【飯島美和のケ・セラ・セラ】選手と同じ空気を吸い、情報を届け続ける意義 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【飯島美和のケ・セラ・セラ】選手と同じ空気を吸い、情報を届け続ける意義

オピニオン コラム
イタリアに春に訪れを告げるレースとして、「春」という意味の「プリマベーラ」と呼ばれるミラノ~サンレモが3月23日に開催された。100年を超える伝統を有するこのレースは、その名の通りミラノをスタートする。ジェノバを通過し、イタリアの西岸沿いを南下してサンレモ
  • イタリアに春に訪れを告げるレースとして、「春」という意味の「プリマベーラ」と呼ばれるミラノ~サンレモが3月23日に開催された。100年を超える伝統を有するこのレースは、その名の通りミラノをスタートする。ジェノバを通過し、イタリアの西岸沿いを南下してサンレモ
イタリアに春に訪れを告げるレースとして、「春」という意味の「プリマベーラ」と呼ばれるミラノ~サンレモが3月23日に開催された。100年を超える伝統を有するこのレースは、その名の通りミラノをスタートする。ジェノバを通過し、イタリアの西岸沿いを南下してサンレモでゴールする。

驚くべきところは走行距離。国際自転車競技連合の公認するレースでは最長距離となる299km。東京から愛知県まで行ってしまうほどの距離を自転車の選手たちは7時間で走りきる。

そして「春」と呼ぶにはほど遠い悪天候もこのレースの伝統なのかと思うほど例年天気が悪い。2014年も冷たい雨がときおり雪に変わり、強い風が吹き付ける悪天候で、リタイヤする選手が続出という過酷なレースだった。

私はこのレースを最後に12日間のイタリア取材を終え、フランスの自宅に帰るTGV(日本の新幹線のような長距離高速鉄道)の中でこれを書いている。移動中は貴重なデスクワークの時間。特に自分で運転しなくていいTGVや飛行機移動は寝てるか、原稿を書いているか(笑)。

今回のイタリア滞在では2つのビッグレースに帯同し、さらに21年続くイタリアのプロチームの本部事務所や、2014年で60周年を迎えたイタリアの伝統文化ともいえる自転車ブランドの本社を取材させてもらった。普通ならば入ることができない場所で簡単には会うことのできない方々から貴重な話を聞いた。これをこれから原稿として書いていくのだか、ここでの空気感や言葉の重さを記事にするのは容易なことではないだろう。

歴史や経歴を調べるのなら、今は何でもネットで検索できるかもしれない。レースもライブ配信されていて、多くの写真や結果はSNSであっという間に世界中に広まる。レース中、車を運転しながら動いている私たちより、家でテレビやパソコンの前に座ってライブ配信を見ている人のほうが詳しくレースを見ることがでるのは確かだ。

では、私たちが現場にいる意味はなんだろう。暑さや寒さでスタート直前までチームバスから出てこない選手をひたすら待ったり、レース中は冷たい雨からカメラを守りながら、かじかむ手でシャッターを押したり、ときには灼熱のコース上でふらふらになりながらゴールを待ち、一刻も早くチームバスに戻りたい選手たちを追いかけながらコメントを取る…。

嫌な顔されるときもあるし、話てもらえないこともある。でもその瞬間だからこそ、興奮冷めやらぬコメントを聞けるときもある。それは現場にいるからこそ、選手と同じ暑さ寒さを味わって感じることができること。そこから聞き出せることもあるし、選手の表情をみて、その場の空気から読み取れることも多い。

テレビやネットからは伝わらない、現場でしか感じられない空気感を伝え配信していくことが現場にいる私たちの役目なのかもしれない。だから私はまたレースへ行くのだ。
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