【HEROs AWARD 2022】ガンバ大阪・鈴木武蔵 前編 子どもたちを支援するストライカーの挑戦「夢や希望を与えるのがカッコいい」 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【HEROs AWARD 2022】ガンバ大阪・鈴木武蔵 前編 子どもたちを支援するストライカーの挑戦「夢や希望を与えるのがカッコいい」

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【HEROs AWARD 2022】ガンバ大阪・鈴木武蔵 前編 子どもたちを支援するストライカーの挑戦「夢や希望を与えるのがカッコいい」
  • 【HEROs AWARD 2022】ガンバ大阪・鈴木武蔵 前編 子どもたちを支援するストライカーの挑戦「夢や希望を与えるのがカッコいい」

社会貢献活動に取り組むアスリートやチームを表彰する国内最大の式典「HEROs AWARD」。6回目を迎えた2022年度の「アスリート部門」を受賞したのがJリーグ・ガンバ大阪に所属する鈴木武蔵。ジャマイカ人の父親と日本人の母親とのハーフとして生まれ、幼少期に苦しい経験を経てきた鈴木は、代表理事として「Hokkaido Dream」のプロジェクトに取り組む。今回は同プロジェクト設立に至った経緯や、今後の活動の展望について話を聞いた。

鈴木武蔵(すずき・むさし)

●プロサッカー選手

1994年ジャマイカ⽣まれ。ジャマイカ⼈の⽗と⽇本⼈の⺟を持つ。桐⽣第⼀⾼から2012年にアルビレックス新潟に入団し、2016年にリオデジャネイロ五輪にU-23日本代表として出場。⽔⼾ホーリーホック、松本⼭雅FC、V・ファーレン⻑崎、北海道コンサドーレ札幌に在籍し、2019年に日本代表初選出。2020年からベルギー1部のKベールスホットVAで2シーズンプレーし、2022年7月からガンバ大阪に在籍。著書に『ムサシと武蔵』(徳間書店)。

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■行動を起こすきっかけは人気ラッパー

鈴木は2016年に南野拓実(ASモナコ)、遠藤航(シュツットガルト)らと、リオデジャネイロ五輪に出場。JリーグではV・ファーレン長崎時代の2018年に11得点、北海道コンサドーレ札幌に移籍した2019年にも13得点を挙げ、海外移籍や日本代表入りも果たすなど国内有数のストライカーとして評価を高めてきた。そんな鈴木が苦しんだ幼少期の思いを胸に立ち上げたのが「Hokkaido Dream」。

「僕が幼少期に肌のことでいろいろ苦しい思いをしてきたので、同じような悩みを抱えている子どもたちに少しでも僕が喜びを届けられたらいい。家庭環境が複雑な子どもや児童養護施設の子どもたちに向けてやっていきたいというのが最初の想いです」。

鈴木が行動を起こすきっかけになったのが、カナダ出身の人気ラッパーであるドレイク。『God’s Plan』のミュージックビデオは学校や施設にドレイクが寄付をしていく内容で、鈴木はYouTubeで動画を見て、「地位やお金がある人が夢や希望を与えるのがカッコよかった。自分も同じ境遇の子たちにできることが絶対あるんじゃないかと思った」と、実際に行動を起こす後押しとなった出来事について語る。

■2020年に活動を本格スタート

2019年12月にひとり親家庭や児童養護施設の子どもたちを対象に、サッカー教室「MUSASHI CUP」を開催。翌年に「Hokkaido Dream」として活動を本格スタートさせた。サッカー教室や大会の開催に加えて、農家を支援するためにECサイト「Rescue Hero」を立ち上げ、フードロスをなくすために農家と消費者をつなげる活動を実施。コロナ禍において、課題となってきた食糧問題の解決に取り組んできた。

「(札幌時代のチームメートである)荒野拓馬も一緒にやっているんですけど、拓馬がフードロスの問題についてもっと取り組みたいという中で、たまたま農家さんの知り合いがいて、困っていると聞いて僕たちでできることがあるんじゃないかなということで最初は始めました」。

このプロジェクトに対して鈴木は、シーズン中は練習後などの空き時間にオンラインでスタッフとコミュニケーションをとり、シーズンオフにはサッカー教室や児童養護施設の子どもに会いにいくなど、サッカー選手としての生活と並行して時間を割いてきた。同じく自らのサッカー教室を開催し、スポンサー集めにも取り組む倉田秋など、ガンバ大阪のチームメートとフィールド外での活動について話すこともあるという。

メンバーと協力して活動を続けてきた

■「自分たちにできることはたくさんある」

鈴木は現役選手としてこの活動に取り組む意義について、自身の原体験と照らし合わせながら語る。

「僕も子どもの時にザスパ草津(現ザスパクサツ群馬)の練習に参加したことがあって、今でも覚えています。子どもたちにとって、現役の選手とできるということは印象に残ると思いますし、引退した選手じゃなくて、『現役の選手とできた』ということが子どもたちにとっていい刺激になると思います」。

また、「単純に一緒にサッカーをすることがすごく楽しいし、逆に子どもたちから元気をもらって、もっともっと頑張らないといけない、となります」と話し、子どもたちとのプレーがサッカー選手としての活動にもプラスに作用している面もあるという。

その中で、「コロナ禍で家庭環境がさらに厳しくなった子どもたちもたくさんいますし、そういうニュースを聞くと心が痛いし、まだまだ自分たちにできることはたくさんある。いろんなアスリートがこういった活動ができればいいですし、それを現役中にやることが大事だと思います」と述べ、アスリートがそれぞれの影響力を生かして活動することの重要性も説いている。

サッカー教室開催後の子どもたちとの記念撮影

■農業分野での課題解決に意欲

「Hokkaido Dream」の活動については現役後も意欲を見せ、その時々に起こる社会問題に取り組んでいき、並行して全国でのサッカー大会も開いていくという。

今後の具体的な活動プランについて鈴木は、農業の分野にさらに取り組んでいくことを明かす。18歳で児童養護施設を出る子どもの中には、夜の世界に進む子も少なくないといい、施設を出た子どもの就業先として農業への道を用意することで、後継者不足の課題を抱える農家側にもメリットが生まれ、双方の課題解決に向かっていくことを目指している。

「コロナ禍の時は食糧問題があったのでそれに取り組んで、今度は農業という分野で社会課題に一つひとつ取り組んでいく。人間的にも成長できると思うし、そこに取り組んでいくことで少しずつ僕の周りから変える。そこは引退してもやっていきたいと思います」。

今回の「HEROs AWARD」受賞に対して鈴木は、「賞を受賞したいから始めたわけではないですが、活動の幅を広げられるチャンスだとは思うので、そこはうまく活用してやっていけたらとは思います」と語った。フィールド内外で周りを救うヒーローとして、ストライカーの挑戦は続く。

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取材・文●井本佳孝(SPREAD編集部)

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