那智の滝、華厳の滝は直下型の滝で、写真でパッと見ただけでも滝の迫力が伝わってくる。那智の滝は落差133mと日本一の落差を誇り、華厳の滝も97mの落差がある。
それだけ高いところから、直に滝壺へと落ちているのだから、迫力があるのも当然であろう。
■四度の滝
さて、袋田の滝。こちらも120mの落差があるが、どうも先に挙げたふたつの滝と比べると迫力の点では落ちるように思える。それもそのはず、袋田の滝には4つの段差があって、そこを水が流れ落ちている。迫力の点で、直下型の滝よりも落ちてしまうのは致し方ない。
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四つの段差が特徴的
だが、その段差を水が流れる様が見事である。袋田の滝は「四度の滝」という別称があるが、これは四つの段を意味しているという説がある。
別称の由来のもう一説は、西行法師が四季それぞれの滝の姿を見ないことには、本当の魅力はわからない…的なことを言ったというもの。秋の紅葉、冬の氷瀑(極まれ)、春の新緑、夏の増水(?)など、四季によって魅力が変わるのが、袋田の滝の魅力であるという。
■滝より団子
しかし、袋田の滝の本当の魅力はほかにある、と筆者は踏んでいる。確かに四段の滝や季節ごとの魅力も素晴らしいのだが、それだけでは三名瀑の他のふたつの滝と肩を並べるほどではないのではないか。袋田の滝が日本三名瀑に選ばれている、本当の理由とは何か。
生瀬富士から月居山へと歩き、観瀑台から袋田の滝を眺め終えた頃、筆者はいい加減歩き疲れていた。そして、腹を空かせていた。観瀑台から駐車場に向かう途中には、旅館やら茶屋やら食堂やらが軒を連ねている。いわゆる観光地的な街並みで、軒先ではアユの塩焼きやら団子やらが売られている。
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近くの茶屋でアユと団子を食す。滝もいいけど、団子もうまい
腹を空かせた筆者は、たまらず一軒の茶屋に入り、アユの塩焼きとユズ味噌団子を注文し、がっついた。両方とも、とてもうまい。特に、ユズ味噌団子の香ばしさといったら、もう。ユズと味噌が、香りと味の両面でハーモニーを作り出し、団子をより味わい深いものにしている。
団子の表面の焦げ具合も絶妙である。あんぐりと団子にかじり付くと、焦げ目のちょっとパリッとした食感がまずあり、その後に中身のモチモチした感触。非常に美味であった。
その後も茶屋を出てから、団子を売る店がところどころにあり、その都度誘惑してくる。その誘惑に逆らう理由も見つからず、もう一本ユズ味噌団子を平らげた。それほど、袋田の滝のユズ味噌団子はうまかったのだ。
筆者が考察する袋田の滝の本当の魅力とは。三名瀑に選ばれている本当の理由とは。それは、滝そのものより団子にあり。ユズ味噌団子、袋田の滝観光の際は、ぜひ。