落ち着きを取り戻している。随所に設置される清潔なトイレは日航機事故の置きみやげだが、見ず知らずの旅人にもにこやかなほほえみを返してくれる村人の気持ちはずっと前から変わらない。

工事車両がほとんど見かけなくなったバイパスをロードバイクで飛ばしてもいいが、ここは昔ながらの旧道をゆっくりと走りたい。時速30kmでかなりのスピードを感じるほどの絶妙な道幅、真夏でも太陽をさえぎってくれる木々。もちろん観光客はこの旧道を知らないし、運転できるほど元気な村人の数は知れている。クロネコヤマトのお兄ちゃんが配達しに回るくらいだ。そんなのどかな道は、わざわざここまで訪れてくるだけの価値はある。

実走は11月3日。村の東側に位置するヴィラせせらぎの駐車場にクルマを置いてスタート。いきなりバイパスを走らずに野栗沢(のぐりさわ)に向かう道に入り、すぐに右折して旧道へ。新羽(にっぱ)の集落を走って、バイパスに出る。しばらくはこの主要道路を走るのだが、運がよければクルマとすれ違わないほどの交通量の少なさに拍子抜けする。途中、左側に「道の駅・上野」があり、道路の反対側に清潔なトイレがある。このあたりは勝山と呼ばれ、夏においしいプラムが収穫できるところ。

■神流川沿いの旧道をロードバイクで走る

バイパスは神流川を左に見ながら西に進むが、最初の大きな橋を渡る手前で右手に旧道の入り口がある。バイパスには3つのトンネルといくつかのアップダウンがあるので、これ以降はバイパスを避けて走ることにする。神流川沿いの旧道を進むと乙母(おとも)の集落が現れ、川の向こうに村役場が見える。川岸に降りてみると3月から9月ならヤマメやイワナ、6月から8月ならアユが泳いでいる姿が見えるはずだ。

乙母を過ぎると旧道はバイパスをくぐり、山を巡って反対側からバイパスを横断することになる。さらに進めば次の集落は乙父(おっち)だ。乙母と同じようにT字路になっているところが中心地で、戦前に建てたと思われる古い民家がたたずむ。かつては蚕を育てた2階建ての造りもあるが、働き手が去った今は使われているとは思えない。数年前までは乙母と乙父に1カ所ずつ、アース製薬のホーロー看板があった。一歩間違えれば由美かおるがそのまま水戸黄門のロケに登場しそうな雰囲気だ。



乙父を過ぎるとバイパスに出るが、すぐに旧道に入って楢原(ならはら)を目指す。旧黒澤家は国指定重要文化財。黒澤姓が多いのもこの村の特徴だ。楢原を過ぎると砥根平(とねだいら)。バイパスを少し戻ると「上野村ふれあい館」というおみやげ屋があって、きれいなトイレもある。ここからバイパスを西に進んでいくと十国峠に至り、南のルートを取ればそれよりも標高の高いぶどう峠へ。三岐(みつまた)にある「浜平温泉・しおじの湯」は渓流に面した縁側でしっかりした食事やビールもとれる。

のどかな天候にも恵まれてのんびりとしたサイクリングには最高。周囲の紅葉は色鮮やかに燃え上がり、サイクリストがやってくるのを待っている。
《山口和幸》

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