村田は考えるボクサーだ。報道陣の質問にも淀みなく言葉をつなぐ。WBA世界ミドル級タイトルマッチで再び拳を交えるするアッサン・エンダム(フランス)は回復力の早さに定評があるが、公開練習後に前回の試合について質問が飛ぶと、「1分(の休憩)でエンダムが回復していると思い込んで行かなかった。それが僕のミステイクだったと思う」と振り返る。
・前回の【村田諒太 再戦へのゴング vol.4】危機感と無が作り出すゾーン
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4回にダウンを奪って会場を沸かせた村田だが、5回で様子を見てしまったことを反省。しかし、反省することは自身の成長になる。
「(エンダムの)回復が早いといっても、ダウンしてダメージを溜めたら、また100%の力になるかというとそうではない。60、70の状態でしか動けていなかったので、次は自信を持ってやっていきたいです」
大柄な体にも関わらず小刻みな足さばきで相手を翻弄するエンダムだが、村田は「止まる瞬間は来るはず」と22日はチャンスを見逃さない構えを見せる。また、手数の少なさが判定に響いた前回だが「手数云々で戦うわけじゃない」と見据える。
「相手がワンアクションを起こしてきた。それで終わらないで、(次は)僕もアクションを起こす。それを帳消しにするという意味では手数は考えなければいけないが、ちょこちょこ手数を出して弱いパンチにしても(意味がない)。スポーツは常に代償があります。手数を取ったらパンチ力が減る。160km投げられるピッチャーがコントロールを意識したら150km台になるだろうし。そういうものなので、もともと自分が持っているスタイルでいきます」
トレーニングには人生的なものが表れる
村田との対話の終わりに、心境を聞いた。記者会見などでも決してビッグマウスにはならず淡々と自身の考えを語るが、この日もゆっくりと考えながら話してくれた。
「トレーニングしてて思うのは、(気持ちが)行ったり来たりするわけですよ。こんなこと考えて、ああやってみよう、こうやってみようって。一本のまっすぐな道を突き進んでいけばいいのに、いろんな寄り道をして。一昨日の練習で考えていたことも、それは前にも考えていたことだなと思って、それをまた元に戻していって…。本当はもっとシンプルでいいんでしょうね、物事の考え方やトレーニングって。なのに、いろんなことをやろうとする、やらざるをえないじゃないですか。もっとよくなれると思って」
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「だからトレーニングには人生的なものが表れるなって思います。要領よくいけないわけですよ。最短ルートを行けたらいいんですけど、いろんなことをやって。改めてスポーツというのは人生的だなと思って。哲学的というか。だから、寄り道したりするのも自分らしいと思っていますし、そうやっていくしかない。そんなものだと思ってしっかりトレーニングをして、最短ルートをいける人間ではないので、残りのトレーニングを頑張って。一生懸命やっていますから、あとはリングに上がって出た結果は結果論でしかないので、その結果をできるだけいいものにできるように最善を尽くすだけですね」
プロボクサーとして生きる村田。多くの人に支えられボクシングを続けていられることに常に感謝して、勝利のために全力を尽くす。前回の判定負けは、村田のボクシング人生にとって寄り道に過ぎない。
迷ったら立ち止まり、引き返したり、突き進んだりするのが人生だ。村田もまたプロボクサーの道を極め、ラスベガスの大舞台を目指して歩み続けるのだろう。新たなスタートとして22日に両国国技館でスポットライトを浴びる。
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(了)
●村田諒太(むらた りょうた)
1986年1月12日生まれ、奈良市出身。帝拳プロモーション所属。2012年にロンドン五輪ボクシングミドル級で金メダルを獲得して脚光を浴びる。アマチュア時代の戦績は137戦118勝89KO・RSC19敗。2013年8月にプロデビューし、戦績は13戦12勝(9KO)1敗。趣味は子育て。
取材協力:ナイキジャパン
※:村田諒太選手が着用しているウエア(価格は税込み)
パーカー「ナイキ サーマ スフィア マックス」1万9980円
パンツ「ナイキ フレックスレペル」1万800円
タイツ「ナイキ プロ ウォーム タイツ」6480円
シューズ「ナイキ メトコン 3」1万5120円