山で「のんびりランチ」を満喫し、VIVA! 加波山! と思っていた矢先のことである。下山路で、道に迷ってしまった。
何がいけなかったかというと、「あとは下山して温泉にでも入って寝よう」とすっかりくつろぎモードになってしまったことだろうか。それとも、地図とコンパスで現在地を確認して下山路を選ばなかったことだろうか。いや、看板を何となく見てしまい、適当に進路を選んだせいかもしれない。たぶん、これらの要因は全てあてはまる。それに加えて、下山路を指す看板の文字が消えていたという要因もあったのだから、これは道に迷うべくして迷ったと言っても過言ではない。
道に迷ったと気づいたのは、下山を始めて30分ほど経ったころだった。
◆紛らわしい表記に注意!
のんびりランチを終えた筆者は、愛読書「茨城県の山(山と渓谷社)」の地図を頼りに加波山神社の拝殿から下りていった。愛読書には山椒魚谷という沢沿いを歩く道があると書かれていた。実際に、それらしい沢沿いの道はあった。筆者は疑うことなくそのまま歩みを進めた。
続いて、愛読書によると沢沿いの道を抜けると「舗装路」に出るとあった。なるほど、「アスファルトの道」に出くわした。この道を歩き続けると、登り始めた3合目に出るはずであった。だが、どうにも様子がおかしい。少しばかりの登りならまだわかる。下山路だからといって、下りの道ばかりだとは限らない。アップダウンがある場合だって多々ある。しかし、あまりにも登りが続き、先を見ても下っている様子はない。ん? これはおかしぞ? そこでようやく異変に気づいた。
だが、地図を見返して見ても、下山路にあるポイントは通っている。山椒魚谷(沢の道)、舗装路。では、舗装路に出た際にあった分岐を逆に歩いてしまったのかもしれない。そう思って、分岐点まで引き返した。
◆同時多発遭難
そこで1組の登山者に出会う。子連れのファミリーパーティだった。筆者たちが歩いてきた道の途中で、地図を見ながら立ち止まっている。もしやと思い、声をかける。すると、このパーティも道に迷ったかもしれないと言う。
しかも、このパーティは筆者たちが今から歩こうとしてきた分岐の逆の道を歩いてきて、どうにも違うと思って引き返してきたと言うのだ。
そこで、文明の利器の登場だ。スマートフォンのGPS機能。これを使えば現在地がわかるはず。GPS機能を起動して、現在地から目的地である3合目まで歩いてどれくらい時間がかかるかを調べてみる。すると、現在地は山の「逆側」を指しており、2時間と表示されるではないか。
何かの間違いかと思い、その場に佇んでいると、今度はまた違うパーティがやってきた。やはり、地図を見ながらいぶかしげな表情を浮かべている。このパーティーもまた、道に迷ったのだ。
ここに、道に迷った3組の登山パーティが一堂に会した。低山、恐るべし。
《久米成佳》
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