【プロ野球】村神様によるヤクルト、29年ぶりのセ界連覇 試合を決めたのはオスナの全力疾走 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【プロ野球】村神様によるヤクルト、29年ぶりのセ界連覇 試合を決めたのはオスナの全力疾走

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【プロ野球】村神様によるヤクルト、29年ぶりのセ界連覇 試合を決めたのはオスナの全力疾走
  • 【プロ野球】村神様によるヤクルト、29年ぶりのセ界連覇 試合を決めたのはオスナの全力疾走

村神様による2連覇だった。

優勝へのマジックを「2」としていた東京ヤクルト・スワローズは25日、本拠地・神宮球場で2位・横浜DeNAベイスターズと直接対決。手に汗に握る投手戦、スコアボードに「0」が並び続けた9回裏、昨年ドラフト2位の新人、伏兵・丸山和郁がサヨナラ打を放ち、ヤクルトがサヨナラ勝ち。2位との対決を制したため、一気にセントラル・リーグ2連覇を果たした。

◆清宮幸太郎を外し、ヤクルトが手に入れた「55」本塁打の村上宗隆

■オスナには、ヤクルト1000を1000本

野球はいつも細かい点に勝機がある。日本人としてシーズン最多本塁打が期待される4番村上宗隆は全打席がスポーツニュースになり、ヤクルト小川泰弘・DeNA今永昇太の力投も素晴らしかった。しかし、この日は日本のプロ野球界において常に「助っ人」とくくられ、ともすれば脇役に追いやられがちなオスナの全力疾走が優勝決定を呼び込んだ。

延長を見据えれば温存も考えられた9回表、高津監督は守護神マクガフを投入。期待通りDeNAを三者凡退に切って取る。その裏、先頭で打席に立ったオスナのひと振りは遊撃の深いところではあったが、ほぼ「内野ゴロ」という当たり。だが、打球が前に飛んだと思った瞬間、オスナは頭を下げ前傾姿勢で一塁へ全力疾走。タイミング的にはアウトに思えたがショートの送球がそれたのも功を奏し、生きる。サヨナラのランナーだ。

代走に塩見泰隆が送られ、これを中村悠平がきっちり送りバント。ここでルーキーによる史上初の優勝決定サヨナラ打が生まれた。三冠王、55本塁打……メディアは派手な見出しを追いかけるが、勝敗を分けるのは、こうした細かいプレー。

オスナには、ヤクルト1000を1000本贈りたい。

■村神様、今季一番のご利益

もちろん、シーズンを通しては村神様の1年だった。

7月2日にはマジック52が初点灯。14カード連続勝ち越しとまさに盤石と思われ夏を迎えた。しかし7日に大ベテラン石川雅規が白星を稼いだ直後、14人もの新型コロナ感染が発覚、試合中止がありつつも6連敗。主力として唯一チームに残った村上による孤軍奮闘の日々が続く。球宴明け阪神3連戦、村上による「世界新記録」5打席連続本塁打で3タテを免れ、中日にも連勝するものの、8月5日からも7連敗とチームは勢いを失った。

気がつけば本拠地17連勝と勢いに乗るDeNAに4ゲーム差に迫られ、同26日からその横浜スタジアムに乗り込んでの3連戦を迎えた。3タテでも喫すれば、その差はわずか1。優勝への黄信号が灯っていた。本拠地で15連勝以上をマークした5球団はこれまですべて優勝を果たしている。横浜に「奇跡の逆転優勝」の声が聞かれるようになった。

村神様の今季一番のご利益は、最年少150号でも55号弾でもなく、この3連戦でもたらされた。逆に横浜にとっては悪夢だったろう。村上はこの3連戦中、プロ野球記録を窺う14打席連続出塁を記録、打っては4発9打点。ヤクルトは3連勝し、2位とのゲーム差を7と広げた天王山だった。試合後、DeNAの球団関係者からは「参りました」とメッセージが、DeNAファンからも「今季、優勝したら村神神社を建立したほうがいい」と冗談が届くほどだった。

23日から始まったこの3連戦も「まだわからない」戦いだった。3連戦前マジック4とは言え、9月は6勝8敗。7月までの勢いを完全に失っていた。しかもヤクルトは初戦を落としていた。56号を目前にし、村神様の神通力も発揮されないまま。それでも、オスナの全力疾走のように、小さなチームの自力で拾った勝ち星2つに、ヤクルトの強さを見た。そんな優勝決定だった。

■村神様に残された仕事

村上は試合後に行われた優勝のビールかけの際、こうコメントを残した。「もう最高です!  言うことないです。まだ、日本シリーズ以外も記録がかかってるんで。神宮のみなさんに喜んでもらえるようなバッティングを、やります!」と。

V2の歓喜のあとシーズン6試合、村神様には残した仕事が待っている。

◆55号達成のヤクルト村上宗隆に米メディアも熱視線 「ヤンキースはピンストライプを着せることを考えている」

◆「プロ野球に村上宗隆あり!」野村克也元監督のボヤきに応える53号弾、記念ボールはノムさんへ

◆村上宗隆、野村克也元監督の遺言に迫る51号弾 「オレの記録を抜け」

著者プロフィール

たまさぶろ●エッセイスト、BAR評論家、スポーツ・プロデューサー

『週刊宝石』『FMステーション』などにて編集者を務めた後、渡米。ニューヨーク大学などで創作、ジャーナリズムを学び、この頃からフリーランスとして活動。Berlitz Translation Services Inc.、CNN Inc.本社勤務などを経て帰国。

MSNスポーツと『Number』の協業サイト運営、MLB日本語公式サイトをマネジメントするなど、スポーツ・プロデューサーとしても活躍。

推定市場価格1000万円超のコレクションを有する雑誌創刊号マニアでもある。

リトルリーグ時代に神宮球場を行進して以来、チームの勝率が若松勉の打率よりも低い頃からの東京ヤクルトスワローズ・ファン。MLBはその流れで、クイーンズ区住民だったこともあり、ニューヨーク・メッツ推し。

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