雲海の景色に元気をもらった筆者とジマさんは、次々と襲いかかってくる鎖場を、ちぎっては投げ、ちぎっては投げと乗り越えていった。
◆連続鎖場を乗り切れた理由とは?
今回は、登りで健脚コースを選んだためか、前回ほど鎖場に対する恐怖心はなかった。鎖場を登りながら、ジマさんとの会話を楽しむ余裕すらあったのだ。
これには筆者自身が一番驚いた。確かに、急な登りなので疲れもするし、恐怖もする。時折、これは本当に人が登っていい道なのか、と疑問に思うこともあった。それでも、いざ岩に取り付き、鎖を握ると、あれよあれよと言う間に登りきってしまう。
しかも、会話をしながらだ。更に言うならば、襲いかかってくるアブと格闘しながら登っていたのだ。
そう、この奥久慈男体山は、夏季になるとアブが大量に発生する。前回に登った時に、ガイドの方からその情報を仕入れていたのだが、今回はまんまと虫除けスプレーを忘れてしまった。ただでさえ、汗っかき(新陳代謝が恐ろしく良いようだ)の筆者には、蚊やらアブやら蜂やらが寄ってくるというのに。
今回、一番厄介だったのは、鎖場ではなくこのアブであった。動きを止めるとすかさず身体にまとわりつき、服の上からでも皮膚を噛み切る。これがけっこう痛い。後に、かなりの痒みが生じる。なので、常に動いてなければならない。アブは、筆者たちに休憩する暇さえ与えてくれなかった。
アブと格闘しながら鎖場を登っている内に、頂上間近のあずま屋にたどり着いた。いつの間にか、鎖場を乗り切ったのだ。
意外にも、因縁の鎖場をあっさりと抜けられた。その理由は、今回は登りだったから? ジマさんとの会話で気が紛れたから? アブとの格闘に忙しかったから? いやいや、ここは、「筆者の登山レベルがアップしたから」という結論にしておこうではないか。
◆夏から初秋の低山には虫除けスプレーが欠かせない
あずま屋まで出れば、あとは頂上までわずかな道のり。ここにもやはりアブがいたので、休憩は取らずに頂上を目指す。少しでも標高が高いところに行けば、アブはいないのではないか。そのような期待を抱いて最後の登りに力を注ぐ。
頂上に到達すると、アブの代わりに大勢のクマバチに遭遇する。蜂はこちらから手を出さなければ、基本的に問題はない。しかも、クマバチは温厚な性質のため、大きな見た目の割には危険度は極めて低い。それでもあまりの数に恐怖し、写真だけ撮り終えると頂上から足早に去った。
展望台から頂上まで、ほぼノンストップで登った。下山中も、休もうとするとアブが寄ってくるので、やはりノンストップ。ゆったり、のんびりと登るのが低山ハイクの魅力であるのだが、今回はそれを味わう余裕を与えてもらえなかった。
夏の低山は、虫に要注意。アブだけに、アブないのだ。(お粗末!)
《久米成佳》
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