【山口和幸の茶輪記】一度は上ってみたいツール・ド・フランスの峠10選(10~7) | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【山口和幸の茶輪記】一度は上ってみたいツール・ド・フランスの峠10選(10~7)

スポーツ 短信
アルプスの中でも美しいグランドン峠
  • アルプスの中でも美しいグランドン峠
  • 主催者が必ず花束を手向けるポルテダスペット峠
  • 真打ちとして登場したラセドモンベルニエ
  • アルプスの中でも美しいグランドン峠
ツール・ド・フランスの勝負どころとなる山岳ステージの峠は、美しい大自然のまっただ中にあり、自転車で上ればもちろん過酷だが、素晴らしい一大パノラマを目撃することができる。一度は上ってみたいツール・ド・フランスの峠を選んでみた。

■片側2車線で豪快に上るエンバリラ峠(ピレネー)
ピレネー山脈のなかにあるアンドラ公国にエンバリラ峠(Port d'Envalira)がある。標高2408mで、片側2車線という広い道路が壮大な景観の中をジグザグに上るさまはこの峠にしか見られない特徴。免税の買い物天国でフランスからも国境を越えて観光客がやってくるゆえの道路整備だ。近年はエンバリラトンネルが開通したことにより交通量が減り、これまで以上にサイクリストが上りを楽しめるようになった。

1964年にツール・ド・フランスで史上初の5勝目を飾ったフランスのジャック・アンクティルが、唯一苦戦したのはこのエンバリラ峠だ。当時のフランスには最大のライバルであるレイモン・プリドールがいて、人気を二分していた。アンクティルはジロ・デ・イタリアを、プリドールはブエルタ・ア・エスパーニャを制して7月のツール・ド・フランスに乗り込んできた。

アンドラでの休息日に、肉汁たっぷりのヒツジの丸焼きが用意され、スター選手のアンクティルは相変わらずそんなごちそうを好み、ロゼのワインもシャンパンも1杯たりとも断らなかった。翌日、アンドラを出るや霧のエンバリラ峠が待ち構えた。前日の丸焼きを消化できないでいたアンクティルは窮地に追い込まれた。頂上でプリドールは4分差をつけたが、下りでアンクティルはリズムを取り戻し、100kmの追跡の果てにプリドールを捕らえたという。

別府史之と新城幸也が初出場した2009年もエンバリラ峠を上った。アンドラからフランスのサンジロンまでの176.5kmを走る第8ステージだった。スタート直後にカテゴリー1級に位置づけられたエンバリラ峠を越え、片側2車線の大きな道を高速ダウンヒルしてフランスとの国境に作られた検問所を飛ぶように通過していった。

■主催者が必ず花束を手向けるポルテダスペット峠(ピレネー)
ツール・ド・フランスでは1910年に初登場したポルテダスペット峠(Col de Portet d'Aspet )は標高1069m。この伝統的な峠で悲劇が起こった。1995年の第15ステージ、ポルテダスペット峠からの下り坂でバルセロナ五輪金メダリストのファビオ・カザルテッリ(イタリア)がクラッシュ。道路脇の縁石に頭部を打ち付け、即死した。

翌ステージは追悼走行で記録なし。この悲劇を教訓に、ノーヘルメットが常識だったレースが着用義務化へと移行していく。現在その現場にはカザルテッリの碑が建てられ、ツール・ド・フランスがこの峠を通過するときは必ず大会幹部がレースから大きく先行して花束を手向ける。


ポルテダスペット峠(ピレネー)

【一度は上ってみたいツール・ド・フランスの峠10選(10~7) 続く】
《山口和幸》

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