手応えとは日本時間6月27日。時差の関係で日曜日の早朝だった日本列島を、歓喜の渦に巻き込んだ「あのシーン」に集約される。
オーストラリア女子代表との息詰まる攻防に終止符を打ち、チームをベスト4に導いた後半終了間際の劇的な決勝ゴールを岩渕は笑顔で振り返る。
「大舞台で決めたあの1点というのは、本当に自信を与えてくれたのかなと思います」
■女子W杯出場6試合目で初めて決めたゴール
キャプテンのMF宮間あや(岡山湯郷Belle)が蹴った左からのコーナーキック。一度はクリアされかかったところを、ボランチの宇津木瑠美(モンペリエ)が判断よく前へ飛び出して左足を合わせる。
枠をとらえなかったシュートを、今度はゴール右にポジションを取っていたDF岩清水梓(日テレ・ベレーザ)が押し込む。相手選手のブロックに防がれたものの、岩清水は体勢を大きく崩しながら、文字通り執念でボールを左側へ蹴り出す。
目の前に転がってきたボールに、誰よりも速く反応したのが岩渕だった。無我夢中で繰り出した右足に弾かれた一撃が、豪快にネットを揺らす。笑顔と歓声が交錯するなかで、岩渕にとって女子ワールドカップ出場6試合目で初めて決めたゴールが輝きを放った。
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岩渕真奈(左)
「この3年間海外でプレーしてきて経験値というものは確実にアップしていると思うし、その意味では自分自身、自信をもって臨めた大会だったので」
ならば、何に対して悔しさを抱いていたのか。2月に痛めた右ヒザをカナダへ出発する直前の国内合宿で再び痛めた関係で、ピッチに立った5試合がすべて途中からの出場だったからか。
「先発で出られたらよかったとは思いますし、実際に先発で出るつもりでこの大会に臨みましたけど、違う立場で割り切ってプレーできたというか。時間が限られていたなかでしっかりとやり切れたと思うので、その点はよかったのかなと思います」
どうやら違うようだ。となると、前半16分までにまさかの4失点を許し、必死の反撃もかなわずに2対5のまま試合終了。世界女王の肩書きをアメリカ女子代表に奪われた決勝戦となるのか。
【なでしこジャパンの次世代エース・岩渕真奈が見すえる未来 続く】