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ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンが、宮城県の利府ゴルフ倶楽部で22日に開幕する。注目は2017年の同大会でプロ初優勝を遂げた畑岡奈紗。
優勝は、2022年4月のDIOインプラントLAオープンから遠ざかっているが、今年7月の海外メジャー、全米女子オープンとエビアン選手権ではともに最終日最終組に入り優勝を争った。さらに8月の全英女子オープンでも、最終日を首位と5打差の9位タイで迎え、海外メジャー3戦連続で優勝を狙える位置でのプレーとなった。
世界ランキングは現時点で18位。過去最上位が3位の畑岡にしては、最近の成績は寂しい感じもするが、海外メジャーでの活躍を見る限り、まだまだ世界のNASAのプレーは健在。
今季日本ツアー初出場となる畑岡。プロ初優勝の地での戦いを、今後の上昇につなげたい。
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■好成績を支えているのはアイアン精度
畑岡はアマチュアとして出場した16年の日本女子オープンで優勝。プロになってからは、主戦場を日本ツアーにすることなく、17年から米ツアーを主戦場とした。
よって、畑岡の日本ツアー参戦はすべてスポット。日本とアメリカではコースの芝質などが違うため、対応が難しくなる側面があるが、そのスポットで参戦した大会では、さすがのプレーを見せてきた。
17年はミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンの翌週の日本女子オープンでも優勝し、2週連続優勝を達成。
18年の日本女子オープンは3連覇とはならなかったが2位。その後の日米共催ツアーTOTOジャパンクラシックで優勝した。結果、18年の日本ツアー成績は4戦して優勝を含むトップ3が3回となった。
19年も強かった。5戦して日本女子プロゴルフ選手権と日本女子オープンでの日本のメジャー2大会で優勝。
20年から22年の間は計4戦の出場にとどまり、優勝とはならなかったが、20年のTOTOジャパンクラシック(この年は日本ツアー単独開催)では3位タイに入った。
このようにスポット参戦している日本ツアーで、好成績を残してきているが、それはアイアンショットの安定感が支えている。
毎年、日本ツアーは規定ラウンド数不足のため順位には入っていないが、すべての年でパーオン率が70%超え。この記録をそのままランキングにあてはめるとすべての年で上位に入っている。
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畑岡奈紗国内ツアーでのパーオン率
■平均スコアは下降気味だが
畑岡が世界ランキングでトップ10にい続けていた頃と比べると米ツアーでの平均スコアは下降気味。20年は5位だったが今季は現時点で12位だ。
試合ごとのトップ10フィニッシュの確率もやや下降気味。18年や20年は40%以上の確率でトップ10に入っていたが、21年からは30%を切っている。
ただ畑岡の場合、優勝の有無や回数と年間を通しての安定感はあまり関係が無く、安定感がやや欠けているぐらいのシーズンの方が優勝しやすいようだ。
19年は3月にキア・クラシックで優勝し、日本ツアーのメジャー2大会で優勝。この時、世界ランキング3位に上昇した。そして年間を通してトップ10をキープ。世界ランキングは5位でシーズンを終えた。
しかし、平均スコアは18位でトップ10フィニッシュの回数も18位となり高い水準とは言えないものだった。
21年も同様に優勝回数と、安定感が一致しないシーズンだった。同年はマラソン・クラシックとウォルマートNWアーカンソー選手権で米ツアー2勝。しかし、平均スコアは25位、トップ10フィニッシュ回数は19位タイとなり、トップ10フィニッシュ確率も含めて、それぞれ18年以降最低となった。
最も安定感が高かったシーズンでは優勝していない。20年は平均スコアが過去最上位の5位で、トップ10フィニッシュ回数も過去最上位タイの4位タイ。
コロナの影響で出場試合数が12と少なかったものの、優勝争いに加わることもあった。だが、20年は18年から22年の間で唯一未勝利の年となった。
畑岡は安定感やトップ10フィニッシュの回数がやや物足りない年ほど優勝している。安定感が高くない方が、無欲で攻め続けやすいのかもしれない。逆に安定感が高い時は、過度なプレッシャーを自分にかけてしまい、要所で丁寧に行き過ぎてしまうのかもしれない。
今季は海外メジャーで3戦連続優勝を狙える位置でプレーしたかと思えば、その後の大会で今季初めて予選落ちを喫している。畑岡の場合、これぐらいの調子の方が優勝をさらえるのではないだろうか。
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畑岡奈紗米ツアースタッツ
■世界ランキング日本人選手トップ死守へ
長きにわたり、‟世界ランキング日本人選手トップ”は畑岡の指定席だった。しかし現時点では、その座にいるものの指定席ではなくなった。
22年から米ツアーを主戦場とし、今季安定感あるプレーを続けている古江彩佳や、昨季の日本ツアー年間女王で、今季も年間女王のチャンスが大いにある山下美夢有が、世界ランキング日本人選手トップになる時もあった。
来年はパリ五輪がある。畑岡は、メジャータイトルと同様に五輪のメダルを欲している。五輪出場権を獲得するには、世界ランキングで日本人選手上位2名、というのが一つの目安になる。
日本のエースとして臨んだ東京五輪では9位タイとなり、自国開催五輪の主役を銀メダルを獲得した稲見萌寧に奪われた。「パリでは自分が」という思いは強いのではないだろうか。
日本ツアーは米ツアーほど世界ランキングを決めるポイントが高くないが、優勝すればポイントで他の日本人選手を引き離すことができる。ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンでは、代表入り争いを優位に進められるよう、アイアンショットの精度を武器に初日から優勝を狙い攻めていく。
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著者プロフィール
野洲明●ゴルフ活動家
各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。