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ラ・リーガ第3節、レアル・ソシエダは敵地で昨季リーガ13位のエルチェと対戦。日本代表の久保建英は前節までと同じく、[4-3-1-2]システムの2トップで先発出場。チームの1―0の勝利に貢献した。ソシエダはリーガ3試合で2勝目。現地各紙では久保に軒並みチーム2番目から3番目の高採点がついている。
今週、ソシエダはスウェーデン代表FWアレクサンデル・イサクがイングランド・プレミアリーグのニューカッスル・ユナイテッドへ完全移籍することを発表した。イサクは開幕から久保と2トップを組むFWで、典型的なストライカータイプ。ソシエダにはイサクの他に本職FWが19歳の若手ホン・カリカブルしかおらず、エルチェ戦での2トップの人選に注目が集まっていた。
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■久保は新たなホットラインを確立か
そんな中、久保は本職がサイドアタッカーのモハメド・アリ・チョとの2トップで先発。前節までと同様にセカンドトップとして前線から中盤に引いたり、サイドへ流れて攻撃の起点となった。ショートコーナーから鋭いシュートで相手GKを強襲する場面もあった。
特に元スペイン代表のレジェンドMFダビド・シルバとのポジションチェンジはこの日も軽快。想像力豊かな日西2人のレフティが奏でる攻撃に、今夏加入のMFブライス・メンデスも巧みに絡んだ。
スペイン代表歴もある25歳のメンデスは、中堅のセルタでの約5年間でリーガ150試合以上に出場してきた実力者だ。この日は久保が中盤に下がって出来たスペースを狙って相手DFライン裏に抜け出し、決勝点を挙げる活躍ぶり。右サイドでシルバと久保、メンデスが入れ替わり、立ち替わりするポジションの循環とボールの流れは試合を経るごとに精度を増している。
イサクの流出で久保の起用法にも注目が集まったが、久保にとっては新たに強力なホットラインを構築できる選手との連携が積み上がった試合だった。
■新ストライカーは、セルロート? カバーニ? グリーズマン?
もっとも、久保は前節・バルセロナ戦と同様に後半の中頃から極端に運動量が落ち、78分で途中交代。36歳となったシルバと共にピッチを後にしたが、本来は「シルバの後継者」として獲得された久保にとってはスタミナ面での課題を露呈している。
イサクの移籍、チームのエースにして主将であるスペイン代表FWミケル・オヤルサバルが長期離脱している現在、久保にはFW起用で大きなチャンスが巡って来ている。この日好連携を見せたメンデスやシルバとは本来ポジションを争う可能性もあるだけに、久保にとっては結果が欲しいところだった。
ソシエダはイサクの移籍によって7000万ユーロ(約98億円)とされる100億円近い高額な移籍金収入を得た。この軍資金をもとに、9月1日に閉幕が迫った移籍市場で代役ストライカーの獲得を目指す。
そもそも本職のストライカーが少なく、イサクも昨季6ゴールと苦しんでいたソシエダにはFW補強案があった。すでに現地メディアでは昨季ドイツのRBライプツィヒからのレンタル移籍でプレーしていたノルウェー代表FWアレクサンダー・セルロートの再獲得が現実味を帯びていると報道されている。
他にもマンチェスター・ユナイテッドを退団してフリーとなっているウルグアイ代表FWエディンソン・カバーニや、フランス代表MFアントワーヌ・グリーズマン(アトレティコ・マドリー)らも獲得候補に挙がっている。カバーニは欧州5大リーグのイタリアとフランスの2カ国でリーグ得点王を獲得した実力者で、グリーズマンはソシエダの下部組織出身の出世頭であり、クラブの元アイドル的存在だ。しかし、カバー二は現在35歳、グリーズマンは31歳ながら近年急激なスランプが続いている。
脂が乗っていて現実味が高そうな候補もいる。フランスのリヨンでプレーし、昨季21ゴールを挙げたFWムサ・デンベレだ。一昨季後半はレンタル移籍によってリーガでも半年間プレーしている。強豪アトレティコでは5試合の出場のみに終わったが、絶対的な点取り屋不在のソシエダに必要な存在となりそうだ。
移籍市場の閉幕を経た次節、ソシエダには新たなストライカーが加入しているだろう。その新ストライカーの特徴によって新たなシステムの導入や前線コンビの人選も模索されることになる。イサクとの連携が噛み合っていた久保にとっては惜しいところだが、チームとしては結果が出せているだけに早急な変更点はないだろう。
気になる次節の対戦相手はリーガ3強の1角であるアトレティコ。久保にとってのアトレティコ戦は縁起が良い。昨季マジョルカに所属していた久保は、12月に敵地でのアトレティコ戦で試合終了間際のアディショナルタイムに2-1となる決勝点を挙げている。続く、後半戦の第31節のホーム戦でも返り討ちにしている。
マジョルカが望外の1部残留を果たした要因は、このアトレティコ戦連勝にある。
久保はソシエダでも“お得意様”を相手にゴールをお見舞いし、新たなポジション争いにも打ち勝つための先制攻撃となる狼煙を上げたいところだ。
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文●新垣博之(しんがき・ひろゆき)