歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.1 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.1

オピニオン インプレ

歓迎すべき進化か、悲しい万能化か vol.1
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安井行生のロードバイク徹底インプレッション
安井行生プロフィール

歓迎すべき進化か、それとも悲しい万能化か
すでに最強のロードバイクとして名声をほしいままにするドグマが各部をアップデート。カーボン版のピナレロハイエンドが早くもフェーズ3に突入したことになる。プリンス・カーボンを所有しドグマ60.1にも試乗経験のある安井は、ドグマ2の登場をどう受け止めたのか。この新型車は史上最高のピナレロたりえるか。近代ピナレロの旗艦3モデルを全力で乗り比べた印象を有りのままに羅列したレポート。
(text:安井行生 photo:我妻英次郎/安井行生)
全てのモデルに変更を加える (ドグマKは名称変更のみ) など、まさに “全モデル総員総攻撃状態” にある2012シーズンのピナレロだが、メインとなるのはもちろん旗艦となるドグマのフルモデルチェンジである。鮮烈な走りを見せ付けたデビューからまだ2年と経っていないドグマ60.1が色褪せたとは到底思えないが、流れがどんどん加速している現在のロードシーンでは商品力に乏しくなると判断したのだろうか、ピナレロはドグマのボディに決して小さくない変更を加えた。
フレーム形状はそのままにカーボンの積層を変えて剛性アップさせました、とマイナーチェンジで誤魔化してセールスに喝を入れることは簡単に出来たはずである (ピナレロは同じ金型でバリエーションを作るのが得意なブランドだった)。そこをわざわざ形状変更し設備投資 (新しい金型投入) しているのだから、これは気合が入ったフルチェンジと見るべきだろう。車名はドグマ2、開発テーマは 「ブラッシュアップ」 である。
基本的なシルエット、フレーム素材、製造方法、ジオメトリ、価格帯などは前作を踏襲。トレヴィソの言い分を素直に信じるならば、ドグマ60.1の 「BB付近の横剛性を14%アップ」 させ、「フロントフォークの強度を19%向上」 させ、「フレーム全体の空気抵抗を12%削減」 し、「左右の剛性バランスを6%向上」 させたフレームがドグマ2ということになる。
分かりやすい変更を受けたのはヘッド~フォークである。ドグマ60.1も下ワン1-1/4インチの上下異径ヘッドだったが、ドグマ2では下ワンがさらに大口径化され1-1/2インチとなった。さらに、フォーククラウンの後部にフィンが追加されると同時にダウンチューブがそのフィンを受けるような形状に変化。フォークとダウンチューブの隙間を埋め、フロンとブレーキ後部の乱流の発生を防いで空力性能を向上させるのが目的だ。ヘッドチューブ下ワンのベアリングを1.5インチに大径化したことでヘッド部の前面投影面積は6%増加しているが、ヘッドチューブサイドにあったリブの張り出しを少なくすることで、ヘッド周りの空気抵抗は10%減少しているという。この形状変化 (クラウン部のボリュームアップ) は流体力学シミュレーションを用いて数値的に解析した結果だということだが、制動時の剛性アップにも寄与しているとのこと。この新型フォークは 「オンダ2」 という名称になった。
ドグマのアイデンティティである左右非対称設計はさらに煮詰められているらしい。空気抵抗削減のためヘッドチューブとハンガー部のリブはほとんど消え、そのかわりダウンチューブが左右非対称になり (意外にもドグマ60.1のダウンチューブはほぼ左右対称だった)、右側に鋭く長いリブが入った。フォークのブレードは右側にリブが多くなり、完全非対称度合いが進行。シートステーも右側のリブがより強くなっている。全体的にフレーム右側を強化しているように思える。
ワイヤー類は全て内蔵となり、2%の空気抵抗削減に貢献。ピナレロは、これらの涙ぐましい努力によってフレーム全体で12%の空気抵抗削減を達成、「時速47kmで40km走行した場合、タイムが7秒短縮する」 と説明している。剛性を担っていた各部のリブが削減されたことによる剛性低下を抑えるため、カーボンの積層も変更されている。
フレームサイズが12種類、カラーが15種類用意される (アップチャージが必要となるがカラーオーダーも可能) のは、さすがピナレロといったところ。参考のために各社のトップモデルのフレームサイズ数を比較すると、BMC・インペックは5種類、ジャイアント・TCRアドバンスドSLは4種類、トレック・マドン6シリーズは7種類、ルック・695もタイム・RXRSもスペシャライズド・ターマックも6種類、アンカーのニューモデルRIS9は5種類。多ければ多いほどいいとは言い切れないが、ピナレロのフレーム作りに対する姿勢がよく見えてくる事実ではある。

スペック
キャプション
濃厚濃密なピナレロ・ワールドが待っている
空力性能向上の実効果は“?”だが…
ピナレロの展示会で初対面したドグマ2からは、またずいぶんとスッキリしちゃって…という印象しか受けなかった。ドグマ60.1はフレーム各部のリブがはっきりとした陰影を作り、それが独特の存在感を醸し出す。太陽の下に連れ出したとき、あれほど濃淡が激しく浮き出るフレームは他にない。それがドグマ2では、リブが低くなりエッジの表情も柔和になった。乱暴で刺激的なドグマならではの雰囲気は、残念ながら薄まっていた。
リブを低くしたのは空力性能向上のためだということだが、しかしそれを体感するのはおそらく不可能だろう。全抵抗の大半をライダーの空気抵抗が占めるロードバイクでは、「エアロ効果」 はフォイルやヴェンジ、ノア・ファストのようなみっちりと作り込んだ 「全身総エアロ」 なモデルでやっと 『40km/hで十数ワットのセーブが可能』 というようなデータが出る (メーカーが出してくる数値なので、もちろん額面通りには受け取れないが)。それも実走行では高速域でかすかに感じられる程度。リブを少し削りフォークを少し盛っただけに過ぎないドグマ2の空力性能が体感できるほど劇的に向上しているとは到底考えられない。基本的なシルエットを共有するドグマ60.1とドグマ2の空力性能の差は、最新エアロロードからしてみれば誤差のようなものに違いない。ジャージのシワを伸ばした方がよほど空力性能の向上に繋がるだろう (もちろん、ドグマは空力性能の良し悪しで語るべきフレームでは全くない)。
リブが低く丸くなったことで製造コストも若干下がっているかもしれないが (プリプレグを型に貼り付けていく工程がやや簡素化されている可能性あり)、これはもちろん筆者の邪推であり確かではない。
走り出せばつまらない御託が吹っ飛ぶ
しかし、走り出せば感嘆のため息が出る。これは紛いなく、あのピナレロの、あのドグマなのである。そこにはピナレロの上級モデルだけが持つ濃厚濃密な世界が待っている。前から糸で引っ張られるようなスムーズな加速でも、重力に引かれて自由落下するようなナチュラルな加速でも、しなやかさに身を任せる繊細でピュアな加速でもない、背中に大男のタックルをまともに受けたように湧き上がる圧倒的な加速。VXRSを加速させたときにアタマの中で分泌される快楽物質とは明らかに異なる何かが、アタマの中ではじけ飛ぶ。知らない間に口元が緩んでいる。
とはいえ、これはドグマ2だけが有する性能ではなく、近代ピナレロのフラッグシップ全てに共通して感じられるものである。おそらくプリンス・カーボン、ドグマ60.1、ドグマ2と、絶対的な性能はそれほど変化していないだろう。実際のところ、近代ピナレロ旗艦一代目であるプリンス・カーボンは今乗っても一級レベルの動的性能を持っている。まさに打てば響く加速、限界など見える気がしない剛性感、現在のモンスターバイクにも全くヒケを取っていない。今となっては最新のバイクではないが、今でも圧倒的な動力性能に感動できる。ドグマ60.1もしかり。この 「剛脚のみが引き出せる高負荷運動世界」 な感じがピナレロハイエンドの持ち味だった。ドグマ2は少し違う。変わったのは味付けである (その差は非常に小さいが)。
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