【東京五輪/バスケ】八村塁、渡邊雄太擁する「史上最強」日本代表の将来的課題 | CYCLE やわらかスポーツ情報サイト

【東京五輪/バスケ】八村塁、渡邊雄太擁する「史上最強」日本代表の将来的課題

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【東京五輪/バスケ】八村塁、渡邊雄太擁する「史上最強」日本代表の将来的課題
  • 【東京五輪/バスケ】八村塁、渡邊雄太擁する「史上最強」日本代表の将来的課題

史上最強」。


NBAで活躍する八村塁渡邊雄太の2選手を擁した男子バスケットボール日本代表東京オリンピックは0勝3敗、グループリーグ敗退で幕を閉じた。史上最強とまで呼ばれた日本代表は、今回の戦いを通じ何を得て、どのような課題が浮き彫りになったのだろう。


オリンピック直前の強化試合でFIBAランキング7位のフランスを破ったこともあり、日本代表に対する期待度は鰻登り。五輪の大舞台で、世界の強豪から1勝をもぎ取る歴史的瞬間を夢見た。


しかし、日本は世界の壁の高さをまたも痛感することとなってしまった。


日本は対戦した各国に比べ、エネルギッシュなプレーを見せていただろうか……。最後の最後まで自信を持って戦い続けていただろうか……。勝者のメンタリティを持っていたのだろうか……。


オリンピックという独特の空気、国際試合の真剣勝負の難しさは想像以上の厳しさなのだと知った。


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■日本の前に立ちはだかった経験の差


本気で期待した分、悔しさと切なさが込み上げた。ただ、数年前にはこんな期待をすることすら信じられなかっただろう。確実に日本代表は新たなステージに立っている。


忘れてはならないのは、初戦で対戦したスペインはFIBAランキング2位、2019年に行われたワールドカップの覇者、2戦目に対戦したスロベニアは2017年に行われたFIBAヨーロッパ選手権の優勝国、そして3戦目のアルゼンチンもFIBAランキング4位、2019年のワールドカップ準優勝チームとすべてが超強豪だった。


さらに、過去にオリンピックを制した経験もある。つまり、対戦した全チームが国際大会を制すなど決勝を争う経験を持ち合わせていた。その経験の差が日本の前に立ちはだかったと言える。経験の差は、日本のメンタル面に影響を及ぼした。成功体験の有無は自信の有無につながる。


■まだまだ高い世界の壁にどう立ち向かうか


個々の能力も高く、大会を通じても成長を遂げていた。田中大貴比江島慎らは間違いなく9月30日から開幕するBリーグ2021-22シーズン、明らかに進化したプレーを披露するだろう。


アルゼンチン戦後、ベンチでタオルをかぶり、涙流すキャプテン渡邊雄太の姿が目に焼き付いた。強豪国と対戦し「悔しい」と感じたのなら、確実に日本のバスケットボールは進化している。「恥。代表のユニフォームを着る資格がない」と語ったワールドカップから、この2年で日本代表は間違いなく階段を登ってきた。世界へと果敢に挑む選手たちを誇りに思う。


ただし、日本と同じように世界も歩みを進めている。追いつくためにはさらに努力を続けなければならない。まだあの悔しい記憶からたった2年しか経っていない。歴史的1勝を思い描けたのなら、必ずいつかその1勝は果たせる日が来る。今はまだまだ高い世界の壁にどう立ち向かうかを考えるしかない。


例えばポイントガード田中大貴が本職のシューティングガードではなくポイントガードに起用され奮闘した。これによりサイズの問題は解消されディフェンス面でもミスマッチが起こることなくプレーできたとしても、ゲームメークという点では急ごしらえのポイントガードにはまだまだ課題が多い。スペイン戦では、NBAポイントガード、リッキー・ルビオにかき回され、その弱点が露呈した形だ。


渡邊や八村、馬場雄大といった世界と戦える個々の能力に加えて、同レベルの本職のポイントガードが欲しい。サイズのある選手を早い段階でポイントガードにコンバートし、ゲームメークができるように育てていく必要があるのではないだろうか。


もちろん、ポイントガードだけではない。さらに世界と渡り合える選手が欲しい。海外挑戦する選手もより増えて欲しいと思う。ゴルフではマスターズを制した松山英樹が「もっと世界で戦える日本選手がほしい」と発言した通り、バスケ界でも世界の強豪と呼ばれるレベルに触れ、戦える選手が増えることは日本代表の底上げとなる。


国内に世界を知る指導者が増えることも世界のバスケットボールに触れる機会になるだろう。いたしかたないが、各クラブは自身のことに集中してしまいがち。それは正しい。ただ各クラブでの日常が日本代表の強化につながっているということを忘れてはならないだろう。今回オリンピックに参加した者だけでなく、オリンピックを観た、選手、スタッフ、クラブ関係者、レフェリー、さらには学生に至るまで日本のバスケットボールに関わる全員が、収穫を得て考えさせられるきっかけとなったはずだ。


■次なる指導者に求められるのは「コントロールできる求心力」


男子日本代表強化のために何かできることはないか。代表メンバーだけが国を背負って戦っているのではない。日頃のリーグ戦も全て日本代表のレベルアップに繋がっている。


今回オリンピックを観て「この舞台に立ちたい!」と夢を見た子供たちもいるだろう。Bリーグ発足後、各クラブがユース育成に取り組み始めている。この若い芽が育ち実を結ぶのはまだ先のこと。ただ、ユース育成にも力をしっかり入れて未来に繋げていくことに意味がある。対戦したアルゼンチンも過去44年間オリンピックの舞台から遠ざかっていたが、ユース育成などに取り組んできたことが現在の強さに繋がっている。


また、気になるのは代表ヘッドコーチの人選だ。


今以上に日本代表がステップアップするためには、NBAという世界トップレベルに身を置き挑戦を続ける選手たちをもコントロールできる求心力が絶対的に必要となる。そして、海外から招聘するならば言語も重要なポイントではないだろうか。コミュニケーション面においては、やはり英語が拙い指導者より英語をメインで話す指導者の方が良いように思える。その点、女子日本代表トム・ホーバスヘッドコーチは英語に加え日本語も堪能なことが強みと言える。


日本のバスケットボールや良さを知った上で、そこに世界のバスケットボールを伝え積み上げてくれる存在。かつ、より密度の濃いコミュニケーションを取ることができる指導者に日本代表を次なる高みへと導いて欲しい。


3年後、2024年パリ・オリンピックへと目が向けられがちだが、その前年、FIBAワールドカップ2023フィリピン・日本・インドネシアにて共催となる。Bリーガーにとって慣れ親しんだ沖縄アリーナが舞台。強化試合では渡邊もプレーした。今の日本代表がベースとなりメンバーは構成されるはずであり、ここにパリへの出場権もかかっている。また、そのワールドカップ出場に向け、次のステップは、すでに待った無しだ。


前回ワールドカップから2年、日本の成長を感じることができた東京オリンピックでは、女子バスケットボールの活躍にも刺激を受けた。そしてさらに次の2年、日本代表はどんな変化を遂げるのか。沖縄での地元開催というホームの利を活かし、日本代表を後押ししたい。


日本が進む道のりは長く険しいが、自分たちの強さ、未来を信じて突き進んで欲しい。ファンのひとりとして、いつか見たことがない景色を日本代表が見せてくれる日を心待ちにしたいと思う。


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■著者プロフィール


木村英里(きむら・えり)●フリーアナウンサー、バスケットボール専門のWEBマガジン『balltrip MAGAZINE』副編集長テレビ静岡・WOWOWを経てフリーアナウンサーに。現在は、ラジオDJ、司会、ナレーション、ライターとしても活動中。WOWOWアナウンサー時代、2014年には錦織圭選手全米オープン準優勝を現地から生中継。他NBA、リーガエスパニョーラ、EURO2012、全英オープンテニス、全米オープンテニスなどを担当。

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